デートの予約、入れました。
私は放課後、かおるんとカナpの3人で駅前のカフェにいた。
どうして噂になってんだろ。
「…言っておくけど、私は誰にも話してないからね?」
とかおるん。
「私だって言わないよ。そんな、おとの恋路を邪魔するようなことしたくないよ。」
とカナp。
じゃあ誰なんだ。やっぱり佐久間か。佐久間しかいないな。よし、決定。
「気が早いよ。おと。まず佐久間に直接聞きゃいいじゃん。」
「そうそう。カナpの言うとおりだよ。何なら私らもついて行ってあげようか?」
いや、そこまでしなくてもいいかな…
「なら、頑張れ。」
「佐久間じゃなかったら、『覗き魔』じゃない?」
かおるんの推理力すげー。感心。
「つーかさ、なんでおと喋んないの?なぜにL○NEなの⁉︎」
何となく。
「謎。つか、怖い。」
なんで?
「普通に考えて、1人だけ喋んないとか可笑しな光景でしょう」
「なら喋る。」
「いきなり来たか。おとよ。」
「だってさ、なんか、あんまり大きい声で言えないっていうか…」
「ま、その気持ちはわかるよ。わかる。」
「あ。もうこんな時間だよ、おと。彼氏待ってるんだから早く帰らなきゃだよ!ね!かおるんだって同じ考えだよ!」
「いや、なんで…。あっ。そうそう!早く帰らなきゃ!ね!」
かおるんとカナpは相変わらず騒がしい。そこまで気を遣わなくても…と思う程大袈裟だ。
私は2人に急かされ、店を出ると真っ直ぐ家に向かった。
「ただいま。」
私は玄関のドアを開けると、部屋に明かりが灯されていないことに気づいた。随分と日も傾き、照明無しではスムーズに動けない。
「ソラ?どうしたの?」
私はリビングの照明を点けたが、ソラの姿は無く、返事すら無い。
部屋に向かおうと歩き出すと、突然後ろに気配を感じ、振り返る前にその気配は私を包み込んだ。
「おかえり。ビックリした?」
耳元でソラの囁きが聞こえてくる。
「なんだ…どっか出かけたのかと思った…」
私はソラの腕を除け、彼の方へと向き直った。
「音華、この前買ってきてくれたカーテン、付けといたよ。どう?」
私が窓へと視線を向けると、真新しいレースのカーテンが下がっていた。これは、週末にホームセンターで購入した少し高めのものだ。母から送られてきたお金で買ったのだ。
「このカーテン、凄いね。外から中が見えないようになってんだね。これなら部屋に日光も入るし、カビの心配はもういらないね。」
「うん。デザインもなかなか良いでしょ。」
「音華のセンスに任せてよかった。」
「ははっ褒めても何も出ないからね?」
私とソラは笑顔で会話した。
「ねえ、今度の週末、一緒にどっか行かない?」
夕食を済ませ、2人でお茶を楽しんでいると、ソラが提案してきた。
「えっ?」
「ダメ…かな?」
とソラは首を傾げる。
可愛いっ‼︎癒し系確定!
私は、心の中で手で顔を覆い隠して叫んだ。
「ううん!いいよ‼︎行こう!」
ソラはその言葉を待っていましたとばかりにガッツポーズをした。
「音華のお気に入りの場所に行きたいな。」
ソラは嬉しそうにそう言った。しかし、私にはそんな場所は無かった。しばらく考えてからソラにこう提案してみた。
「観覧車…乗らない?」
二駅ほど言ったところに大きな観覧車がある。その観覧車は、昔母が父と一緒に行った場所らしい。私も幼い頃に何度か行ったことがある。その都度、母はこんな事を言っていたのだ。
『音華が大きくなったら、音華の大切な人と一緒にまたここに来なさい。良い思い出になるから。』
と。その言葉を思い出し、私は観覧車を選んだ。
ソラは嬉しそうに頷き、カップに入ったお茶を飲み干した。
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