第3話怪盗Zの正体1

「うっ…それはおいといて…」

「えー!気になるよー!…あ…あれ?人がいる…?誰…?」

リコは遠くに見える人影に興味を示したようだった。

嗚呼ああ、おーい!ゼオー!」

俺の声に反応して近づいて来たのは…普通以上に煌めく黒の長めの髪。兎の様に二房ふたふさ弱右寄りでハネていて、それ以外の髪は左下でまとめている。エメラルドの瞳には到底人とは思えない様な鮮やかな虹彩。女の子のリコより低い身長。白のタンクトップの上に、肋骨の真ん中あたりまでの半袖の濃いめの灰の上着。黒のスカーフの下から見えるシルバーの長方形のネックレス。Zの文字のついたスキニージーンズ。モデルの様な着こなしのチビ青年だ。

「まだ紹介してなかったね。こっちは…」

「ゼオだ、よろしく」

俺が説明する間もなくゼオが口を挟んだ。

「…(私より身長低いや…何歳なんだろ…?)」

リコもやっぱり身長に驚くようだ。まぁ、低いしなぁ。

「…お前今、超失礼なこと考えただろ…これでもゾイと同年齢だっ!身長のことはとやかくいうなよっ!」

「!?(えっ…!?…うっ…嘘っ!こ、この人エスパー!?)」

リコが何を思ったか大体俺でも想像がついた。いやいや…無理ないって…だって俺等18だぜ?けど、ゼオ身長142㎝だし…

「しゃーねーんじゃね?お前あからさまチビだし。」

「うるせえっ!てめぇ知ってて言いやがって……」

ウィー…ん?近くの部屋の扉が…

「…うるさいのは…そっちだろ…」

出てきたのはゼオより長い少し立っている淡い金髪。それを上げている白い左下にZの文字のついたバンダナ。異常に鋭過ぎる眼光と目付きの青系のブラックオパールの瞳。右耳には黒い波打つような模様のイヤーカフ、左耳には五連になっている丸の原石のピアスをつけ、首には黒のヘッドホン。肩から下げる様に交差してベルトがついている服には右下にそこそこ大きく髑髏がプリントされている。下にはダボッとしていて左に大きなポケットがついているズボン。198㎝もある約2mの身長も重なってものすごく恐ろしく見える、優しいのに超不器用系不良男子。

「ジア!」

「…ところで…その女…の子…誰…?」

「俺の彼女!絶てぇ狙うんじゃねーぞ!」

「ゾイの…前言ってたな…そういえば…俺はジア…名前…教えろ…キロクしといて…やる…」

「ジア。怖い。その言い方は怖い。」

既にリコはちょっと怯えた素振りを見せていた。いや、見せないように努力しているのはわかるのだが。

「仕方…ねぇだろ…」

ジアは根っからの不器用だからな。わからなくはないが。

「えと…私は…リコ。よろしく」

「ん…おぼえ…といて…やる…お前…リコは…作業室入っても…良いぜ…」

!?いきなり呼び捨てかよ!?しかも作業室に入るのを許可するだと!?未だに俺ですら絶てぇ入れさせねぇくせに!?おい…ジア…お前…まさか…

「えーっ!ずりぃー!何で俺は駄目でリコは良いんだよーっ!」

ゼオ!?お前まで!?あ¨あ¨!?てメェ等…まさか恩を忘れた訳じゃあねぇよなぁ!?少なくとも俺はお前等に彼女奪い取られる様な事はしてねぇつもりだったんだがなぁ!?

「ゾイー!おっ帰りー!連れて帰ってこれたー?」

出てきたのは、男にしては可愛い過ぎる。と言っても過言ではない従順な子犬みたいな顔の金髪。前髪が雷マークの様になっていて、右側の髪は逆立ち、左は多少ツンツンしてはいるが降りている。カッターに赤紫の右の胸のあたりにZの文字のついたベスト。黒のすらっとしたジーンズ。ラベンダー翡翠の薄紫の瞳。身長は高いというほどでもないが、決して低くはない、は完璧な厄介な可愛い系青年だ。

「おー!流石だな!Aプランでいけたぜ!ザウ!」

とりあえず感謝を込めて誉めておく!なんせ完璧だったしな!

「えっヘヘヘ…」

あ…後ろからそっくりなのがもう一人…

ザウとの違いは左右対称ってことかな。髪型もベストの文字の位置も…。こいつはザウのズエ。よく勘違いされるがザウが兄だ。ちなみに、ベストの色は青紫。

「そりゃー良かった!あぁ、話には聞ーてるよ!…確か…」

「リコちゃんだよねぇー!俺はザウー!」

「俺はズエ!宜しくー!あ、変な名前とか言わないでね?」

俺達はまだ誰一人としてわかっていなかった。たった少しの変化で俺等があんなことになるなんて…

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