ヒミツを作ろう①
次の日の朝、私はチャイムの音で目が覚めた。時計を見ると、まだ5時半。今日は休日なのに誰だ。私は二度寝しようと布団を頭からかぶった。
しかし、チャイムの音が止むことはなく、うるさく鳴り続けている。
ええい!うるさい!どこのどいつだ!一発怒鳴ってやろうか。
私はイライラしながらドアを開けた。すると、目の前には稔の姿が。
「…。寝ぼけてんのか?あんた。」
私が声をかけると
「…朝ご飯は?」
予想もしていなかった言葉に思わず「は?」と言ってしまった。
「手料理食わせてって言ったじゃん。」
「いや、それは、今度って言ってなかった?つーかまだ5時半だよ?無理。出来るかそんなこと。」
そう言って私はドアを閉めた。
意味がわからん。ため息がこぼれる。さて、二度寝でもしよう。私は布団に潜り込み、眠りについた。
私が再び目覚めたのは、9時過ぎだった。
良い香りが部屋を漂っている。私はボーッとしながらキッチンへ行くと、ソラがフレンチトーストを焼いていた。
「ソラ…料理出来るんだ…。」
「あっ音華、起きた?朝ごはん出来たよ。冷めないうちに食べて。」
「あっ…うん」
私はおどおどしながら席についた。フレンチトーストは、良い香りを放ち、さあ早く食べてください、とでも言うように皿の上に座っている。私はフレンチトーストにかぶりついた。うまい。頬が落ちそうになる。
その時、またチャイムが鳴った。ドアの向こうから声が聞こえる。
「朝ごはん…」
稔の声だ。
私は驚いてドアを開けると、稔が倒れ込んできた。私は支えることもなく、ただサッと素早く避けてみせた。
稔は床すれすれの所で手をついて起き上がった。
「腹減った。」
いや、顔近いし。意味わかんねーし。バカでないの?
「だったら部屋戻ってカップ○ードルでも食ってろ。」
私は稔に冷たい視線を送りながらドアを閉めようとすると、稔はドアを押さえた。
「俺、バイトの給料日前だから今金欠なんだよね。」
と言ってニッと笑った。
私はため息をついて稔を部屋に入れた。
あ。ソラが居るんだった。なんて説明しようかな…?ぬいぐるみです。とか絶対言えないし。
「おぉ〜フレンチトーストか。あっ‼︎ちゃんと2人分用意されてる。なんだ。雨宮、俺に食べさせる気満々だったんだぁ」
え?
私は驚いて顔を上げた。
しかし、ソラの姿はなかった。
稔に大きな勘違いをさせてしまったようだ。危険だ…。ソラァァァ!どこだぁぁぁぁ!!!
私はやや涙目になって心の中で叫んだ。
「いっただっきまーす♪」
目をらんらんと輝かせて稔はフレンチトーストにかぶりついた。
「んめぇ!お前、料理の腕良いな!これから毎日来るわ。」
「はぁ⁉︎フッざけんなよ!めんどくせぇ!自分の分作るだけで精一杯なのによお!」
「照れんなよ。この2人前のフレンチトーストは俺とお前の分だったんだろ⁉︎」
「ちげぇよ!たまたま腹が減ってたから2人前作っただけだよ!返せよバカ‼︎」
「んな返すったって…あ。」
稔はそう言いかけて黙った。私が振り返ると、ソラが隣の部屋から出て来たところだった。
「あれ。雨宮、か、彼氏いたの?」
ん⁉︎何を勘違いしているんだ!ソラは…
「音華、俺のフレンチトースト、こいつにあげちゃったの?」
ソラはなんの動揺もなく私に問いかけた。
「いや、こいつが勝手に食べたの!」
「そっかぁ…残念。」
ソラはゆっくりと稔に近づき、稔の耳元で囁いた。
「俺の彼女に手ェ出してないよね?勝手に上がりこまないでくれる?」
え。か、彼女…?
「あ…。そうなんだ。雨宮、彼氏いたのか。ゴメン、邪魔しちゃって…」
稔はつかえながらそう言って席をたち、私とソラに謝って帰って行った。
さて、これで一安心……って!
「ちょっとソラ⁉︎彼女って何⁉︎フツーに"友達"で良くない⁉︎」
私は混乱のあまり、少々大きな声でソラに言った。するとソラは私の口に人差し指を当てて言った。
「あんまりうるさくしたら"お隣さん"に迷惑でしょ?それに、音華を守るためにはコレが一番良いと思ってね。」
ソラはにっこりと笑った。そして私の顎を軽く上げた。(これがいわゆる顎クイというものか?)そしてソラは少し黒い笑みで私に囁いた。
「2人でヒミツ、作ろっか?」
はい?今、なんと…?
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