第4話 俺とオレと私4

「じゃあやるかぁ」

 掃除が終わった後、メンバーがぽつぽつと帰り始めている中、俺と折崎は隣り合って置かれている空席を借りて、スマホ画面と睨めっこしていた。

「おっすお願いしますっす!」

 威勢のいい折崎の返事とともに画面の中でマルチパズルが進行し始める。最初は折崎のターンであったが初期配置ドロップの配置と色があまりよくなかった。

「うーん、難しいですねえ……」

 と難色を示しつつ、すらすらと譜面最大コンボを軽々と決めていくのは流石の腕前だといえよう。俺も頑張らねば。

「ほらほら、パルオの出番ですよ~」

「ふむふむ」

 順番が回ってきて次は俺のターン。ここは一発、完璧なパズルをして折崎に一泡吹かせてやろう。そう思った俺はいつもより気合を入れてパズルに臨む。

 が、しかし、

「あー……ごめんやっちまったわ」

 組みあがったのは4コンボという、折崎と比べるとなんとも恥ずかしい結果になってしまった。

「ふっ」

 スマホ画面を見ていた折崎が小馬鹿にしたような笑みを浮かべて、横目で俺を見てきた。完全に馬鹿にされていて悔しい。

「折崎あれだ、俺まだ本調子じゃないから。自分スロースターターだから仕方ないんだ」

「へーそうなんですかー」

 俺のせめてもの言い訳も軽く流されてしまう。1年以上続けていてこれは、やはりパズルの才能がないんだろうか? いやそんなことは断じて!

「つか最初に言ったじゃないか、俺下手ですよって」

「まあそれはそうなんですけどこれは……ねえ?」

 自分から誘っておいて実に文句の多いやつである。まあ下手に気を使われるよりもやりやすいからいいんだけども。

「ワンモアチャンス!」

 チャンスは1度限りではない、次こそはと俺はさらに気合を入れた。

「あはは、ついにパルオが壊れてしまわれたか」

「うるせぇ! 見てろよ今度こそ決めてやる」

 つかパルオ呼びはやめろというに。

「はいはい、見てますよ~」

 必死になってパズルをする俺をにやにやと眺めながら彼女はそう言った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

レンアイナツキ @okapati

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