第3話 俺とオレと私 3

 それからすぐ後の授業中、俺は先ほどの山田の「恋愛ごとに興味がない」発言についてぼ~っと考えを巡らせていた。

 先ほど恋愛関連で春とどうこうなる想像をしたと答えたがあれは今から何年か前の中学の時の話だ。

 もしかしたら今もそうなのかもしれないが、当時の俺は異性に対して非常に興味があり、例えるなら性欲猿のようなものだったので恋愛の対象はだれでもよかったのではないかという風に俺は考えている。

 それに興味はあったとはいっても自分から何か行動するようなことはなかったし、向こうからも何もなかった。成就することなく終わった恋愛である。

 そして進学し、高校生になった後はこれといって何もなく、普通の幼馴染をやっているつもりだ。

 いまさら俺が春に対して恋愛感情を持つなんて有り得るんだろうか。そこは考えても想像がつかなかった。

「……」

 がしかし、俺とは違い、春または秋は別なのかもしれない。

 彼らはもしかしたら恋愛に興味があり、現在進行形でそれが続いているのかもしれない。

 俺はこちらに気取られないように、ちらっと春と秋を見てみる。

「……」

「……?」

 ……気づかれないように見たつもりだったのだが、なぜか春にバレてしまった。秋は周りを気にも留めず爆睡しているというのに、この差は何なんだろう。

 なんでもないと首を振って俺は目線を教壇に立つ教師に戻した。


 放課後、俺は数名のクラスメイト達とともに教室掃除に勤しんでいた。

 掃除担当のメンバーは週替わりでその都度、メンバーは重複する人を除いてランダムに入れ替えられる。今週は運悪く俺が当番に当たってしまっていた。

 わいわいがやがやとゆっくりと掃除が進行している中俺は一人のメンバーに話しかけられていた。今年同じクラスになって、漫画や携帯アプリなどの娯楽の話題で大いに盛り上がり仲良くなった女友達、折崎である。

「ねえねえ」

「はいはい」

「あとでさ、ここのダンジョン手伝って下さいませんでしょうか」

 となぜか下手に出て差し出してきたのは某スマホアプリで有名なパズルゲームだった。

「ああ、いいけど俺相変わらず下手だぞ?」

 しかしあいにくと俺はパズルゲームが苦手でランクだけが並みに高い、所謂エンジョイ勢であるのに対し、折崎は高ランカー課金上等のガチ勢である。

「いやいや手伝ってくれるだけでありがたいんですよぅ」

 そんな彼女がなぜ俺のような雑魚に手伝いを頼んでくるか、理由は簡単。今このクラスで彼女以外のパズラーは俺だけらしいからだ。割と人を選ぶゲームだからなこれ。

「へーい了解ですよ、掃除終わったら行こうか」

 特にこのあとやることがなかった俺は彼女の頼みを快諾した。俺も素材集めとかいろいろ行かないといけないしな。

「おお、信じてましたよパルオ~」

「パルオ呼びはやめろ」

 ちなみに折崎が呼ぶパルオとは俺が5秒で考え付いたゲーム内での名前のことである。

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