涙
私は、翌日学校を休んだ。
警察に行ってあーだこーだ。
制服屋であーだこーだ。
忙しい1日を送った。
1番ややこしかったのは…。
家だった。
私が家のドアを開けるとまずシルクが走ってきて、私に飛びつく。
そしてピリカも飛びつく。
他のぬいぐるみもワーワーと私に何かを言う。
とにかくうるさかった。
「心配させてごめん。疲れたから、あんまり騒がないで…。私、寝る。」
昨日の夜は、咲夜とキスしてから、ちょっと後悔した。
ドキドキして、疲れているのに眠れなくて、寝不足なのだ。
私は、ぬいぐるみたちをリビングに移動させて、寝室の中は私1人、という空間を作った。
ベッドの中に潜り込むと、私は秒速で撃沈した。
私は夢を見た。
あの男たちが私を縛り付けて、服を脱がしてくる。
ヤダ…!やめて…!
私は何度叫んでも、それは声にならないで消えてしまう。
男たちはそんな私に構わず、自分達まで服を脱ぎ始め、1人が私に馬乗りになり、もう1人が私の足を広げる。
やめて…!やめて…!やめて…!
動けない。
足を閉じようとしても、固定されているのか、ビクともしない。
やめて…!
涙が滲んできた。
霞んだ世界は相変わらず、私を苦しめる。
やめてーーーーー‼︎‼︎‼︎‼︎
「紗雪⁉︎」
シルクの声で目が覚めた。
シルクは、部屋の入り口でお盆を持って立っていた。
「随分うなされてたよ。大丈夫?」
「う…うん。」
夢の中で3P…。最悪だ…。
「紗雪、俺、おかゆ作ったんだけど、食べる?」
「シルクが作ったの?食べたい!」
私がそう答えると、シルクは笑って言った。
「じゃあキスして?」
「…なんでそうなるの?」
「いいから。」
「…。」
私は顔をシルクの顔に近づけた。
相変わらず綺麗な顔だな。
私は、キスは寸止めで、シルクからおかゆを奪った。
「あぁっ!ずるい!」
シルクは、やられた!というような顔をして、私に近づいた。
その瞬間、昨日の男たちの姿が蘇る。
恐怖心が私を包み、私はシルクを突き飛ばしてしまった。
「…!ごめん…。つい、昨日のが…」
「いいよ。仕方ないから。でも」
シルクは私を許してくれたが
「サクヤはいいのに、なんで俺はダメなの?」
え…?なんで知ってるの…?
「シルク…?」
「俺が知らないとでも思った?俺には見えるんだよ。」
そう言ってシルクは私の口に人差し指を当てた。
「キスマークが見える。昨日はサクヤの家に泊まっていたから、相手は…。当たりだろ?」
「何?妬いてるの?」
私はからかうつもりで言った。
「妬くにきまってるだろ!」
シルクは、怒りというよりは、悲しみに溢れた表情で言った。
これは、黙っていても仕方がないと思った。
「あのね、シルク…」
私は顔を上げて、シルクの目を見ていった。
「私、咲夜と付き合うことにしたの。」
その言葉に、シルクは驚き、私の顔をじっと見つめた。
「そっか…。お幸せに。」
そう言って笑ったシルクは、部屋を出ていった。
これでいい。これでいいんだ。
これで…。
私はぎゅっと目を閉じた。
滲み出た涙は、私の手元に落ちた。
ごめん…。シルク…
その言葉は、どうすることもできないまま消えた。
夜、私はまた夢を見た。
「紗雪!」
誰が私の名前を呼んでいる。
あぁ、誰?またあの男たちなの?いい加減にしてよ。もうやめて…!
「紗雪!」
今度はすぐ近くで声が聞こえた。
あぁ、逃げなきゃ!逃げなきゃ…!
そして 、次の瞬間、私の肩を誰かが叩いた。
振り向くと、そこに立っていたのはシルクで、シルクはうつむきながら
「紗雪、バイバイ。お幸せに…」
そう言って、すーっと姿を消した。
待って!どこに行くの?シルク!シルク!待って…!
「待って…!」
自分の声に目が覚めた。
横を見ると、いつもはいるはずなのにシルクの姿がない。
私がリビングに出て、シルクを見ると、ぬいぐるみの姿になっていた。
私が何度も声をかけても、シルクはうんともすんとも言わずにいた。
それから、シルクが人間の姿になることは無かった。
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