第5話 ビッチ誕生
「あ、あ、あのさ、聴いたんだけどあんた金払えばキスしてくれるんで、でしょ?」
はぁはぁと息をはずませながら、どこかのクラスのどっかの女子が声をかけてきた。
いまの俺は学校で知らない人はいないほどのくそビッチ。
といっても、読者諸氏が期待するような【ワーオ♥】はやっていない。そんな勇気はない。
俺の童貞はオリハルコンよりも強固にできている。
というのも、あっさり【ワーオ♥】をしてしまったときに
その後同じ女子から性欲が回収できなくなる可能性もある。
俺が"誰かのものになる"のは一番避けるべき展開なのだ。
「ね、ねぇ、どうなのよ。して……してくれるんでしょ?
お、お金ならさ……ケッコー用意してきてるから……さ」
高校生のバイトでは破格の金額の札束がチラつく。
それも手汗でぐっしょりと濡れている。
「ああ、いいよ。でもお金はいらない。
放課後に3階の理科準備室に来て」
「う、うんっ! うん! 約束だからね!」
女子は息を弾ませながら教室へ戻っていった。
俺がビッチ化してからこういう展開はもう何度も経験した。
シャツのボタンをはずし、肌を露出させて、ズボンを下げる。
できるだけひとりで行動し声をかけやすい環境を整える。
そして、性欲をあおるようにパンツを偶発的に見せていく。
いわば釣り針。
放課後、理科準備室には顔を真っ赤にした女子が待っていた。
クラスでは元気系でさも"性知識に詳しい"とばかりにエロ用語を大っぴらに言っていた。
ふたを開けてみればただの乙女。
俺に声をかけたのも、自分の性知識に実体験というリアリティを肉付けしたいんだろう。
「い、いいんだな?」
「もちろん」
「キスしていいんよな……? 本当にいいんだな?
あたし……えと、キスするぞ」
言いながらもきょろきょろする女子。
俺は少女漫画に出てくるようなイケメン風に強引にキスをした。
たぶん、これが女子側にとって"エロ漫画とかで夢見るシチュエーション"なんだろう。
「んむっ……!」
暖かい。
緊張と焦りと興奮が入り混じりほてった体がわかる。
俺はそっと彼女の腰に手を回す。
びくんと体を反応させる女子。
でも、この先の展開を期待しているのか抵抗はしない。
よしよしこの調子だ。
俺もだいぶ場数をこなしてきているので性欲を煽り立てるのも慣れてきた。
「……ぷはっ」
彼女が俺の体を触れようとしたところで唇を放す。
「えっ、どっ、どうして……!?」
「どうしてって、約束はキスまで、だろ?」
「そうだけど……その……」
まあ、俺も性欲が逆転していなければ同じようなこと考えていただろう。
女の子とキスをしてその先の展開を感じさせるような動きをしつつの……生殺し。
こんなことされたら、もう頭がおかしくなる。
性欲ほとばしる俺たちの年齢からすればなおさらだ。
「じゃ、これで」
でもこれでいい。
これくらいでいい。
「ま、待って! 明日も……明日もいい……っ!?」
そら来た。
俺は心の底でガッツポーズ。
生殺しにされたらそうなるよね。
数を繰り返していくうちに先に進めると期待する。
これならコンスタントに性欲を安定供給できる。
「ふふ……ようし、この調子でばんばん回収しよう!」
まさに順風満帆。
性欲供給工場のような仕組み作りに我ながらほれぼれする。
……なんて余裕ぶっこいていたのもこの日までだった。
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