第7話 夢は何故見るか?
眠っている時に見る夢というのは、
一体何のためにあるのだろう?
精神医学的に見れば、
夢は起きている時に起こった事を整理して、
ストレスを発散することに役立つと言う。
けれどぼくは、
夢を見て、ストレス発散に役立ったと思ったことは、
ほとんどない。
むしろ余計に悩まされた。
この頃のぼくは、
現実とは全く関係のない夢をよく見る。
そこに出て来る人たちは、
たいがい会ったことのない人ばかりだ。
そしてぼくは、
見たことのない場所にいる。
ぼくは小説を創作する人間だが、
夢の中の情景まで、
日頃から創作しているわけではない。
それではどうして、
行ったことのない場所にぼくはいて、
会ったことのない人たちと会っているのか?
将来会う人たちにあらかじめ会っているのか?
ぼくは、自分で言うのも何だが、もうたいした年だ。
これから会う人なんて知れている。
残りの人生も、
少なくとも今まで生きた年月ほどはないに決まっている。
ここで一足飛びに断言してしまうと、
いやだなあと思う人もいるだろうが、
ぼくは敢えて断言する。
ぼくは、夢の中であの世にいるのだ。
夢の世界とあの世の世界とはつながっている。
何かの根拠があって言うのではない。
しかしそう考えれば、
何故眠っている時に夢を見るのかということを
少しは説明出来ないだろうか?
夢は、ぼくたちが
死んだ後に住む世界の
予告編だ。
だって、死んだ後の方が
ぼくたちには無限の時間がある。
死んだ後の世界の方が本物で、
生きている間にぼくたちがいる世界は、
何かの勘違いだ。
しかし勘違いだからといって、
全く価値がないわけではない。
勘違いの世界で
勘違いなことをする人たちの間に生きて、
ぼくたちは一つでも愛を体験する。
人を愛する、何かを愛する、
そうした愛する体験こそが、
死んだ後の人生を
豊かにするのだと思う。
不思議な世界のこと 中川家成 @booklike0522
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