レポート14 会話相談

 午後の授業で課題をだされて、苦手教科なのもあって手間取ってしまった。

 グリプス・サーガ・オンラインにログインできたのは少し遅目の時間になる。

「よっす」

「あ、こんばんは」

 スズネがログインしてたので合流した。なんというか俺ももう少し交流を広げるべきだとなんとなく思わないでもない。

 時間も時間のため狩りに行ったり何かをがっつりやるという気分ではなく、景色の良い場所に移動して座る。

「新しいイベントの告知が明日されるらしいわよ」

「マジか。俺にとっては、告知から参加するのは初イベントになるわけだ」

「そういうことになるわね」

「あ~。でもな、そろそろ文化祭の準備とか始まるんだよな」

 たしか10月中旬だったはずだ。

「そういえば、姫騎士装備はつけないのか?」

「えっ!? あ、あぁ~、ちょっと今は……ね。あはは」

 あんまり気にはしなかったが、装備が何日たってもいつもどおりと今頃になって気づいたが、ごまかされた気がする。

 ただ、そういうのに深入りするのはマナー違反だよな。

「そ、それで、文化祭って何するのよ? 私もそろそろなんだけど」

「うーん。とりあえず喫茶店とかそういうありきたりなものしかないと思うぞ。去年は俺のクラスは演劇喫茶だったな。俺はでてなかったけど」

「演劇喫茶……?」

「教室の前に劇場的なセット作っておいて、教室自体は喫茶店にしてみたいにな。テーマパークとかでたまにそういうレストランあるだろ」

「そ、そうね……」

 何故かスズネが考え込み始めてしまった。

 ――そういえば音原さんにこのゲームのこと有耶無耶にしてしまったな。明日、一応やってることだけは教えようかな。いや、でもそだとなんか俺が意識というか気にしすぎてるように見えないだろうか。

 音原さんはどんなキャラなんだろう。髪の色的にはスズネが結構似てるけど、デコちゃんじゃなくてツインテだし、褐色肌だし若干性格も違う気が……いや、本質的には似てるのか。

 いや、でも若干のコミュ症っぽさがあるところを見ると違う気がするよな。

「あ、あのね。もしかしてなんだけどヒカクって、漢数字の千で始まる高校に通ってたりしないかしら?」

「ん? よくわかったな」

「えっ!? ま、まあ、近くはないけど友達と学園祭に行った覚えがあったのよ。その喫茶店も行ったかもしれないわ。ちょっと珍しくはあったから」

「まあ、たしかに珍しいかもな……それに土日だから、まあ他の学校からも文化祭がかぶらなければ結構きてたし。でもそうか、去年来てのか。じゃあ、どこかで会ってたのかもな」

「案外近くにいるのかもしれないわね」

「なんで若干、目が泳いでるんだ?」

「お、おお、泳いでないわよ」

 いや、最近ゲーム内ならスズネのおかげで人と目を合わすことができるようになったからバレバレなんだが。触れてあげないのが男の甲斐性っていうのか?

 まだ、ここらへんはよくわからんな。

 ところで、俺は突然思いついたことがある。スズネに協力を仰いでみよう。

「まあ、そういうならいいけど……あ! そういえば」

「な、なにかしら?」

「あのさ、相談乗ってくれねえかな」

「な、何をかしら?」

「いや、俺は見ての通り友達があんまりリアルじゃいないわけなんだが」

「いや、ゲーム内のあんた見る限りは結構いそうだけど?」

「いないんだ……そこ前提でよろしく」

「わ、わかったわ……それで?」

「いや、最近な。偶然というか事故というかでたまに女の子と話すようになったんだけど。女の子ってどんな話題だと話が続くんだ?」

 うん、女子のことは女子にきくのが一番だ。何でオレは今まで気が付かなかったんだ。

「そうね。当り障りのない世間話とか、最近話題になってることとかでいいんじゃないのかしら?」

「……まあ、そうだよな」

 それができたら苦労はないとはいえないくらい、簡単な答えを示されてしまった。

「後は、相手次第だけど趣味とか共通の話題をネタにすればいいと思うのよ。それこそ、今の時期なら文化祭何したいとかそういうので、十分会話できると思うわ」

「あー、そっかそれも最近の話題になるのか」

「意外と単純なことじゃない? 変に気を張るから見つからなくなるのよ」

「いや、だってリアルでは女子と話すこと少ないんだよ」

「そんなに極端に少ないの?」

「少ないんだよな。そもそも、こんなに意識したの初めて出し! 今までなら、まあもう話さなくていいやとかなるんだけど。妙にな!」

「で、でも、今日は……じゃなくて、ゲーム内だと女子2人と一緒とかもできるじゃない」

 今日は……?

 俺とスズネしかいない気がするんだが、俺には見えない誰かがいるのか?

 いや、でもマップ見る限り敵もPCの反応もないし……聞き間違えかな。

「そりゃ、ゲームはゲームって認識だし。あんまり遠距離だとかそういう恋愛は続かなそうって思ってるから。まあ、そもそも告ってOKもらえるわけがないんだが!」

「そ、そんなことないと思うわよ? 少なくとも、私は関わりやすいもの」

「まああとは、ネチケット的にほら……相手の住んでる場所聞くとかに発展するつきあい方って非推奨だと思うんだよな。俺とお前の、あの会話みたいな、偶然とかじゃないかぎりは」

「まあ、そうね。なんかすごい詮索しちゃってごめんなさい」

「いや、まあ俺の場所がバレるの自体は構わねえんだけどさ。だけど、そっか……それとない話題だな。ありがとう! やってみる」

「が、がんばってね」

 時計を確認してみると時間もいい時間だ。その日はスズネも朝練があるということでお開きとなった。


 ゲームを終了させて喉が渇いたので1階に降りると、下着にYシャツの妹がいた。

 いや、いいかげんに心のなかでつくろうのはやめよう、うん。春ちゃんがいたんだよ。

「あ、お兄ちゃん。封印からの復活?」

「俺が魔王みたいな物言いはやめないか……飲みもんの見に来ただけだよ」

「牛乳はあたしが飲み干した。賞味期限今日までで、あんまり残ってなかったから!」

「そうかよ。それ以上どこをでかくする気だよ」

「……身長?」

「春ちゃん、平均より5センチくらい上じゃなかった。高身長女子を目指すのか」

「でかすぎても身軽さは落ちそうだから今のままでいいかも。じゃあ、胸とか?」

「揉んでやろうか」

「あれは迷信だよ、お兄ちゃん。いいとこ効くとしたら正規のバストアップ体操くらいだからね」

 こいつ試したのか。自分の部屋で自分の胸を揉みしだいていたというのか。

「…………」

「な、なにかな。その微妙な目」

「いや、春ちゃんの彼氏になる奴は大変だなって」

「突然何さ!! あたしが誰と付き合おうといいだろ。というかむしろ、それはあたしがお兄ちゃんに言う台詞っつうか!」

「そうだな。まあいいや、おやすみ」

 話しながら麦茶飲んだので撤退。このまま続けると朝になりそうだったからな。

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