第15話

「司祭、そんな法衣着て暑くないの? 見てるだけで暑くなるわ」


「これですかぁ?」


 かなり厚めの袖をひらひらとさせる司祭。


「涼しい魔法素材で熱線を4分の1にカットですっ。ダメージも4分の1ですっ。すごく涼しいですっ」


「そうなの……」


 魔物よりも暑さにやられつつある勇者にとって、涼しい顔をする司祭は嫌がらせ以外の何物でもなかった。


「勇者さまっ」


「なんだよー」


「私と一緒に涼みませんかっ?」


 勇者の目の前で、変質者のごとく、法衣の前を開きつつ……見えないな……勇者に下の着衣を見せる。


「霊的特命捜査官さーん、ここにヘンタイがいます。犬神使いのごとく逮捕してください」


 呆れた目つきでしれっと言う勇者。


「本当に角刈りにコート姿の変態捜査官が来たらどうするんですかっ?」


「司祭を逮捕してもらうけど」


「違いますっ」


 チッチッ、と人差し指を振り、司祭は否定する。そして、勇者の顔をまじまじと見つめる。


「普通、『勇者』が変態の称号ですっ」


 顔から足の先まで、勇者を舐め回すように見る司祭。靴こそ革製の丈夫なブーツであったが、乱れた長髪と、布製の簡素な服は勇者どころか、国中のどこよりも所得水準が高いファッションの街としてはひどく質素であった。


「それにしても、勇者っぽくないですねっ」


「まさか、頭からパンティをかぶれとでも?」


 司祭の視線の先にはイヌミミモードで自らを演出する幼女チワワと、魚のような顔のオペラ歌手のポスターが貼ってあった。


 どうする、司祭?


「勇者さまっ、私がお金を貸しますから、装備を整えましょうっ」


 グレー金利分まで利子を取ってやろうっ……司祭の目には漫画的に「¥」の文字が浮かんでいた。

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