レポート12 ソウルネーム
念願の《サブ職業》を手に入れた。てれれれてってー!!
「おめでとうございます」
「ありがとう」
「でも、鉄球つ、つかわなかったね」
「盾のが投げ慣れてる……しかし《ブーメラン》まさかMPを使うとは思っていなかった」
やっぱり、スキルはスキルということだな。
「あ、いたいた。おーい!!」
「うん? 今日は妙に集まる日だな」
「そ、そうだね」
約束もしてないが、スズネも合流できた。
「そういえば、スズネは《サブ職業》は何とってるんだ?」
「え? 《狩人》」
なんと
「今日はどこか行きたいとかあるか?」
「特にないけど。みんなレベル上がったし、私はいつのまにか追いつかれちゃったし……もう少しレベル高いところいかない?」
「い、いいけど……どこ?」
「首都の北東のほうにある《プリースト》の
「ちなみにロックスソルドの奥は?」
「ある一線を越えると35だけど、それ以上に攻撃力バカが多いらしいよ。一発あたったら基本やばいって」
「よし、ホワイトランディのほうへ行こう!」
「ジュジュもそれでいい?」
「う、うん。大丈夫」
俺たち3人は目的地を決めると、念の為に消耗品を買い足してロックスソルドから東に歩き始めた。
しばらくは見慣れた砂漠と、岩系モンスターがでてきていたが、途中から首都の周りのような草原に変わった。
そして空からオーガが降って来た。
「なんか久しぶりにみたな。ずっとロックスソルドにこもってたから」
「今なら、ひとりでも倒せるけどリベンジする?」
「ふん、わざわざそんなことはしないさ。それよりもやってみたいコンビネーションがあるんだが」
オーガを背中にコソコソと話す。オーガはなぜか周りをキョロキョロしている――もしかしてポップしたばっかりで、その後俺達が動いてないからヘイトがないのか?
まあ詳しいシステムは考えずに作戦を伝えると2人が頷いた。
「しょ《ショック》!」
そしてスタート。まずはジュジュが麻痺系の魔法で、オーガの動きを止める。
突然、魔法をかけられて体のしびれたオーガは痙攣している。
そして、俺は盾をしまってヘビーモールを両手で持つ。反対側ではハンマーを両手でスズネが構えてる。
「「ダブル《ブレイク》!!」」
そしてしびれて動けないオーガに、野球のバットの要領でブレイクを同時に当てた。レベル差もあって、その同時攻撃でHPがなくなり霧散する。
「いえーい!」
「いぇー!」
「い、いえ~」
パーティー行動の後はハイタッチ。RPGのリザルト画面のひとつのテンプレだな。
オーガにらくらくかって、レベルが上ったことを改めて実感して、再びホワイトランディへとむけて歩き始めた。
無事にホワイトランディにたどり着いた。
リアルの時間にして8時半、明日も学校だけどまあ10時ぐらいまでは平気だろう。
ふたりにも一応時間の確認を入れてから、スズネのいう狩場へと向かった。
廃れた遺跡のようなフィールドになっていて、所々に神様の紋章っぽいものが柱に刻み込まれていて雰囲気はバッチシだ。
「敵いねえな……」
「そうね。どこにいるのかしら」
「あ、だれかい、いる」
ジュジュが見つけて、指を刺した方向を見ると黒いローブをきた人がいる。
だが、動きが小刻みでなんかおかしい気がする。
「ちょっと、待ってくれ。俺が先に近づく」
俺は盾を構えて、近づいてみる。そして一定距離まで詰まったところで相手はこちらを振り向いた。
その瞬間に、相手の頭に名前とHPバーがでてくる。
《狂神官》32レベル。
「くっそ、こいつエネミーかよ!」
狂神官は躊躇なく魔法を飛ばしてくる。距離があって、かろうじて盾で防いでさらに距離を取る。
「あんなのもいるんだな」
「名前通りの設定なんじゃないかしらね。他にもいろいろでてきたわ」
周りからも敵が少しでてきてフィールドが出来上がる。
俺たち3人に対して狂神官2体に《スケルトン・ナイト》という名前通りの骨がヘルムと剣を持った30レベルモンスターが3体。
「遠距離攻撃嫌いなんだよなっと!」
最初にこちらにきたのは近接攻撃のスケルトン・ナイト。俺が盾とメイスで2体相手どって、スズネが1体と接敵する。
「ジュジュはヒカクの援護!!」
