レポート23 文化祭開始
文化祭の当日となった。
だが、俺にれっきとした仕事はない。その上で、一緒に回るような相手もいない。
結局は灰色の文化祭になってしまうんじゃないだろうか。とか思ったが、準備はそれなりに去年よりも頑張ったし、クラスのあれらが成功すれば3色くらいはつくだろう。
そんなことを思いながら、ブラブラしていると見覚えのあるプラチナブロンドヘアーが見えた。
走り去るとは言わないまでも、上機嫌のスキップのような速度で行ってしまう。俺はそれを追いかけてみる。
少し追いかけているうちに見失ってしまった。
「こっち、きてた気がするんだけどな」
特別教室棟だ。文化部の発表を除くと、文化祭中は使われてない教室も多いのだけど。
諦めて俺はその場をさろうとした時に、ふと理科室が目に入った。
科学部が何やら実験体験をしているようだ。
「あ、どうですか?」
「えっ? ……じゃあ、少し」
入口付近にいた人と目があってしまい、誘われたので、まあやることもないので体験してみることにした。
やることは至ってシンプルなものだったが、授業ではやらないような事で結構楽しかった。
30分ほどおじゃましてから、理科室を後にした時に、またあの髪を見かけた。
再び俺は追いかける。
時間は1時だ。音原さんの出番となってるのは2時以降の劇だからいる事自体はおかしくないはず。
「あっ、いた!」
「うぇっ!?」
数分後に追いついて声をかけることができた。
「やっぱり、音原さんだった」
「どうしたの?」
「いや、見かけたから……ひとり?」
「うん、そうだけど」
「えっと……誰かと一緒に回るとかしなかったのかなって」
「私、実はそこまで深く仲がいい人はいないのよね」
やばい、地雷踏んだ気がする。というか、なんだ。表向きは結構いろんな人と絡んでいるってタイプなのだろうか。
「え、えっと……暇なら、1時間ぐらいしかないけど一緒に回らない? 俺、実は去年あんまり参加してなかったから、勝手がわからなくて」
「……いいわよ!」
うおっ、予想外の笑顔だ。眩しい!
そんな眩しい笑顔を横目に、文化祭は1時間位だけれど楽しく過ごすことができた。
「それじゃあ、そろそろ教室戻らないと」
「……じゃあ、俺も行こうかな。手伝えることはありそうだし」
「え~、せっかく仕事ない部分の役職になったのに?」
「回る人がいないなら、仕事でもしてたほうが気が紛れるんだよ。去年は仕事はしてたし」
今年の最初に1人で暇してた時間で理解した。文化祭を1人で回るくらいなら、仕事に従事してたほうがまだ青春だと思うってこと。
「それじゃあ、教室行こうか」
「おう」
この後は順調に進んだ。劇も、それなりに盛況でお客さんも入っていたし、トラブルも起きずに1日目は終了できた。
数回だけど、劇をちらっと見たけど、音原さんのドレスというかお姫様姿すごい、可愛かったな。
キスシーンは振りだっていうのが、分かったから良しとしよう。
かなり集中して見て、自分で確認したしな。
ちなみに、俺はカップルの代わりに受付をやっていたりした。カップルには後でものすごく感謝された。
文化祭は2日目というなの最終日に突入した。
何も問題が起きなければバンザイなわけなんだけれど、そうは上手くいってくれない気がしてならない。
朝、一般の人の入場などが始まる1時間前に学校へと登校する。本当は仕事が無い人はいいと言われてるけど。まあ、なんとなくってやつだよ。
まあ、実際教室に来たら混ざれる会話もなさそうなので劇の台本がおいてあったのでそれを読んでいる。ラノベでも持ってくればよかった。
「……みくーん。日角くーん」
「うん?」
だが、俺は思ったよりも集中して読んでいたらしい。声をかけられていたのに気づくのが遅くなってしまった。反応してみたら、ものすごい顔が近い。
「うおっ!?」
「久しぶりにその反応された気がするわね」
「か、顔が近くて驚いただけだ」
「そ、そっか。そうだよね……えっと、今日って予定ある?」
「うん? いや、まあないけど」
「じゃあ、午前中また一緒に回らない?」
「……俺でいいの?」
「もちろん」
神様。昨日と今日こんなことがあるって、槍でも降るんですか。
そんな幸せを噛み締めながら、文化祭開始のチャイムが鳴り響いた。
昨日は回れなかったらしい、いろいろなクラスの出し物を見ていくことになった。
流石にここらへんは人通りが多くなってるな。
「喫茶店系が多いね。あとはお化け屋敷も一学年にひとつぐらいあるかしら?」
「みたいだね……後はクレープ屋とか」
新聞部と生徒会が作ったらしいパンフレット案内を見ながら、そんなふうにつぶやいていく。
とりあえず音原さんについていくと、3年のお化け屋敷にたどり着いた。かなりおどろおどろしい雰囲気だ。
「さ、入りましょう!」
「お、おう」
すごい楽しそうに言われては断れない。俺は覚悟を決めて、お化け屋敷内に突入した。
中は暗くかなり雰囲気のある和風お化け屋敷になっている。
「ひぃっ!?」
「ど、どうしたの!?」
隣から悲鳴が聞こえた。
「な、なんか踏んだ」
そういっている音原さんの足元を恐る恐る見てみると――ものすごい弾力の有りそうなクッション的なものが設置されていた。
出落ちにも程がないだろうか。
「す、進もう。早くでてしまえば問題ない」
「そ、そうよね! でも、せっかく入ったなら堪能したいのよね――きゃあっ!!」
ゆっくりと歩いて進んでたら、井戸の中から白装束の方がでてきた。髪を振り乱してだみ声で「あぁぁぁ」と唸っているせいで、怖い。でも、それ以上に俺は腕が抱きつかれてる方に意識がいってしまい、恐怖が吹き飛んでいる。
「お、おお、音原さん」
「な、なにぃ」
なんでこの人、お化け屋敷を喜々として選んだんだろうか。
「え、えっと、進もうか……」
「うん、やっぱり、早くでる」
勘違いしそうになるから、腕だけは離してほしいんだけど、そんなことも言える雰囲気ではない。
その後、何度も驚きギミックがでてくるレベルの高いお化け屋敷だった。が、俺の意識は完全に抱きつかれて固定された腕にいってしまっていたため、別の驚きギミックだった。というか胸の感触がたまにあるのが、心臓に悪い。
「ほ、ほら、音原さん。もう外でたよ」
「……こ、怖かったわ」
「そうだね。かなりレベル高かったね」
時間を確認してみると、11時過ぎほど。少し早めの昼ごはんでも食べることになって、移動を開始した。
その間、音原さんはいるわけもない何かの気配を感じてキョロキョロしていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます