レポート16 演目決定

 ――そう思ってたんだけどな。

「はい、じゃあ次、会場準備と荷物運搬!」

「はい!」「ここは俺に!」「わたしに任せよ!」「任せなさい!」

 すごい濃いクラスメイトがいっぱいいる。

 というか会場準備がまさかの大人気だ。俺も手を上げたんだが、超過しそうだ。

「はい、じゃあ次は……演劇やりたい奴! だと広すぎるから、脚本!」

「おまかせを!」

 文丸さんが意気揚々とひとり手を上げて確定した。

「じゃあ、演者」

 ちらほら手は上がるが、人数は足りない。その後もどんどんと決まっていくと、予想どおり会場準備の人間が移動せざるを得ない状況になった。

「良し、面倒くさいからくじびき!」

 そういうといつのまに作ったやら、くじ引き箱を机の上にだした。

 どんどんと準備に手を上げた面子がくじを引いていく。俺の番もすぐにきて、くじ引きを引いた。

「えっと、このくじ引きいつ使ったやつだっけ……そうか。あの時か、じゃあ2番の奴は演劇関係に3番のやつは当日の配膳関係に移動ということにする」

 演劇関係だけは御免被りたい。俺はゆっくりと閉じられた紙を開いた。

 そこには無情にも【2】の文字が書かれている。

「…………」

「人数も多いから、自分で苗字を黒板に書いてくれ」

 みんなが名前を書いていく中、俺も仕方なく名前を書いてあると演劇の関係の中に音原さんの名前があった。

「…………」

「どうしたんだ。ヒッキー?」

「えっ、あ、いや、なんでもない」

 隣の席の奴に気づかれてしまった。やばい、少し顔がにやけてた。

 俺が席に戻ったあたりで、チャイムがなった。

「それでは、これで決まりとする! 細かいことは次の授業から、それぞれ話し合ってもらうが、事前に勝手に話し合っててくれればなおよし! 先生、お返しします」

「はーい。それじゃあ、みんなまだ遠いなんて思わずに、文化祭頑張っていこー!!」

「「「おおー!!」」」

「何事ですか! ……って、またこのクラスですか。もう少し、ボリュームを抑えてください」

「あ、あはは、すいません~。それじゃ、みんな次の授業の準備しなさいねー」

 担任はそう言って教室から出て行った。

 だが、まあ休み時間の10分を準備に全部使うわけもなく教室はざわつきながら、俺も聞こえた大きな声だけ覚えておこう。

「放課後、演劇組は別館空き教室!」

「はい、配膳組はこの教室に待機よ! 逃げないでね!」

「はいはい、残りはオレと一緒に図書室だよん」

 なんとなく体育とか、いろいろなところでリーダーシップを発揮するメンバーがバラけたらしくそう言っているのが聞こえた。

 放課後に空き教室な。忘れそうだから、机にでも書いておこう。


 * * *


 正しく放課後、間違いなく放課後になった。

 俺はしぶしぶながらも空き教室にいくと、俺を含めて12人ほどが集まった。リーダーは委員長。

「とはいえ、今日決められることはそこまで多くないから、手っ取り早く決めよう。まずは、演劇のセット準備などだがこれは会場準備のほうにも手伝ってもらいながらになる予定だ。脚本は文で決定……というわけで、役者を確定でやりたいという主役数人と劇中でBGMなどを流す音響を決める必要があると私は考える!」

「ちょっといいかしら?」

 そこで音原さんが手を上げて声をかけた。

「何だ? 音原」

「演劇の演目の方向性だけでも決めないと、脚本も演者立候補も進まないと思うのよ」

「……それはたしかにそうだな。なら、まずはそっちを決めるぞ! とはいえ、そこまで長いものは喫茶と一緒ではそぐわないな」

 そういって最初の議論が始まった。定番モノもで行くべきだという人もいれば、意表をつくべきだという人ももちろん出てきて、だがそれでは学校や喫茶という場所を考えると不適当じゃないかという意見も出てくる。

「日角。お前はどう思う?」

「お、俺?」

「あぁ、さきほどから意見を言ってないようにみえたからな。何かないか?」

 うっ、委員長はよく見ているようだ。

「日角くんは去年もそういえば、やってたクラスだったよね?」

「ま、まあそうだけど」

 くっ、今回ばかりは音原さんのその発言は痛いぞ。

「そうだな……やっぱり、12時のプリンセスみたいな定番を元にして喜劇にするとかが盛り上がるし問題にならないんじゃないかなって……」

 去年も実際にロミオとジュリエッタっていう、恋愛喜劇の童話を元にした作品だったしな

 ちなみに12時のプリンセスは、余命を宣告されていざその最期の日に現れた魔女に12時まで生き残ることのできる魔法がかけられる。しかしその魔法がとければ本来のままに命は終わりを告げてしまうというものだ。その他に王子様となんやかんやあったりした恋愛悲劇が原本だが、日本の童話としては王子様のキスで終わったはずの命が再び動き出すなんて終わりに変えられている。

「そっか。別にアレンジ加えてもいいのよね」

「そうだな……何故か頭から外れていた。私が演目を話し合いのうちに何かに確定した言い方をしていたのが原因だ。申し訳ない」

「委員長は悪くないよ」「うちらもこう、なんか他人任せだったり言われたままだったところあるから」「そうだぜ。委員長は悪くねえ」

「文はどうだ? 脚本は」

「元があってアレンジとかするほうが楽ではあるかな」

「やはりそうか……なら、日角のそのままに12時のプリンセスを元にするのが良いと思うのだが! あれならば、男子も女子も出演ができる」

「問題なし!」「うちも賛成。ヒッキーやるじゃん」「いつも目立たないが影でやるやつだったんだな」

 なんか目立ってしまって、目線を下げてしまう。

 すごい見られてる。

「それでは、役者として出演したい奴――」

 こうしてこの日の相談は終わった。俺はとりあえず、演劇の案内とかパンフレット製作のかかりになることができた。役者にならなくてよかった。

 ついでに音原さんがその原本の悲劇のヒロインであるプリンセスの役をやることになった。こっちについてもドレス姿とかまでになったら綺麗だろうな……なんて想像をしてしまう。

 少し目立って疲れてしまったが、なんだかんだ楽しんでいる自分に気づきながら俺は家路についた。

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