第26話
中に入ると、部屋の割に大きなテレビに、佐々木先輩がいつも持ち込んでいるような、アニメーションの映像が流れていた。プラズマだかレーザーだか、なんかそんな感じのちょっとお高めなテレビだとか。
部屋は、いつもと違い、割とこざっぱりとしていた。莉紗に似たような感じなのだが、何となく女性っ気が少なく感じるのは本人の性格故か。
「というわけで、浩一君はいつもどおり夕食の準備だ。カレーの材料を買ってあるからな。ルゥは特売日に買いだめしておいたのが食器棚の上に置いてあるから、それを使ってくれ」
「はーい」
やっぱりこうなるのか。俺は。
「ぉ兄ちゃん、手伝うよ」
「わ、私も……」
祐佳里と莉紗の声、振り返ると、
「は、裸エプロン」
思わず卒倒したくなるような、そんな格好。祐佳里は黄色いアニメのプリントが入った……佐々木先輩が用意したものだろう。莉紗は薄水色で、胸元の張り具合が限界ギリギリという感じ。
「どうしてそういうことになってるんだよ」
「そりゃ、もう、ぉ兄ちゃんの為だよ」
「か、彼氏に奉仕よ」
「お姉ちゃんはやらないほうがよかったのに。食べられなくなるから」
「料理の腕なんてどうでもいいでしょ。見た目味八分、美味しいもの見ながら作ったら美味しくなるのよ」
「気が散るから、着替えてくれないか」
俺は、彼女たちに背を向けてカレー作りに勤しむ。具材を切り、鍋で炒めてから、水を加えて煮込む。ルゥを入れて、最後に少し牛乳を加えて、完成である。
「さぁ、できましたよー、って何なんだよ、先輩方まで」
「浩一殿の食事会であります。女の子よりどりみどり、さあ食べるであります」
先輩方まで裸エプロン、ってどういうことだよ。
「パジャマパーティーならぬエプロンパーティーってとこだな」
「やめてください。取り敢えずみんな、なにか羽織って。普通の格好するまで、おれ、あちらで食べてますから」
そう言って、台所のほうへ向かう。
なんか、春だからかな、みんな変に浮かれているのかな。そんな事じゃ説明も付かない暴走ぷりに辟易するも、少なくとももう二年、変なアパートで暮らしていくことに一抹の不安を覚える。
でも、今までのことを振り返ると……莉紗は悪くない。どちらかというと、祐佳里が悪い。ま、最大の変人は佐々木先輩であるが、あれはベクトルが違いすぎて影響は軽微だ。祐佳里のせいか、巻き込んだのは俺って事か。あーいやだ。
そんな自己嫌悪に陥るも、ふと振り返って皆の方を見ると、皆、下の服装に戻っていて、佐々木先輩がセットしたであろうアニメの映像を見ながら、和気藹々としていた。
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