第3話 vs委員長

学校につくと、もうそこは俺の知っている学び舎じゃなかった。


「見なよ、この男の体やばいよねぇ」

「わーー抱かれたいわぁ」

「ねぇ、***も見てみたい」


女子はごく当たり前に男の裸が出ている雑誌を開いては、

俺の信じていた"やまとなでしこ"像をぶっ壊すワイ談を楽しんでいる。


一方、男はというと……。


「女ってホント下品だよなあ」

「ヤルかヤレないかばかりしか考えてないんだもん」

「あんなの好きになる気がしれないよ」


「ええええ!? なにこの逆転!?」


突っ込まずにはいられないほどの掌返し。

つい先週まで、お前ら下ネタで友情を確かめ合ってたじゃないか!


制服も女子はパンチラどころかパンモロ。

胸のボタンはほとんど外して、ひどいとブラすらない。


「アツ――イ」


というのが理由らしいけど、健全な男子高校生には目の毒過ぎる。

が、どうやら反応しているのは俺だけらしく

他の男子生徒は真夏にもかかわらずすべてのボタンをびっちり閉めている。

ここは軍の指定学校か! ……と言いたくなるほど。


たまらず博士に連絡を取る。


「博士! 学校はさらにデンジャラスになっていたよ!」


"そんなことでいちいちワシに電話するんじゃない。

 それよりも性欲は回収できたんじゃろうな?"


「回収ってどうすればいいんだよ!」


"前にも言ったじゃろ。半径1m以内にいくだけでよい。

 接近すればするだけ効率よく回収できるからの。

 あ、そろそろドラマの再放送はじまるからそれじゃの"


「うおおおおい!! 真面目に仕事しろぉぉ!!」


通話は一方的に切れてしまった。

俺の堪忍袋ももう少しでキレるところだった。


なんとか耐えきったものの、大声を出したのは失敗だった。


「君、学校でケータイを持ち込んでるの?」

「い、委員長!?」


同じクラスの委員長が仁王立ちで立っていた。


「あなたもこの学校の校則で

 ケータイ電話の持ち込みが禁止されてることはわかっているでしょう?」


「いや、あの……これは……お、大目に見てくれませんか?」


まずいまずいまずい。

ここでケータイを回収されてしまっては大いに困る。

A笠博士との連絡はとれないばかりか、下手をすれば腕輪だって回収される。


そうなればこの世界を正常に戻すことができなくなる。


「なにか申し開きはある?」


まるで時代劇の罪人みたいな気分。

俺は高校生活はじまって以来の初土下座を敢行した。


「ご、ごめん!! どうしても連絡が必要だったんだ!

 なんでもするから、このことだけは多めに見てくれ!!」


誠意(物理)を地面に頭をこすりつける。


「な、なんでもするの……?」


「ああ! 俺にできることなら何でも!

 だからこのことだけは許してほしい!!」


「じゃ……じゃあ……」


委員長の生唾を飲む音が聞こえた。



「……ねを……いい?」


「え?」



「胸を……もんでいい……?」


「はあああ!?」


思わず顔を上げると委員長は赤面しきっていた。

この期に及んでとっさに出した自分の言葉を思い出した。


"なんでもするから"って……完全にそういうことじゃねぇか!!


委員長は息が荒くなり、俺の胸元に目が釘付けだった。

え、これ、俺……どうなるのよ!?

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