第2話 日曜日の悲劇
1話でお世話になったみなさま、どうも、少年こと俺です。
一回の男子高校生がどうしてマッドサイエンティストの
A笠博士と知り合いになったとかは次回の話にすることにする。
たぶん書かれるであろう外伝とかエピソードゼロとかで語れるはず。
それよりも、今の話をさせてくれ。
――俺は今、ぜっさん痴漢にあっている。
「……声を出さないでよ。何もしないから」
満員電車の中、窓際に立つ俺にだけ聞こえる声でささやく。
それも明らかに真面目そうな年上会社員OL。
俺のケツにどれだけの価値があるんだよぉ!!
「あと一駅だからがまんしてね……。
お姉さん、なにもしないから」
ケツ揉んどるじゃねぇか!!
と、のどまで出かかった言葉をぐっと飲み込む。
それよりも先に、俺のケツに伸ばされた手が別の人によって捕まった。
「この
次の駅で降ろされた俺と痴漢女性は、駅員室に閉じ込められた。
あと、痴漢だと訴えた中年のハゲ親父もおまけで。
「君、怖かったよね……。
ああいうときは叫んでもいいんだよ。
女性はいつも性欲を持て余したけだものだからね……」
「そ、そうですか……」
なんだこれ。
なんだこれ。
なんだこの状況?!
見るからに痴漢をしそうな中年オヤジに俺が励まされている。
ファンタジーで例えると、女騎士を捉えたオークみたいな男に。
一方、女性はというと。
「……しょうがないじゃない。
目の前に男の子がたったら、女なら誰だってムラムラするわよ」
「君! 相手は年端もいかない高校生だぞ!!
これがトラウマになって残ったらどうするんだ!!」
「その子だってまんざらじゃなさそうだったわよ!」
「それは加害者側の言い分だろう!
女はいつもそうだ! 自分の性欲をすぐに肯定する!!」
駅員室はおっさんと女性の怒鳴り合いになった。
俺は真っ先に手を挙げた。
「あの……帰っていいですか!?」
電車でもそうだったが、帰り道でも世界の変貌に目を見張った。
コンビニでは女性がエロ本を立ち読みしている。
男は全員が長袖長ズボンばかり。
テレビでは性犯罪に手を染める女性のニュース。
性欲逆転。
その意味がおぼろげながらわかってきた。
「いったい……いったいこれはどうなってるんだよ!」
「なんじゃ、研究室を出たと思ったらすぐに戻ってきて。
いったじゃろ、性欲が逆転したんだと」
「詳しく話してくれよ博士!」
「えーーめんどいのぅ。
今は世界を治す装置づくりで忙しいんじゃ。
お前さんが理解できるように説明するには時間かかるのじゃ」
「元に戻せるのか!?」
「もちろんじゃ、ワシを誰じゃと思っておる」
「A笠博士」
「いや、うん……まあ、そうだけどね……。
そこはもっとこう……褒めるところじゃない?」
「とにかく、元に戻す方法を教えてくれよ!
前に性欲を集めればいいって言っていたよな!」
A笠博士はうんうんと大きく頭を振る。
「世界修復装置には強烈なエネルギー源が必要なんじゃ。
この世界で最も強大なエネルギーはずばり性欲」
「そ、そうなの……?」
「これを使え」
A笠博士は機械仕掛けの腕輪を渡した。
「その腕輪をつけていると、
お前さんの半径1m以内の性欲を吸収し
ワシの研究室へ届けてくれる」
「半径1mって……かなり狭くない?!」
「わがまま言うな。
ハイスペックマシンには制限がつきものじゃ」
「とにかく、これで性欲を集めてくればいいんだよな。
わかったよ。それじゃ電車とかにのって痴漢から……」
「バカ! そんな鮮度の低い性欲を集めてどうする!
エネルギー源には新鮮な若い性欲が大事なんじゃ!」
「この博士めんどくせぇ!!!」
腕輪をぶん投げて博士の額に直撃した。
「お前さん、明日から月曜日で学校じゃろ?
学校なんて性欲を集めるには最適じゃないか。
その腕輪をつけて学校に行き性欲を集めるのじゃぁぁ!!」
「ええええええ!?」
かくして、俺の性欲に満ちた学生生活がはじまる。
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