鳰の海
泡沫恋歌
第一巻 瀬田の唐橋
(式子内親王「新勅撰集」)
その煌めくさざなみが、やがて穏やかな流れとなる
その存在は古くは日本書紀にも記されている。「唐橋を制する者は天下を制す」という云われるほど、東国から京の都に入る唯一の橋であった。
その「瀬田の唐橋」のほど近くに、高貴な姫君がひっそりと暮らして居られた。だが、普段は静かな屋敷の中がざわめいている。
しかし、当の本人、
乳母の湖都夜には内緒だが、もう男に通って来られるのは煩わしいと姫君は思っていて、人知れず平穏な日々を送りたいのである。
「姫君、これはまたとない、ご縁でございます」
「もう、
「何をおっしゃる、姫君には
おおいに乗り気な乳母は、姫君の尻を叩いている。
今は、まだ若いので正五位、式部大輔と官位は低いが、将来有望な
今なら
こんな片田舎の
瑠璃姫の父君は、
そうなると、遠方ゆえに近衛大将は通うことも儘ならず、男の愛情は思った以上に早く冷めてしまわれた。都の女たちの元ばかりに通われて、瀬田の母君の元へは、月に一、二度しか通っては来られなかった。
瑠璃姫が生まれて、瀬田の長者の娘、湖都夜が
乳母は田舎育ちだったが、若い頃、都で貴族の屋敷に奉公したことがあって、都育ちの女主人を尊敬し憧れていた。
元々、病弱だった母君は、瑠璃姫が七つの時に
母が亡くなって、北の方の元へ引き取る話もあったが、幼く愛らしい姫君を……あの悋気の強い妻の性格を知っている近衛大将だけに、瑠璃姫の養育を乳母の湖都夜に任せて、この地に姫君を残した。
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左近衛府には
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