監禁…⁉︎

朝、カーテンの隙間から光が射し込んできたのを感じて、うっすらと目を開けた。

昨日の夜は全く眠れなかった。

また寝ようと、目を閉じると、耳元で声がした。

「また寝るの?寝かせないよ?」

ハッとして飛び起きると、シルクがイタズラっぽく笑っていた。

「シルク⁉︎な、なんで…⁉︎」

「ん〜。わかんない。」

時計は午前9時頃を指している。

全く夜じゃない。

「…っ」

私は無言でベッドから降りて、カーテンを勢いよく開けた。

振り向くと、シルクはぬいぐるみの姿になっていた。

「幻覚だな。」

自分に言い聞かせるようにつぶやき、朝ご飯の支度を始めた。


「紗雪、カーテン閉めてよ。」

シルクの声が聞こえた気がして、ベッドに目をやった。

だが、シルクはぬいぐるみの姿のまま。

「今度は幻聴か。疲れてるな。」

もう一度自分に言い聞かせた。

「幻聴か…。ひでーな。俺のことどんなふうに思ってんだよ?」

またか。また幻聴か。

「もう、シルク⁉︎なんなの⁉︎」

一応、反応してみる。と。

「だから、カーテン閉めてよ。」

じれったそうな声。

「なんでカーテンなの…?」

私は、少しイラつきながらカーテンを勢いよく閉めた。

部屋が暗くなる。

それと同時に、影が動く。

振り向くと、シルクが人間の姿になっていた。ベッドに座って伸びをしている。

「朝なのになんで…?」

「紗雪、さっきと全く同じ質問してるよ。気付いてる?」

シルクはニヤッとした。

「だって…普通…気になるでしょう⁉︎」

「さっきも言ったけど、わかんないよ」

もう、訳わかんない。

「まぁ、暗ければ人間に戻れんのかな。そうだ‼︎紗雪、今日、どっかに行く予定とかあるの?」

「…無い…けど…?」

そう答えた瞬間、シルクは嬉しそうに笑って正面から私を抱きしめてきた。

「…じゃあ、今日1日、紗雪は俺のモノね。」

「…は?」

「昨日は他の男に付き合ってたんだから、良いでしょ?」

ゔ…。反論できない…。もう少し頭が良ければ…。

「よし!決まり‼︎紗雪は今日1日俺のモノね‼︎」

そう言って、シルクは私の額に軽くキスした。


朝食が出来あがった。

シルクは相変わらず幸せそうに頬張っている。

1日『俺のモノ』…⁉︎

何なんだ?

第一、シルクはきっと外に出たら、明るいからぬいぐるみになっちゃうだろうし、もしかして、ずっと部屋で過ごすってコト?

部屋で出来ることって…。

映画とか借りてきて見る?

トランプとかやるの?

……?

