レポート15 文化祭

 毎日の日々学校、あれから数日たって明日はまた土日になるんだけど……何の進歩はない。

 よく考えたら、話題以前に話すタイミングだよな。一回目はぶつかったのが原因だし、放課後に偶然教室で2人になったから話せたわけだ。で、次は家庭科であちらからきてくれて。

 俺はそんなことを思いながら教室のところどころにあるグループを眺めてみる。

 そうだよな。あの手のグループを転々と全体的に絡んでるらしいもんな、音原さん。

 昼休み終了のチャイムがなった。そして、5限目が始まりクラスの担任が入ってくる。

「はーい、席つきなさーい!!」

 ハイテンション、ちっちゃい担任の先生が入ってきた。あれで30代だというから何度でも驚きだ。

「今日はほら、もう来月に迫った。細かく言っちゃうと3週間後に迫った文化祭の内容決めるわよ! ってことでクラス委員よろしく!」

 準備が直前の一週間だけど、そもそもの材料とかいろいろの準備のために3週間前に決めるんだったか。駄目だ、去年はちゃんとこの時点では混ざってなかったから思い出せない……去年の文化祭はひとりでまわりまくったのと、飯の材料の運搬してた記憶しかないし。

 やばい、俺の青春の色灰色なのか。

「おーい、ヒッキー」

「うん?」

 隣の席の男子に話しかけられた。誰だっけこいつ。

「すまん、文化祭って何するの? おれっち今年の2月に転校してきたから去年参加してないんだよね」

 今年の2月って、それは4月になってからでもよかったんじゃとか思ってしまう。

「まあ、喫茶店とかパネル展示とかが多かったって感じだな。校庭は運動部で埋まるし、体育会とかは演劇と音楽系の部活、あとは生徒会で埋まることが多いから」

「つまり教室でできる範囲内の何かをするってことでいいのか?」

「まあ、そんな感じ」

「すまん。ありがとう」

 感謝するならヒッキー予備やめてくれないかな。引きこもりなのは否定しないけどさ。このあだ名の最初の原因は、去年のクラスのやつか『日角秋の最初と最後をとったらヒッキーだ!』とかいう謎の感性を大声で言ったのが原因なんだし。

 ……あれ、最近人とか変わり始めた俺は気づいたぞ。これただの弄りじゃないか。

 ぼっちになってる理由って、俺自身が避けてるせい!?

 やばい、馬鹿らしくなってきた。

「はい、それじゃあ何か出してください。とりあえず、オーソドックスな喫茶店、お化け屋敷、パネル展示以外でな。もうこれは黒板に親切な私が書いておいてやる」

 メガネ女子、姉御系委員長は前に出てくるとそういった。書記もその親友がやってることもあって、すでに言われたものは書かれていた。

 文化祭の演目ね……なんかあったかな。


 数分後。

 それなりに議論が進んだ結果、黒板に並ぶ文字は、喫茶店・お化け屋敷・パネル展示・ライブ喫茶・演劇喫茶・おばけ喫茶だった。

 喫茶多すぎるし、喫茶店に何かつければいいっていう魂胆が見え見えな気がするんだけど、なんでだ。

「他にはないか? ……まあ、たしかに去年演劇喫茶をやっていたクラスの売上が断トツだったからな。気持ちはわかる」

 委員長もわかっちゃうんだな。

 ていうかうちのクラスの売上そんなに良かったのか。材料の減りが思ってたより早かったのは覚えてたけど。

「……なさそうだな。それじゃあ、そうだな。多数決で第3候補まで決める! 被ると抽選になると生徒会が言っていたからな」

「先生そんなこと聞いてなかったけど!?」

「生徒会副会長が友人なので……それに、何も知らずに被ってあたふたするよりどちらにせよ候補は出しておくべきですから」

「……それもそうだね~」

 それでいいんすか。

 俺の心のツッコミは、当たり前だが誰にも察することもされずに多数決となる。俺はとりあえず、去年と同じだし勝手がわかってて考えることが少ない(脚本や役者などやる気ははなはだない)演劇喫茶に手を上げておいた。

 他の理由としては、演劇喫茶で準備の核となっていたメンバーがこのクラスに多めにいるからだ。つまり、前にやったクラスだからってなった時にも俺は選ばれない。

 ……目立たないための思考だけ早い俺に、去年は思わなかった辛さを感じるな。

 すべての確認は集計が終わった結果を発表する。第1候補が演劇喫茶、第2候補がお化け屋敷の第3候補にパネル展示という、見事に喫茶で演劇以外は票がバラけたせいで、演劇喫茶以外が候補にはいらない。まあなんとなく読めはしたよな。

「よし、それじゃあこれで決定だ! この中での役職を決めるぞ!」

「はい!」

「なんだ、北谷! この委員長にいいなさい!」

「確定ではないので、今決める必要はないと僕は感じる!」

 メガネを光らせながら北谷はそう言う。このクラスのこのノリだけは、覚えがないでもない。

「いい質問だな。だが私の運をなめるな! 大丈夫だ」

「わかりました」

 わかっちゃうのかよ!?

「どうした日角、突然立ち上がって」

「……い、いや、なんでもないです」

 思わず立ち上がってしまった。もしかして俺はまともにこのクラスに混じっていたらツッコミ役になっていたんじゃないか。そういう意味ではぼっち正解かもしれない。

 ここ数日でグダグダ悩み過ぎだろうとかいうツッコミはなしだ。

「ということで、改めて役職を決める。まず必要な役職だが――」

 そして続けて役職決めが始まった。とりあえず、裏方準備とかに手を上げておくかな。


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