レポート7 ニューフレンド
昼飯を食った後の話だ。
再びログインする。実は結構ドロップ品でイベント素材的なものは集まっていたりする。
「ただ、あんまり取引されてないことを見るとくず鉄みたいなものなのかもしれないな……」
露店という自分で売ることができたり、チャットとか掲示板で取引してるのを確認した――結果、今俺が集めているのは低レベルからでてくるいわば数がなければ意味を成さないものらしい。
だから取引にしても数百単位になってて、そこまでの数は持ってない。
モンスターのレベルが上がるといいのがドロップしやすくなるらしいのであって、オレのレベル体でもレアな素材は出るには出るらしいが……どうするかな。
ちなみに最終的に昼までには18レベルまで上がった。夏休みだからこそできる、こもりプレイである。
さらに偶然あった心優しい先輩情報では、レベルが上がりにくいと感じ始めるレベルの基準は40の上位職になってからというアドバイスを頂いたりした。
「でもな……くず鉄でも今よりは多分マシだよな」
そんなふうにグダグダ悩んでいた。そしたら後ろから肩を叩かれて振り向く。
「こんにちは。あの、今おひとりですか?」
「まあ、そうだが?」
もうこのキャラでいいや。
「ちょっと、クエストクリアしたいんですけど。1回でいいのでパーティー組みませんか?」
「……なんのクエストかを言うべき」
実は俺は《ソルジャー》になってからクエストらしいクエストを受けてないというか、見つけられていない。
「《アーチャー》のクエストなんですが。この近くにあるサボテンの森で、あるモンスターを倒して来いってクエストなんですよ。それで、その……見ての通りのパーティーで」
男――わかりやすくするために俺に話しかけてきた男をメガネの剣士男とする。その他に金髪の男射手とローブで顔が見えない性別不詳魔法つかい。
「前衛が足りないというわけか」
「そうなんですよ……もしよければ1時間ほど、ご一緒していただけませんかね?」
「構わないんだが。俺がメイン盾となってやろう」
初期装備だけどな。
テレレッテー、ヒカクは新たなパーティーに一時的に加入した!!
サボテンの森までの道中自己紹介をしてもらった。
「僕は《ソルジャー》の《コウタキ》といいます。レベルは17です」
「迷惑かけるな。オレは《アーチャー》の《ガガ》だ」
「フヒヒッ、わ、私は《ソーサラー》の《ジュジュ》……よ、よろしくね」
どうやら女だったようだ。
「俺は《ヒカク》。見ての通りメイスと盾を使う《ソルジャー》をやっている。短い間だが、よろしく」
しかしなんだ――回復手段は心もとないパーティーだな。
サボテンの森にはすぐにたどり着いた。
名前の通りサボテンがそこかしこに生えているフィールドだ。
「砂漠みたいに見えるんだが?」
「障害物がないからこそ、逃げ場もないのが売りのフィールドらしいですよ」
俺が言うとコウタキがそう答えてくれる。いいやつだな。
「ですので、後ろからも奇襲の可能性があるのですが……殿と前どちらか任せてもいいですか?」
「ならば、前は任せるべき」
「では、これをお願いします」
コウタキはそう言って、俺にアイテムを渡してくる。コンパスに見えるが――クエストアイテムか。
「このコンパスが指し示す向きに行けばいいんだな?」
「はい。そうすれば、目的のモンスターがいる場所にたどり着くらしいです」
「了解だ」
隊列は俺が戦闘。真ん中にガガとジュジュで殿にコウタキというほぼ1列で進んでいく。
道中にモンスターは出てきたが、そこまで消費せずに進んでいける。レベルとしては敵の平均は17といったところだ。
《サンド・ワーム》や《サンド・スネーク》といったうにょうにょした奴が、地面から現れるから精神的にはかなりきてたりするんだがな。
「まだつかないのか……」
「攻略見た限りはそろそろのはずだぜ?」
全員が攻略を知らないなら気にならないけど、なまじ中途半端に情報を持っていると早く終われと思ってしまうこの気持ちはなんていう名前なんだろうか。
「フヒッ……み、みえた」
ジュジュがそう言って、うなだれていた顔を上げるとオアシスが見える。
「回復ポイント?」
「いや、あそこにクエスト対象モンスターがいるってやつだ」
どうでもいいけど、俺コミュニケーション取れてるな。大人数じゃなければ大丈夫なんだな。信じていいんだな、俺?
