レポート10 運命の出会い

 夏休みの間は、他にイベントはなかった。というより、俺がゲットする前にやっていたらしいって話を後で聞いた。

 だからその後はレベル上げなどに励んだ。とりあえず今までより少しマシな金属軽鎧に《アイアンシールド》《ヘビーメイス》という装備になって、レベルは30前後まで上げた。

 後はそうだな。フレンドは少しだけ増えたけど、一番一緒にプレイしているのはスズネなきがする。スズネが他の人とプレイしているのか心配になる程度には。

 そして今日は――目覚ましが久しぶりにしっかりと音を鳴らした。

「うぅん……」

 乱雑に手を伸ばして、何回か空振りした後に命中。音が鳴り止んで、そのままベッドから俺は落下する。

「お兄ちゃん、お兄ちゃん。今日から学校だよー! って、落下しておられる」

「落下しておるぞ……着替えるからでてけ」

「りょかーい。もうご飯で来てるから急いでね~」

「あいよ……」

 俺は一ヶ月弱着てなかった制服を引っ張りだして、着替え終わると下のリビングに降りる。

 伊達メガネ大丈夫、制服大丈夫、髪のけ大丈夫(校則的にはアウト)、よしいけるな。

「あ、起きてきたわね。ほら、早く食べちゃいな~」

「あ~い」

 父さんは朝は早くでているから朝食が一緒になることは少ない。

「今日から二学期だよ。今学期こそ彼女を作るんでしょ、もっと元気な顔しなよ!」

「妹よ。いつからそんな俺に青春が飢えているような設定を生やした」

「いや、お兄ちゃんが彼女を作らないと、あたしも彼氏を作りにくいから」

「変な気遣いはいらん」

 俺のことをなんだと思っているんだよ。

「ごちそうさま、いってきまーす」

「気をつけてね~」

 朝食を食べ終えて、家を出る。

 満員にギリギリなっていない電車に乗って、駅からさらに徒歩5分で学校に辿り着く。

「おはようございます!」

「……はよざいます」

 校門で挨拶活動をしている生徒会にボソッと挨拶を返して学校へと入っていく。

 そしてもう少しで昇降口に辿り着くところでだった――前からきた誰かとぶつかってしまう。

「あっ、ごめんなさい!」

「あ、えっと、こっちこそ……」

 転びそうになりながらも、どうにか女子の体を支えてお互い転ばなかった。だが、メガネが落ちてしまった……まあ、見えるんだけど拾わないと。

 自分で拾おうとすると、そのぶつかった主が拾って渡してくれた。

「あ、ありがとう」

「私が悪かったから当然のことよ。ごめんなさいね」

 メガネを受け取るとき、ちらっと顔がみえた。

 金髪……ではないけど、それこそスズネの髪の色を濃くしたような色の髪だった。あとは、胸が比較的大きいと判断できて、デコちゃんだった。

 さすがに目を見ることはできなかったから、顔が可愛いかはどうかわからないけど声は作られたあざとさとかもなく自然な、俺は好きなタイプ。いや、苦手なのは極端に甲高い声とか、作り声で話してるやつだけなんだけどさ。

「あっ、ちょっとギター取りに行くんだった。本当にごめんなさい!」

 もう一回謝られた後に、彼女は去っていった。

 ――2学期はいいことがあるかもしれないな。

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