第25話

「どーせ最低になるんだったら、気が狂って私にそれを突き立てるとか、もうどうしようもないくらいに滅茶苦茶にしてよ、祐佳里を。性のはけ口だよ、ぉ兄ちゃん」

「祐佳里、落ち着け」

「ずっと期待していたのに。ぉ兄ちゃんと再逢して、お互いの気持ちを再確認して、そのまま肉欲におぼれる私たちを、幼い頃から、ずっと期待していたんだよ」

「過激だな、祐佳里くんは」

「金平先輩!」

 いつの間にか、金平先輩まで話の輪に加わっていた。

「来るのが遅いから、出向いたが……こりゃ、修羅場だな。今のハーレムアニメの流行だそうだが」

 佐々木先輩によれば、アニメを売りたい資本側が勝手に、流行っている雰囲気を演出しているだけ、らしいが。

「取り敢えず、ウチにこい。言い分はアタシが聞いて白黒付けるから、弁論は今から考えておくこと。あと、浩一はアタシのダンナ、はぁと」

「その『はぁと』とか言うの、気持ち悪いんですけど。あと、主夫になる予定もないですし」

「何か言ったか?」

 そんな反駁とはお構いなしに、俺の身体は宙を薙ぐ。先輩が、俺の身体を抱え上げたのだ。

「あんまり暴れるなよ。祐佳里さんも、七星さんも、アタシの部屋に来な」

「先輩、降ろしてくださいよ」

「分かった、分かった。アタシの部屋に着いたらな」

 さすがは、数々の運動部の助っ人を務め上げ、全国大会への道筋を付けてきた御仁である。俺のことを難なく抱えたまま、階段を造作も無く降りていく。

 いつもの白衣姿の佐々木先輩は、部屋の前で右往左往していたものの、俺たちの姿を認めると駆け寄ってきた。

「やっと来たでありますか。みゆき殿、御苦労であります」

「着いたから降ろすぞようこそ、アタシの城へ」

「……魑魅魍魎の住まう、魔王城みたいなものだが」

「浩一殿、ひどいであります」

「だってそうだろ、勢いとノリだけで滅茶苦茶やって」

「滅茶苦茶、って何をやってるんですか?」

 莉紗が茶々を入れる。

「祐佳里、ぉ兄ちゃんに滅茶苦茶されたいな」

「バカっ!」

「珠姫、ずっとこんな状況」

「『お隣さんと従妹が俺を取りあって◯◯なんだぜー』……ってハーレムラノベみたいな展開ですな」

「そんな状況なら」

「そうでありますな、我々も参戦せざるを得ないですな」

 二人の先輩の不気味な微笑み。

「ま、とにかく部屋へ入れ。そして、アタシと……」

 うわーっ、金平先輩が恥じらっているの初めて見た気がする。

「じゃ、お邪魔します」

 言葉の最後は無視した。

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