「じゃあ、行くぞ!!」
俺は少しテンションを上げなおして、走りだした。
「おいおいおいおい。おいぃい!!」
オアシスについて数分後の出来事。現在俺はイノシシに追いかけられている――俺の2倍位の大きさのある。
「飛んでください!!」
「わかったんだがぁ!!」
コウタキの合図で横っ飛びする。イノシシは勢いのままにまっすぐ、通過していきフィールドに生えていたヤシの木のような木に牙を突き刺して、動きがとまる。
「ガガ! 早くするべき!」
「わかってるよ。あと2匹だから、耐えやがれくださいだぜ!!」
弓に新しい矢をつがえながら空に狙いをつける。
そうこのオアシスでのイノシシを倒すことじゃなく、動きを止める動きをしている理由がこれだ。今回の目的モンスターは空に飛んでいる《サンド・バッド》と言う茶色のコウモリを一定数倒すことだった。
《アーチャー》のクエストになってる通り弓に弱く魔法に強い使用になっているらしい、そして地上にお邪魔ように用意されていたイノシシだが――倒すたびに大きくなって復活してくる。経験値は溜まっていくんだが、さすがにこの大きさになると洒落にならなかったりする。
「ついでに気絶しておけ!!」
そして今回の戦いで判明したことだ。すべてのモンスターではなさそうだが、頭を打撃武器で叩きつけるとスタン――つまり一時的に気絶状態に陥ることがあるようだ。
盾での打撃もそれに入る。
「《シールドバッシュ》!!」
「フヒヒッ《アース・ハンマー》」
俺の盾とジュジュの土魔法による打撃攻撃でイノシシは気絶状態になる。
「あと1匹。《スナイプ・ショット》!!」
そして、最後の1匹のサンド・バッドをガガが倒すと、ガガの頭上に《クエスト進行》の文字が表示される。
「撤退します!!」
「俺が一番HPが残ってるから殿を任せるべき」
「すいません、お願いします!」
「死ぬんじゃねえぞ!」
協力プレイも楽しいなと思いながら、このクエストは無事に終わりを告げ、俺達はロックスソルドへと帰還した。
***
「それじゃあ、僕達はここで!」
「また、会えたら一緒に遊ぼうぜ!」
町に戻った俺たちはそう言って、別れた――わけだけど。
「フ、フヒッ……」
「お前は一緒にパーティー組んでるリアフレじゃないのか?」
「わ、わたしは、このクエストの前に魔法が必要で一緒にいただけ……」
「そ、そうか」
ローブを被ってて顔は未だにしっかりとは見てないが、髪が長い雰囲気だけはある――というか、少しだけローブからはみ出てるからこれは長い。
「これからどうするんだ?」
「特に予定はない……自分からは、話しかける自信もな、ない」
暗に一緒に行動しないかと言われている気がする。
「夕方ぐらいから予定があるんだが……えっと、まあ、一緒にどうだ?」
「い、いいの?」
「いや、まあ聞かないとダメだけど。いいと思うぞ」
ネットは協力プレイだ! とか言っていたやつだし。
「じゃ、じゃあ、夕ごはん……少し早いけど、食べてくる」
「そうしたほうがいいな」
「そ、それじゃあ」
「いや、どうやって連絡とるきだ?」
「フ、フヒッ!?」
やばい、自分以上のコミュ症を見たせいで、俺ってまだマシなんだなと思ってしまった。ごめんなさい。
「ど、どうしよう」
「友達登録すればいいんじゃないか?」
「い、いいの?」
「俺は構わんのだが」
「え、えと、えと……じゃあ、よろしくおにゃがいします」
噛んだな。いい感じに和む感じに噛んだな。
だが、その顔色をうかがうことは叶わない。
「おう、よろしく」
今回は、俺から登録を送ってみる。
『《ジュジュ》に友達申請をしますか?』
《YES》を押してっと、30秒程度であちらにも届いたら行くフレンド欄のふたり目にジュジュの名前が追加されたぜ。
「友達って響きいいな……」
「わ、わかります……いいですよね。と、友達」
「わかるか」
「わ、わかります」
まさかわかってくれる子がいたなんて思わなかった。この子とは反りが合いそうだ。
「じゃ、じゃあ、少し早めのご飯食べてきます……ま、また」
「またな~」
ジュジュを見送った後、よく考えると早めも何も俺は家族に合わせるから、どうにもできないを気づく。
「やばい……どうするかな」
「そこの君! ちょっといいかな」
今日は後ろからよく話しかけられるな。
後ろを振り向くと、犬耳の男キャラが立っている。
「オレと一緒に特攻しないか?」
歯をみせたアニメとかだったら、星がとんでキランッとかいう音がでそうな笑顔とサムズアップを決めてそう言われた。
そんなこと言われてもな――
「行こうぜ」
乗るしかねえだろ!
こうして、俺は名前も知らない特攻野郎とレベルの高いところに特攻するという謎の行動を繰り返した後に夕飯となってログアウトした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます