第1話 始まりと愛



2016年、春。

私は無事に医科大学を卒業し、付属病院へ就職した。

そして、それと同時に昌臣との婚約も決まった。



最近はとても忙しくしていて、昌臣は家に帰れず病院へ泊まり込みだった。

さすがに一ヶ月以上もこの様子だと、私は寂しくてたまらない。

いてもたっても居られず、私は家を飛び出し病院へ向かった。


「はぁ、はぁ・・・っ、昌臣はどこ?どこにいるの・・・」

あこは息を切らしながら昌臣を探した。

すると、暗い廊下の向こうから白衣を来た昌臣が歩み寄ってきた。

『なっ、お前今日はどうした?』

昌臣はびっくりして問いかけた。それもそのはず。この前も同じように夜、病院へ来た。

「だって・・・ずっと家に帰ってこないし、寂しくて・・・」

『そうか、寂しい思いをさせてすまない。』

「ねぇ、あのね・・・あなたを想うとドキドキして、身体が熱くなって・・・食欲もなくなって・・・ため息ばかりなの・・・これってどんな・・・病気かしら?」

あこはわかっていながらも昌臣へ聞いた。

『それは・・・俺に対する恋煩い・・・だろうな。』

「そう、そうなのね。もう、私はあなたなしでは生きていけない・・・ねぇ、治して?この病気を治して?」

『治せって・・・どうしようもないよ?俺の専門外だ。でも・・・1人の男としてなら、治してやれるな・・・』

昌臣はそう言うとあこを抱きよせ、キスをした。

「んんっ・・・はぁ・・・じゃあ・・・1人の男として私の病気・・・早く治して?」

あこは昌臣を求めるように見つめて言った。

『お前はいつからそうやって俺を誘うようになったんだ?まぁ、積極的なお前も嫌いじゃないな』

「っ・・・あなたが私にそうさせてるのよ・・・!」

あこは恥ずかしそうに言った。

『会議室、空いてるから。そこでゆっくり、お前のその病気を治そうか・・・ねっ?』

そう言うと、昌臣は私の手を引いて会議室へ向かって歩き始めた。

「お仕事は?」

『もうとっくに終わってる。すこし事務仕事してた。』

「そう・・・なのね。お疲れさま。」

話しているとあっという間に会議室へ着いた。

『はい、どうぞ』

昌臣はドアを開け、あこが先に入るのを見て、後から自分もも中へ入った。

そして、鍵を・・・かけた。


私はドキドキしていた。このあと何が起こるんだろう?治すって・・・どうやって。

なんとなくわかってはいたけど、知らないふりをした。


『あこ、そこに座って。』

「はい・・・」

私は言われた通りに椅子へ座った。

『で?その恋煩いがどんな具合か見せてもらおうかな。』

そう言うと昌臣はあこの腕を掴み立ち上がらせ、自分へ引き寄せ、頬を包み込むように両手を添え、ゆっくりとキスをした。

「んっ・・・ふっ・・・んん・・・っ」

昌臣のキスは、とても温かくて甘くて、でも刺激のある濃厚なキスだった。


昌臣はあこの唇をゆっくり離した。

「っはぁはぁ・・・」

とても激しく濃厚なキスにあこは上手く息継ぎ出来ずに、息があがってしまった。

『あこ、こう言うキスは慣れていないのか?息があがりすぎ。』

そう言うと昌臣はカルテに何かを記入していた。

「昌臣、何書いてるの?」

『何って・・・あこの病状だよ。キスをするとどうなるのか・・・をね。』

「そう・・・なの。私の病気は治るの?」

『それはまだ分からない。もう少しあこの身体を見ていかないとね。次は・・・ちょっとここに横になってもらおうかな。いいね?』

「はい・・・」

あこは、会議室の端にあったソファに横になった。

『ん。ちょっとごめんね』

昌臣は、ソファの背もたれに左手をつき、右手であこの洋服のボタンに手をかけ器用に外していく。

「やっ・・・恥ずか・・・しいっ」

あこは思わず手で昌臣の手を抑えて止めた。

『あこ、手をどけて?病気治せない、ね?』

「・・・っ」

『うん、じゃあちょっと・・・こうしちゃおうかな。言う事聞けないんじゃ仕方ない。』

そう言うと、昌臣はあこの両手を手に取り、サッとネクタイを外し、その、ネクタイで両手を頭の上で縛った。

あこは手の自由を奪われた。

『ごめんね。続けるね』

昌臣はなれた手つきでボタンをすべて外し、あっという間に服を脱がさてしまった。

『うん。とてもキレイな身体をしているね。これから、俺色に染めるのにとても良いキャンバスだ。』

昌臣はその事もカルテに書いておいた。

「また・・・書いてるの?」

『そうだよ。君の身体を目で見た状態をね。さて、今度は心の音・・・聞こうかな』

そう言うと、胸に聴診器を当てて音を聞いた。


ドクンッ

ドクンッ

ドクンッ

ドキドキドキドキ・・・


『あこ、胸の音がとても早いね。ドキドキしてるのか?それはどうして?』

「だって・・・昌臣が・・・こんなことする・・・からっ」

あこは顔を赤くしながら答えた。

『なるほど・・・それは興奮状態にあるってことでいいね。』

昌臣はその事もカルテに書いた。

『はぁ。あこ、お前はとても重症だ。診察して助言するだけじゃ・・・治らない。身体に治療を施す必要がある。』

「そうなの?じゃあ・・・」

あこは言いながら昌臣を見つめた。

『あこ、明日の仕事のあとまたここに来れる?その時に愛の手術を・・・しようか。』

「はい・・・あしたまたここに来ます。愛の手術したら、治る?」

『それは、やってみないと分からないな。』

「そう・・・分かった。」

『もう朝になる。あこは一度帰ってすこし寝なさい。俺は残りの仕事をして朝礼出てから帰る。』

そう言うと、昌臣は脱がした洋服をあこの身体にかけ、会議室を後にした。

あこは洋服を着て、テーブルに置いてあった自分のカルテを鞄へしまって会議室を後にし、家へ帰っていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る