血洗い川

 アララギの中からこんにちは。夢を与える代償に家中の毛細血管をひねり潰していく無駄妖精の登場とともにスタジオから落雷をともなって激しい暴力が繰り広げられる瞬間。うむ煩悩はやはり国産にかぎる、シンパシーが持てる、それとも信仰に疑問が? 神父は握りこぶしほどもある笑顔を育成するのに夢中で畑は荒れ、雨さえ降らない状態だ。だから民衆は「教会で胃薬を育ててはいけません、そしてミサの途中で放送禁止用語を絶叫するのも禁止!」と怒り狂って教会の壁にマーキングする行為を合法化した。「うんこなげろ!」人は言う。だが写本に人生を捧げた少女は必死のいいわけをする。「だってこれは生活に必要な事だし、そもそも誰もジョントラボルタのポスターを貼ってはいけないって教えてくれなかったじゃん! もう貴様らは殺す! 言い訳をする必要のない人生を送りたい!」その日から教会の側を流れる川は血洗い川と呼ばれた。そのタイミングで血を洗いたがる変態が民族大移動で押し寄せてきて結果的に住民は耐えきれずに発砲、それがいけなかったの、それがいけないのよ、神父は全裸でマスタードを飲み干し、変態中毒になった住民は昼は寝て、夜は電話帳を読みながらオリーブオイルを飲むという頽廃した生活、そしてアヘン窟では毎晩のように指相撲大会が開かれて無意味なしりとりが延々と繰り返されている! だが立ち上がるものがいた。立ち上がって電話帳を読み始める者がいた。なぜだか立つといい気分だから。いい気分はいい気分だ、から気分を害するあらゆる要素をなくしていこうよ、と言われ始め、大地は消滅。部屋に貼ったトラボルタのポスターも消滅。神父の愛用していた「貞操」と書かれたふんどしも消滅したため彼は怒り狂った「復讐だ! 俺をこんな目に遭わせた奴を幸せにしてやる! いつまでも愛してやる!!」それが彼なりに表現される愛であり、当局の予想を超えた被害者の数に上層部は動かされた。「ポチョムキンを発動させよう……」円卓に座る軍服の将官が言った。「いや……私は中華料理店で水虫を我慢しているんだ……」警察総監の男が言った。「状況が状況だ、気持ちは分かるよ。しかしね……」対外政策大臣は眉をひそめながら脱糞し、必死にファブリーズをまき散らしながらなんとかなった気になっている。「だから最初から私にすべてを任しておけば……」高級官僚が葉巻を吸いながら、本当は変態になりたかった高校生の頃の夢を抑圧するのに全力を尽くす。「君たちと話し合っても結論はでないようだ……ばからしい……」全裸の大統領が言った。「戦争だ!」ペットの猫が言った。「待って!」少女が言った。「落とし物をとどけにきたの!」彼女が持っていたのはビタミン剤だった。「これは……」「なんということだ……」「我われは一体、今まで何をしていたんだ……」「フン……どうやら我われは大切なものを忘れていたようだな……」上層部はそう言いながら我先にへとビタミン剤を飲み始め、それどころかリポビタンDの流通ルートを押さえ込んでしまった。「ビタミンを我らに! ビタミンは体にいいし、きっと頭にもいいはずだ! だけど心には! ああ、心には……」本当は誰もが自覚していた。心の不在という現代の矛盾を。睡眠薬で本物の眠りが得られるような時代さ。きっと夢に出てきた見知らぬ聖母だって本物なんだろう。でも違うんだ。現実に対処するには本物の聖母でなく本物の不毛な会議なんだ。そう、俺たち本物志向! 上層部たちはその「心」でだけつながってる。それを破壊せねば……でもむしろ抱きしめたい。そんな本物の男たちを少女は久しく見てなかった。本物だ! 本物のミッキーマウスだ!! 少女はかつて聖母につれられて夢の国へ行った時の事を思い出していた。そこには本物のネズミがいた。「本物だ! わあ、本物だ! 本物の本物が本物なのか! これが噂で聞いてたビートルズか! カラシニコフ銃だ! 撃とう!」夢の国にも血は流れる。夢の国に流れる血もある。夢を求めてここへ来たひとたちは、赤い血を流しながら倒れていった。いつしか雨が降った。少女は天を仰いだ。この雨が、この雨が今日だけの池を作り、今日だけの川を作って、夢の国に現れた血液を洗い流したとき、私におくれてやってきたあなたは、ここを血洗い川となづけてください。今日来た人は今日洗い流され、次は川は澄んでいるかもしれない。でもここでは血が流れた。それを洗う人が確かにいた。だから夜の間に全てが洗い流され、くるかもしれない明日の日が大地を乾かしても、ここが夢の跡だったことを伝えてください。地は消滅した、人々がここちよく生きるために。なぜ隠すの。血のにおいを。なぜ誰も清めないまま魂を母なる海へと返すの。そこに本物の聖母がどうせいるから? 知らない場所で、知らない人たちが渚の雫になるのはどうでもいいことだから? だったら私が、この洗うほどの血が流れる河原をいつまでも愛して大地を幸せにする。それが復讐になるのだったら。夢のめざめをここで待つ。だから私はいつもいる、この血洗い川の河原の石のひとつひとつに、打ち砕かれた大地のひとつひとつに!

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