第6話 妄想的な部分




今では、精神病は、脳の機能的な障害ととらえられているようだが、

どうやらそれだけでは解決出来ない要素が

あるような気がしてならない。

そんな気がするのはぼくだけではなく、

むしろ昔の人は、みんな

精神病というのを、もっと不思議なものと

みなしていたようだ。

何も、どこかの宗教の指導者のように

超越的な能力を表わしていると

言い切るわけではない。

精神病の症状というのは、

そんなに美しいものではなく、

そばにいる人をがっかりさせるような

稚拙なものが多いのは確かだ。

かくいうぼくも、精神病の妄想の体験がある。

体験者として敢えて言わせてもらえれば、

精神病の妄想の中ほどに、

ぼくが宇宙というものの存在に

直に近づいたという実感をしたことがない。

そもそもその実感が妄想なんだと

言われてしまえば、それで終わりだが。

じゃあ、世の中の普通の人は、

何一つ妄想というものを持たずに

毎日を過ごしているんだろうか?

そもそも何が妄想で、

何が現実か、

ちゃんと認識して暮らしているのだろうか?

たとえば会社員の方は毎日会社に勤めている。

会社という所は現実にあるから、

妄想ではない。

そこで働いている人たちも

現実に存在するから、

妄想ではない。

昼休みに食事をするレストランも

妄想の存在ではない。

そのようにして、

人々は何もかも現実であると確信をして、

会社の何もかもが現実だと認識している。

しかしこんな言葉を聞いたことはないだろうか?

『会社の常識、社会の非常識』

人間、一人一人は比較的まともでも、

集団になると、妄想的な要素が多くなる。

自分は妄想的な組織で暮らしているんだという

意識を持って暮らすことは、

人間は大事だし、

人間、一人一人も、

どこか自分の中には

妄想的な部分があるということを

しっかり認識することが

大事だと思う。

その妄想的な部分こそ、

いわゆる

宇宙とか神というものに近付く

大事な部分なのだから。

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