小さな指

小学校入りたての頃だっけかな。

俺は関西方面に住んでおり社宅が立ち並ぶマンションというかそんな感じの団地に住んでたはず。

そこの玄関の扉ってのが重い扉で出入りするのが結構大変だった記憶がある。

こんなのに手とか挟まれたらたまんねぇだろうなぁ・・・とか思ってたがな・・・。


ある時幼稚園時代からの友達のO君と小学校から俺の同級生で友達になったちょっと頭の悪そうなC君と

3人でうちの団地で遊んでいました。

スタージンガーごっことかしてたんでしょう、俺はもちろんジャン・クーゴ、

O君結構細身のいい男(小学生が何を)なのでサー・ジョーゴ、C君変なのでドン・ハッカ(w。

でも文句を言わないでごっこをしてたのだろう、団地の公園で破壊をつくしていた3人。

おやつの時間だったので俺んちに行くことになりました。


俺とO君は幼馴染なのでかなり中がよかったんです。

気がとても合い行動も足が乱れることなく一緒に動きました。

二人ともなんか違和感を感じるんですよ、そう、C君です。

なんかボッケら~~としてトロいんです、俺ら3人で動くと一歩遅れてのたのた付いてくるのよ。

俺たち二人は思いました「こいつ邪魔だ」(今考えると鬼だよな)。

そもそも呼んだ訳でもないのにこいつはその場にいたんだけどね。

「砂場に置いていっちゃおう!」おやつを提供する側の俺としては自分らでC君のおやつを

分けて食べてしまおうという算段でした、O君ももちろん同意し乗ってきます(こいつも鬼)。

特にO君はクラスが違ってC君には義理も友情も何もありません、放置万歳だったことでしょう。

俺こそがC君の味方をすべきなのだが・・・言いだしっぺなんだよね(汗。


んでC君が砂場近くの滑り台に上ったのを見計らって俺ら2人は滑り台の影に隠れました。

ボケてるC君は滑り台の上で笑いつつ降りてきます、降りてきて他の2人がいないことに気が付きます。

「MOIく~~ん、Oく~~ん、どーこー」みたくとろい喋り方だったと思う。

顔は糸目で年中笑顔で欠けっ歯な辺りが特徴だったどこかお多福なイメージなC君。

今思うとかなり可哀想なことをしたと思う、逆の立場なら彼はこんなこと絶対断っていたろうな。

俺がC君の立場なら泣き喚いてその他二人に殴りかかってたはずだ・・・。

そんな幸せないい人を絵に描いたイメージなC君が団地の反対側を向いた瞬間

俺は家の入り口方面にダッシュしました、O君半歩遅れてついてきます。

もちろんC君気が付きません団地の壁際までダッシュした俺たちは影からC君を見守ります。

気が付いてないC君が面白いので2人で観察してました、すぐに帰れば計画成功だったものを・・・。

ニヤニヤしながらC君を見てると突然C君が振り向いたんです、いつもの彼ならノソ~っと振り向くのに!。

やべぇ!気が付かれた!、というかきっと俺ら追われないと面白くなかったんだろうな。

仲間はずれにされたことも気が付かずC君はもったり走ってきます。

俺とO君は足が速いほうだったんで追いつけないのも無理はないがC君があまりに遅いので

団地入り口の水のみ場で休憩、息切れが収まった頃C君が団地横を出てきました。

そこで俺は更に残酷な仕打ちを思いついたんです。


家の玄関直前まで引き付けて締め出しちゃえ!さすがのC君でも悲しい顔するぞと。


子供って残酷だよネェ・・・よくもまぁそんな残酷なことを思いつくもんだ(俺だろ。

O君も我らの友情に煽りを入れたいようで大賛成、あいつは要らないの一点張りです。

結局水のみ場で3人集まってしまいます、C君ニコニコしながら「楽しいネェ」状態。

俺とO君目で合図しながらタイミング見計らって階段にダッシュ!。

俺は自分ちの団地なので2段飛ばしでひょいひょい上がり一気に家の前まで来ます。

O君ちょっと階段が苦手なのかもたついてます、なんとC君O君の後ろに迫ってます。

俺は慌てて扉を開ける準備をします、この扉重いからなぁ・・・。

かーちゃんにばれたら怒られること必死なので静かに事を行わねばならない。

俺は音を立てないように扉を開けました、体をはさみ閉まらないように固定しO君を待ちます。

O君は階段を上りきったようでC君はおにごっこと勘違いしてるのかO君の手をつかみます。

O君計画が丸つぶれになるのを恐れ手をつかまれたまま扉に向かってきます。

俺は早くO君を部屋に引き入れないと!と思いO君の手をつかみ部屋に引き入れます。

O君はC君の手を振りほどくため手を必死に振りますがなかなか振りほどけません。


その時団地内に強風が吹きました。


バターン!


