レポート6 ダンジョン突入

 改めて、一旦スズネと別れて俺はNPCの元へ向かう。

『おぉ! 聞いたぞ! 《ロック・ゴーレム》を倒してきたそうだな!! それだけの力があれば、誰も文句は言わないだろう。お前に《ソルジャー》を名乗る資格とスキルを与える!!』

 テキストを読み進めて、終わると、視界に《スキルゲット》と《レベルアップ》の文字が浮かび上がる。どうやらクエストクリアの経験点も結構あったらしい。

「新しいスキルと、10レベルから蓄積されてたスキルポイント手に入ったな……ということは、スキルがとれるということか」

 今更になるがこのゲームのスキルはレベルアップで手に入れられるスキルポイントで手に入れられる。《サブ職業》についてはスキルポイントとは別のシステムらしいと聞いたから、《メイン職業》の話になるけどな。

「えっと、とりあえず《ブレイク》っつうのが、基本攻撃スキルで盾を使うなら《シールドバッシュ》っていうやつがあると、盾でぶん殴れるんだな……とらいえずこの2つをとって……あと1個取れるな」

 いろいろとある。

 《ブレイク》はその名の通り、武器で強打する技、《シールドバッシュ》は盾を使ってぶん殴る技。

 その他に《ソルジャー》スキルとしてはソード専用の《スラッシュ》やアックス専用の《竹割り》などがある。

「でもな。メイスだしな……うん? スキルポイント少し多めに使うスキルがあるな。《タフネス》か」

 HPの上限が増える常時発動型――つまりパッシブスキルだな。

 こんなものまであるのか。知らなかったな。

「よし、これを取るためにスキルポイントはためておこう」

 俺はそう決めると、メニューを閉じて――武器屋へと向かってみることにしよう。スズネがまだいるかもしれない。


 ご親切なNPCの道案内に従いながら、武器屋へと辿り着いた俺。中にはいろんなプレイヤーがそろっていた。

 少しオンラインゲームということをふたりプレイしていて忘れかけていたというくらいだ。

 オープンワールドが広いから、意外とフィールドだと人と出会わないのだ。

「おーい、スズネ!」

「ん? あ、終わったの?」

「おう、無事に終わった。そしてレベルも13レベルになった」

「そういえば、結構経験値もらえるわよね……これからどうする?」

「レベル上げとか《サブ職業》なんかに手を出してみたいと思ってるけど、そもそもそろそろ初期装備じゃきついかなって思ってな」

「そう……ねえ、明日もログインする?」

「うん? する予定だぞ」

「じゃあ、明日まで初期装備で頑張るのが吉よ」

「なんでだ?」

「明日イベントが行われてね。初心者向けのイベントで、武器用の素材のドロップ率が上がるのと、武器が入った宝箱がでてくるダンジョンに入れるらしいのよ。だから、明日にそこで素材あつめて、運が良ければ宝箱でゲットよ」

「たしかにそれは願ってもない提案だな……だけど、ダンジョン入ったことねえよ」

「も、もし、夕方からでいいなら、私も付き合うわよ」

「本当か……それならよろしくなんだが」

「ふふっ、だからなんなのよその口調」

「ただ、その物言いだと今日はログアウトか?」

「そろそろ寝ないと明日の部活に遅れちゃうわ」

 時間を確認してみると、夜の11時だった。

「……ひとりでやるのもあれだし、俺も寝るかな。明日の夕方のために」

「そ、そうするのがいいわ! ……おやすみなさい」

「おう、おやすみ」

 徹夜プレイするつもりだったが、明日に予定ができてしまったなら仕方ないよな。みんなそうするはずだ。俺も今日はログアウトすることにして、メニューを開いた。


 ***


 翌日。今日も俺は朝飯を食った後にログインする。いや二日目だけどな。

「よし、朝はひとりで素材集めと洒落込もうぜ」

 意気込んで向かうは、《ロックスソルド》から一番近く《ソルジャー》なりたてに有名なダンジョン《ガンガン岩石穴》。

 ロック・ゴーレムを含めて10レベルから20レベルまでのモンスターがでてくる5階層のダンジョン。階層が深くなるに連れてレベルは上がっていく――と攻略サイトにのっていた。

 ただ、今はそのイベントで少しばかし、モンスターのポップ率――出現率や種類が変わっているそうだから気をつけなければいけない。

「入る前にオンラインのわちゃわちゃで入るか、フレンドのみ許可する固有空間で入るか選べるのか……これはしらなかったな」

 ダンジョンの入り口の看板で、パネルがでたので確認したらそういうことらしい。

 これはオンライン状態で大人数でいって獲物の横取りや喧嘩を抑止するための措置だろうな。

 極端だけど一種の正解だとネトゲの中堅ユーザー(自称)の俺は思う。

「それなら、今日はレベル的にも1階か2階ぐらいしか無理そうだし、固有空間でやろう」

 そう設定して、入り口から中に入ると一瞬光の中を歩くような画面になる。やはりこれがロード画面らしい、俺はここで確信した。


 ダンジョン内に侵入すると、そこは暗い洞窟などとかではなく、外からの外見とは全く別の空間になっていた。

 明るい砂漠のようなフィールドだ。ただし、イメージ的には廃れた遺跡のようなイメージで、柱や壁などがそこかしこにありしっかりとゲームフィールドになっている。

「おっと……早速でたな」

 少し歩いているうちに、ロック・ゴーレムと遭遇した。

「新技を喰らえ!! 《ブレイク》!!」

 俺はなんとなくジャンプして、ロック・ゴーレムの顔にメイスをねじ込んだ。MPが消費されて、いつも以上にロック・ゴーレムが揺れてHPも減っていく。

「やっぱり、いいな攻撃技!」

 前はともかく、今ならばロック・ゴーレムよりも俺のほうがレベルは上だ。

 一方的に狩らせてもらおうじゃないか!

 ネトゲ徹夜狩場プレイの経験のある、俺のソロ可能状況でのずる賢さをみせてくれよう!!

 ここから俺の自重なき、リアル時間でいえば3時間に渡る狩りが始まった。

 ロック・ゴーレム、ロック・ゴーレム、《ロック・トカゲ》、ロック・ゴーレム、ロック・ゴーレム、ロック・トカゲ――

「よし、2階に行くとしよう」

 合計で50体も狩っているうちにレベルは14に上がっていた。そして経験値も溜まりにくくなっている。

「そういえば、俺ダンジョンにレベル上げしにきたんだっけか?」

 そうつぶやきながら、次の階層へと移動した。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る