「わ、わかった。《アース・ショット》」
前に使ったアース・ハンマーとは違い、岩の小さい塊を作り出して飛ばす魔法のようだ。
「俺も《シールドバッシュ》!!」
岩にぶつかりひるんだ好きに、残った1匹に盾を叩きつける。
「新しい攻撃スキルもとったけど、タイマンじゃないと使いにくいんだよな」
「《ハイ・スイング》!!」
横のスズネは完全にハンマービルドを作り上げてるしな。
「俺も《フル・スイング》とか取ろうか悩むな」
でも両手持ち状態じゃないと使えないんだよな――
「いってぇ!? 痛くないけどHPめっちゃ減った」
スケルトン・ナイトを油断しながらグダグダいなしてたら狂神官の魔法に直撃してしまった。
防具に魔法防御がほぼなかったらしく、かなり食らってしまう。
「いってえな! 《ブレイク》!! 《ブーメラン》!」
スケルトン・ナイトにとどめを刺してそのまま盾を置くの狂神官にぶん投げる。
そして命中した盾が戻ってきて、とりそこねて俺の顔面に直撃する。
「そんなに上手くは行かねえか……」
「《アース・ハンマー》!!」
障害物がなくなりジュジュの本領発揮、盾でクラクラしていた狂神官は槌に潰された。
そしてもう1匹はというと――
「《ハイ・プレス》!!」
ハンマーに潰されていた。
てれっれってってー!!
レベルが34になるまで狩りまくった。ついでに素材がものすごい集まった。
「ドロップ率、あんた良すぎるわよ……」
それは俺も思ってた。妙にドロップ率がいいんだよな。多分、ほしい奴になった瞬間でなくなるやつな気がするぜ。
ホワイトランディへと戻る頃には、時間は10時直前ほどになっていた。
「さすがに、明日学校だから俺はこの辺で」
「私もそうよ」
「わ、わたしも」
「じゃあちょうどいいか。またな~」
なんとなく俺はふたりがログアウトするのを見送った後にログアウトした。
***
翌日、いつもどおり学校に登校した。
だが、今日からはいつもの学校とは違う。あんなデコちゃんと一緒のクラスだと判明したからな。
「…………」
実際に席についてみるとかなり離れてることが判明した。俺の青春は終わったな。
だって、あんな可愛い子人気者なんだろう。俺は知ってるぜ。
ぼっち(80%)歴が長いからこそ、そういうのには敏感なんだ。ふふふっ。
朝のホームルームから2限まで悲壮感漂わせつつ過ぎていった。
そして3限目と4限目は家庭科の調理実習。なぜ高校の必修にこんなもんがあるんだ。
「それじゃあ、好きにグループ組んでね。ただし机の数以上のグループはつくらないでよ」
何その絶望的状況。うちのクラスの団結力(俺を除く)をなめるなよ。ていうか気遣いうますぎて、俺を混ぜてくれることも多いのが申し訳なくなってるほどなんだぞ。
「日角くん」
家庭科室の端っこの方の机に、コソッとしていたら声をかけられてしまった。一体誰だと言うんだ。余りの俺を入れてくれる時間には5分早い――音原さんだった。
「お、音原さん」
「一緒にどう?」
「え、えっと、いいのか?」
「いいもなにも、グループ作らなきゃダメでしょう?」
「そうだけど、ほら、みんないつものメンバーとかでさ」
「私はいつものメンバーとか決まってないから」
「そ、そうなんだ」
いろんなグループに入ってるってそれはそれですごいと思うんだけど。
「そして、僕も混ぜてもらえると嬉しいな」
音原さんに向き直ったら、さらに反対というか背中に手をおかれた。この声は――俺の体育のペアの常連の北谷三芳だ。メガネが似合う委員長みたいな見た目だけど、委員長じゃない北谷じゃないか。
「あとひとり女子がいればちょうどいいな!!」
何でそんなにやる気なんだよ。後目立つからやめてくれ。
「珍しいメンバーで、面白そうだからあたしはほいほい釣られてしまうのさ!!」
新聞部、2年代表の
「よし、ここにカレー本気で作り隊を結成する!」
「おー!」
「お任せください!!」
「ほら、角秋も手を上げろ!」
「お、おー……」
「それでいい!」
「ところで角秋とは?」
「僕がつけたソウルネームだ」
やめてくれええええ!!
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