新居で。

私達は、晴れて新居に引っ越すことができた。

咲夜との毎日は、幸せで、まるで天国だ。

「紗雪」

咲夜は、毎日私を起こしに部屋にやって来る。起きないと『お仕置き』が待っている。

完全なバカップルだ。


就活の時期がやって来ると、そんなバカップルさはあまり感じられなくなり、少し距離ができた。

andまさかのレス。

就活で疲れて咲夜は帰ってきたと思うとすぐに寝てしまうので、最近がレスなのだ。

私は咲夜に

「紗雪は主婦をやってほしい」

と言われているし、正直、自分でも男性と仕事をするのは苦しい。

そんなわけで、私の仕事は家の中のものだけ。

と言っても、子供がいる訳でもないし、一通りの仕事が終わると、暇になってしまうのだ。



その後、2人は大学も無事卒業し、咲夜は就活も成功してやっと一人前になるチャンスがやって来た。

そんなある日、私は暇で仕方がなかった。


私がソファで寝ていると

「紗雪」

と声が聞こえた。

咲夜が帰ってきたと思って飛び起きると、咲夜ではなく、シルクだった。

「なぁんだ。シルクか…」

「咲夜じゃなくてガッカリ?」

私は首を縦に振ると

「紗雪…正直だね…おかげで俺の心がっ…」

「だぁってさぁ〜暇なんだもん!」

「じゃあ、俺が暇つぶしの手伝いを致しましょうか?」

「本当⁉︎じゃあ、ゲームしよ‼︎」

「小学生…?」

「違うの?」

「全然違う。まぁ、ある意味ゲーム?」

そう言ってシルクは私をソファに押し倒した。

「もう、何するかわかるでしょ?」

私はその言葉に頷き、目を閉じた。

唇が重なると同時に、鼓動が高鳴る。

「…ソファじゃなくて、ベッドにしない?」

私が頷くと、体がふわっと軽く宙に浮き、ベッドに向かった。

ベッドに降ろされると同時に、シルクと再び唇が重なる。

なんでだろう。怖くない。

シルクの温かく大きな手が、シャツのトンネルをくぐっていく。その手は時々立ち止まり、私の敏感なところを刺激してくる。

あぁ、私は何をしているんだ。咲夜がいながらも…。でも、こうなったのも咲夜のせいなんだから。私は悪くない。そう、悪くない…。

私はいつの間にか、自分を正統化していた。

そして、いつの間にか私とシルクはひとつになっていた。


夕方、夕食の準備をしていると咲夜が帰ってきた。

「お帰りなさい」

「紗雪ぃぃぃ……ただいま」

咲夜は私の顔を見るなり、情けない声で返した。

「…どうしたの?」

咲夜は私に抱きつき、言った。

「…会社の先輩が…俺にばっかり、嫌がらせをしてきて…もう…心が折れそう」

咲夜のその声は震えていた。

「…そっか…。話は後で聞くから、とりあえず、着替えてきな。」

咲夜はうなずき、部屋に入っていった。

「今日のメニューは咲夜の大好きなカツカレーだよ!これ食べて元気だしなって!」

私は咲夜が部屋から出てきたところでそう言って皿を出した。

「…ありがとぉぉぉぉ〜〜」

咲夜はそう言って涙を流し始めた。

「何泣いてんの⁉︎もぉ〜…」

私は咲夜の背中をさすった。


その夜、ベッドに入ると、咲夜が私を固く抱きしめた。

「どうしたの…?」

「俺、やっぱり紗雪を選んでよかった」

「何?急に…。」

「紗雪は、俺のこと何でもわかってるみたい…。今日だって、俺の好物出してくれたし…。今までだって…。」

あぁ、今日のメニューは偶然ですよ。シルクとヤッちゃってから罪悪感が込み上げてきたから、せめて…と思って咲夜の好物にしたんだから。

なーんて、そんなこと言える訳がない。

「私は咲夜の幼なじみであって、奥さんだもの。」

私はそう言って咲夜の頬に手を添えた。

「ありがと…。紗雪…」

咲夜は静かに笑って、私にキスした。

とびきり甘い、甘いキスを。

そのまま咲夜は私から手を離すどころか、服のボタンを外し始めた。。

「さ…咲夜…?」

「ごめん、紗雪…。相手してくれる?」

えっ。昼間はシルクとヤッたばかり…

「いいよ。」

私は咲夜のことを思って頷いた。


「紗雪…?」

咲夜は息を切らしながら私に問いかける。

「…ちょっと乱暴になるかもしれないけど…大丈夫?」

私は頷く。

私はシルクとヤッてしまったけど、シルクのものじゃない。咲夜のものだ。だから、咲夜になら…。咲夜となら…。


咲夜…。

咲夜…。

もう、頭の中が咲夜でいっぱいだ。

違うことを考える余裕すらない。

私は、咲夜さえいればそれで良い…

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