○と△と□と×と

「総じて言ってしまえばそれは本当につまらない。ただのサバンナのような。生きているだけの獣の巣食う、記憶と思い出の集まりでしかない」




 僕の小説には珍しく、ツンデレでも、ロリでも、少女でもない。もう80を過ぎたお婆さんは僕にそう言った。アイドリングをしようとmixi用の小説を書き始めたものの、意味もない。ただ長崎に帰ってきて久闊を叙して、思ったことを書きならべるだけだ。



 この文章に意味なんかない。



 むしろ文章に意味を持たせたことなんてない。



 意味は読者が勝手に作るものだ。




 「そうですか」




 この文章の今から先を考えているわけでも、方向が定まっているわけでも、登場人物さえも決まっていない。



 あえて言おうか。この登場人物は変わっていく。一人と喋るつもりなんてないんだよ。



 じゃあこうしよう。



 今から登場する僕とはつまり、今回の語り部であるところの僕。つまりホリであり、徒言遣いであり、キノコであり、魔物であり、松本亮介である。



 そしてこれから登場する彼女とはつまり、僕の中の彼女。それは恋人とか二次元とかいう意味ではなくて、僕に関わってきた女の子。



 誰だと断定するつもりもない。



 それは誰にも似ていて、誰でもないのだから。



 これから登場する彼も同様だ。



 だから割愛してやる。



 男に興味無い。いや人間に興味無いんだよ。



 僕らしいだろ。



 自分らしさの意味を考えるのにも、秋田!



 もとい、飽きた。




 「僕ってどんな人間かな」




 一度目。



 ある少女。それは僕よりきっと年上で、年上とはいえないけど、今現在の僕から過去の彼女を見れば、ただの少女だ。




 「鏡」




 彼女はそう言った。鏡みたいだと。




 「なんやねんそれ。どういう意味?」




 「なんか自分を見せないの。なんていうのかなー。鏡を通して出ないと自分を他人にさらさない。全てを演じてみせる」




 そう言った。



 はい、キャラチェンジ。



 時間軸が過去から、今日に移ります。




 「僕、うまく笑えてなくなったかな?」




 二度目。



 ある少女。それは僕の同族だ。いや同属。



 だから嫌い。同属嫌悪ってやつ?俺のこと知った風に言いやがって、僕の心に土足で入り込んできたやつ、殺す。でも彼女のことは好きだ。顔も整っているし、全く、つまらねえな。一緒に死んでくれるんだろ?じゃあ早く準備しろよ。首締めに行くよ。




 「いーや。君は人に気を遣いすぎるところがあるからね」




 帰り際にこう言いやがった。




 「私となら、二人で遊んでも、楽しい?」




 言ってやったよ。




 「そうだね。お前ならいいかもね」




 決まってないよ、僕!



 そこは「同じだろ、楽しくない」だろ!



 人を傷つけられない僕でした。



 はいキャラチェンジ。



 時間軸が今日から昨日。




 「この小説……」




 三度目。



 今度は眼球をひっくり返しても少女にはなれない人だ。誰かはわからない。



 言ったろ?



 特定な誰かを登場させてるわけじゃないんだよ。



 僕の日常や人間関係を覗いた気になるんじゃねえよ。



 ってか興味無いよね。




 「つまり、若さってことでしょ。青いの」




 青くて悪いか。



 俺だってもう少しモラトリアムしたいんだよ。




 「はい、机に落書きしてる、松本君」




 四度目。




 「え!」




 「ちゃんと授業聞く!」




 「すいません」




 「ところで、メガネ、変えた?」




 変えてねぇよ!



 お前は走馬灯のように消えろ!




 「それってつまり、のれんに筆おろしってことだろ」




 なに、そのまとめ。



 帰れ。




 「顔に手が生えた足なんだよ!」




 なに!?



 足なの!?



 顔なの!?




 そうして僕の小説には珍しく、ツンデレでも、ロリでも、少女でもない。もう80を過ぎたお婆さんの再登場さ。




 「自分を肯定したり、正当化するには他人が必要なのさ」




 僕はそう言うよ。



 ほら、言うよ。




 「僕が一人で足掻いたところで何の意味もないの」




 僕はお婆さんに尋ねたいわけじゃない。



 キャラチェンジ。




 「それってつまり、のれんに筆おろしってことやねー」




 帰れ。



 キャラチェンジ。




 「ちょっとエッチな表現になったけど、意味は何となく伝わるでしょ?のれんに筆おろしてもねー。童貞キラーもお手上げだよ」




 帰れって言ったよな。



 キャラチェンジ。




 「まぁ、いろんな童貞を貪る。それがつまり若さってことでしょ。青いなー」




 「そんなら僕は早く大人になりたい」




 「気を使うなって。ほんとはもう大人のくせに。君は人に気を遣いすぎるところがある」




 あっそ。




 「鏡」




 「はい?」




 「鏡みてよ、鏡」




 なにさ。




 「顔に手が生えた足みたいな顔してるね」




 めちゃくちゃだな・




 「ところで、メガネ、変えた?」




 「変えてないってば」






 最後に。




 「僕は適当点数何点になったかな」




 キャラチェンジ。




 女の子だ。



 あんただけは許そう。なにもかも。




 「僕は適当なのが、大好きさ。めんどくさいのも同じでね。そうやってはぐらかして逃げるんだよ。適当だったら逃げれるからね。だから……」




 そう、この文章には意味なんてない。




 つまらなかった。




 最低だよ。




 でも一つだけ。




 言わせてよ。




 「興味無いです」




 なにもかも。




 そう、生きることさえも。




 でもあんたがいるならもう少し、生きてもいいかな。




 他人の考え方を想像して自分を正当化するのにもまた、飽きた。

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