イケメンに弱い御三方

奥の部屋から出てきたソラ。

それを見て固まるかおるんとカナp。

それを訳が分からず交互に見る私。

「…知り合いだったの?」

私はそう尋ねてみた。するとカナpが言った。

「超イケメンじゃん…‼︎」

その横でかおるんも幸せそうな顔で頷いている。

「いらっしゃい。音華がいつもお世話になってます。ソラ、と申します」

「やだ、カッコいい!ホストみたいじゃん!」

「いや、カナpホストクラブ行ったことあるの?」

「ない‼︎」

だめだこりゃ。完全に夢心地の表情だ。2人の目はキラキラと輝いている。肝心のソラは、そんな2人を見てキョトンとしている。

確かにソラはイケメンですよ。イケメンですよ‼︎こんな美形が私の彼氏役だよ⁉︎嬉しいと言いますか、照れると言いますか………

「何か飲む?」

ソラは不思議そうに2人を見つめて言った。するとカナpは急に鼻をつまんでうつむいた。かおるんが驚いてどうしたのか、と尋ねるとカナpは呟いた。

「鼻血でそう……」

「アホか。」

そう言ってかおるんはツッコミを入れていたが、いつものようなスパッとした感じはなく、どこかふんわりしているようだった。

そんな2人を見てソラは私の耳元で囁いた。

「あの2人大丈夫かな?具合悪いのかな?どうする?」

「大丈夫、放置しておけばすぐ治るよ。多分。」

ソラは優しすぎると思う。それに、ちょっと鈍感すぎる。私はあえて冷たい言葉を選んだ。

「そっか。」

ソラはニッコリとしてキッチンに向かった。


2人が私の家に上がってから10分程が経過したが、2人は黙り込んだままダイニングテーブルに座っていた。すると突然、カナpが立ち上がった。「かっ…帰るねっ」そう言ってカナpは耳まで真っ赤にして玄関に向かった。それにならってかおるんも席を立った。

いつまでも続く沈黙に、私もそろそろ限界に近づいていたところだった。

私とソラは2人を黙って見送った。

私はふっと短い溜息を零した。すると、かなりの至近距離に気配を感じた。

気配のする方に振り向くと、私の顔から10センチ程の位置にソラの顔があった。驚いてその場で固まってしまった。ソラはそんな私を見て笑った。

「なんか期待した?」

「してませんっ‼︎」

私はダイニングテーブルに腰掛けた。

その向かいにソラが腰掛けて私の顔をじっと見つめる。

ああ〜今私はどんな顔をしているのだろう。イケメンに見つめられると……

「ねえ。」

「はっはいぃっ‼︎」

「え?」

「…え?」

「どうしたの?」

「いや…別に何でも…」

「あのさ…お願いがあるんだけど…」

ソラは姿勢を正して言った。

「今度の休み、デートして下さい。」

深々と頭を下げたソラを黙って見つめるしかなかった。

「どういう…?」

「…いや、ずっと引きこもってるのは嫌だし、かと言って1人で外に出ると迷って戻ってこれなくなると思うんだ。だから…」

あぁ、そういうことね。なんだ。ちょっと期待してしまった私は一体…

「いいよ。明日、一緒に出掛けよう」

「え⁉︎明日⁉︎でも学校は…」

「いいの。行っても意味ないから。」

そう。意味がない。一応高校に入ったけど、行く意味がわからなくなったことでサボりがちに…

「学校は行かなきゃだよ。」

「…え?」

「親がせっかくお金払ってくれてるんだから、そのお金をドブに捨てるようなことしちゃダメだよ。」

ソラはそう言って溜息をついた。

大人と同じような事言って………

「うるさいな。中退すりゃいいんでしょ⁉︎」

声に出してしまった…。しかし、止められる事ができずに更に

「皆して私の居場所を奪おうとしてっ‼︎なんなの⁉︎…ヒドイよ!」

と言って、気付けば部屋に閉じこもっていた。

ごめん。ソラに当たっても意味ないのにね…。ごめんね…。甘えさせて…。

涙が溢れ、足元に落ちる。それを見ると、更に涙が溢れ出してきた。

ソラにすすり泣く声が聞こえないようにベッドの中に入ると、いつの間にか眠ってしまった。

私は、その日の夕方までベッドの中にいた。

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