俺とO君は家の中で何が起きたのか状況がつかめません。

うちのかーちゃんが「何今の音!!」って台所から駆けて来ました。

扉が閉まってます、家の中には俺とO君だけいる模様

O君の手を引っ張り合ってるうちに風で扉が打ち付けられて閉まった音かぁ・・・。


「ァァァ・・・・」


??なんかうめき声って言うか泣き声が聞える???

C君かな?まぁ扉厚いし聞えないだろうなぁとか軽く考えます。

俺ら2人は気にしないで家の中に入ろうとしました。

かーちゃんおやつちょーだぁ~~・・・・と母親を見ると

視線は俺らを見てません、玄関を開けようとしてます。

こ、これはまずい怒られてしまう、仲間はずれなんかして他のばれたらおやつどころではない。

でも現実はおやつどころの騒ぎではなかったんですよ。


「何なの!!この血は!!あんたたち何してたのぉ!!」


そしてそこには小さい肉片が落ちてました。

C君の指です。


もうこうなると俺ら二人は泣いてわめくしかできません。

見た光景がそれだけでその後のことは俺もよく覚えてません。

救急車が来たとは思うけど家の中でO君と二人で泣き喚いていた記憶しかありません。

夕方うちの母親はC君の病院に行きご両親に誤りにでも行ってたのか食事の用意もありません。

泣き止んだ俺はO君も親に連れられ帰ったその家で事件のあとを見てました。

玄関は血だらけでC君の指と思われたものはもうありませんでした。

玄関でうめき声を上げていたC君の顔はどんなんだったのだろう。

あの取れてしまった指はくっ付くのだろうか、C君の指は生えてきたりしないんだろうか。

血の後は朝になっても残ってました、母親はその日からその話はしなくなりました。


次の日学校にC君は来てませんでした。


O君もショックでC君の話には触れずにいた。

自分たちのしでかしたことの大きさはかなり子供心ながらにトラウマになっていることだろう。

現実今でも俺は巨大な扉や重量のある扉を見ると指の落ちていた玄関の光景を思い出す。


事件の日から数日後うちにC君とその母親が顔を出した。


どうやら相手の親は子供同士のじゃれあいなのでそんなにご立腹ではない様子。

ただうちの母親が頭下げているのは記憶に残ってる。

その横で俺はC君の顔も見れなくずっと下を向いていた。

でもC君はいつもと同じお多福顔でニコニコしていた。


「指~取れちゃった~けど~くっついたよ~まだ~動かないけど~ほらぁ」


いつもの調子で哂いながら包帯巻いた指を見せてくれた。

くっ付いたんだ、俺はC君の指をちょっとだけ触らしてもらった。

包帯には血がにじんでいる、そんな状態で平気な顔しているC君が凄いと思えた。

指が取れたのに、俺らが指を取っちゃったのに、ニコニコ話してくれるC君がでかく見えた。


「また追いかけっこしようねぇ~」

その日帰り際にC君が言ってくれた。

俺は「ごめんね」としか言えなかった。

でもC君はニコニコしてるだけでなんで謝ってるのかも理解してない顔をする。


その後C君は学校にやってきた。

C君は俺が2年生の頃まで同じクラスで親友ではなかったがそこそこなかの良い友達で終わった。

C君は俺らが仲間はずれなどしていたと微塵にも思っていなく

結局彼に対しての仕打ちは俺とO君の中でのみ記憶されることになる。


その後、O君と俺はあまり遊ばなくなった。

理由は特にないだろうけど元々クラスが違うのだからC君の件は関係ないだろう。

O君はその後2年に上がる前にどこかに引っ越してしまった。

母親に聞けばどこに越したのか分かるのだろうけど聞いたことがない。

彼はその後C君に会えずに話もできずに気まずい状態で引っ越したのだろうか。

現在の彼も大きな扉や重い扉を見てC君の指のかけらを思い出したりするのだろうか。


会社でサーバールームの大きな二重扉を見てC君の指を思い出した。

落とし前つけなきゃいけないのは俺のほうなのに彼が何故指つめないといけないんだろうなぁ・・・。

でかい扉を見ると自分の指を挟んでみたくなったりするMOIだった。

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