わかんない。

「紗雪、食欲無いみたいだね。」

ハッとしてみると、シルクが私の分のおかずを横取りして食べていた。

シルクの皿の上は空っぽだ。

「〜〜〜っ‼︎」

言葉が出ない代わりに、シルクの二の腕あたりを軽く叩いた。

「紗雪‼︎暴力はいけないよ⁉︎」

からかうようにシルクは笑った。

「シルクが悪いんでしょ⁉︎」

と言ったものの、シルクの笑顔に負けて、笑ってしまった。

こうやってシルクと笑うのは、初めてだ。悪くない。

「紗雪、今やっと俺のこと受け入れてくれたでしょ。」

気付かれた。

「シルクは本当になんでもお見通しだね。」

少し顔を赤くして笑ってみせると、シルクも顔を赤くした。

そして、シルクは私の頬に手を触れて、顔を近づけた。

「何…?」

ひぃ〜

息がかかる…

「…わ…いい」

「え?」

「紗雪、やっぱり近くで見ても可愛い」

「何?急に…。バカップル…⁉︎」

あまりにも顔の距離が近いので、私は人差し指でシルクの額を押して離した。

「紗雪、今日1日俺のモノって言ったけど、本当に良いの?」

「…?変なコトしなければ、別に付き合ってあげても良いよ?」

「じゃあ、今日1日家から出ちゃダメだよ。一歩も。」

「え。じゃあ、映画も借りに行けないじゃん。」

「いいの。俺、色々紗雪としたいことあるから。」

いや。そういう問題じゃないし。

てか、『したいこと』って何⁉︎

変なコトじゃないよね⁉︎

「よし!じゃあ紗雪、ここ座って。」

と言ってシルクはベッドの上に座った。

私は、シルクの横に座ると

「違う。こっち。」

と言って合図をした。『膝の上に座れ』と。

「え。…やだよ///」

「俺のモノ…」

あー。はいはい。分かりましたよ。座れば良いんでしょ?

緊張しながら、私はシルクの膝の上に座った。

これがシルクの『したいこと』…?

と思ったその時、シルクが私の腰に手をまわした。背中にぴったりとシルクがくっついてくる。

顔が熱くなり、鼓動がうるさくなる。

無言のまま、この状態が続いた。

やっとこの状態に慣れてきた頃、シルクの手が動いた。

シルクの手が、私のシャツの中にゆっくりと入ってくる。

「ちょっ…待って…」

「?どうしたの?」

「変なコトしないでって、言ったよね?」

シルクは一瞬黙って

「そんなコト言ってた?忘れちゃったな。」

そんな事を言って、意地悪く笑った。

やっぱり、やめときゃ良かった。

今さら後悔。

「紗雪、昨日のネックレスくれた奴ってどんな奴?」

え?急にその質問ですか?

「別に…普通の…」

「答えになってない。」

そう言ってシルクはもっとシャツの中に手を入れた。

「…っ‼︎」

「良いの?このままで。俺、いつ襲うかわかんないよ?」

「わっ…わかったから…!ちゃんと答えるから…離して…っ‼︎」

するとシルクは手をゆっくりとシャツから出したが、腰に手をまわしたままでこう言った。

「質問を続けますよ?」

シルクが敬語とか、気持ち悪っ…。

「そいつのルックスは良いの?」

私はうん、とうなずく。

「どのくらい?」

「アイドル級」

「じゃあ、モテるんだ。」

「学校のアイドル的存在だよ。高嶺の花みたいな。」

「紗雪とはどういう関係?」

「幼馴染で、親友だと思ってる。」

その時、シルクはぎゅっと私を抱きしめた。

「じゃあ、そいつの事、好きなの?」

その言葉に、ハッとした。

確かに、小さい頃からずっと一緒にいて、よくいろんな事を話して、よく遊んでた。今では同じ部活にまで入っている。でも、好きなのかはわからない。

昨日はデートに誘われて、軽くキスもされた。プレゼントだってもらった。

でも、私は今まで恋をした事がない。

だから、咲夜に対する気持ちを恋だと思った事もない。

「わからない。」

シルクは小さく、えっ、と言ってうつむいた。

「私、今まで恋をした事がないの。だから、人を好きになった時の気持ちがどんなモノかわからない。」

「人を好きになった時の気持ち…ね。今の俺の気持ちと同じ。」

「え?」

私は驚いて振り向いた。

「人を好きになった時の気持ちっていうのは、今の俺の心の中の事かな。」

「シルク、恋してるの⁉︎」

「えっ⁉︎気づいてなかったの⁉︎」

うなずく私を見てシルクはため息混じりで言った。

「俺は、紗雪の事が好きなんだよ。」

えっ…。

「まさか、気づいてなかったとは…」

あきれた顔で、シルクは私の背中にもたれた。

知らなかった…。私って、自分が思っていた以上に鈍感…。

「もう…紗雪って鈍感すぎ。」

「…知ってる。」

独り言のように私はつぶやく。

するとシルクが耳元でささやいた。

「人を好きになるって事、教えてあげるよ。」

…っ‼︎

顔が熱くなるのを感じた。

その時、立ち上がったが、私はシルクに引っ張られてバランスを崩した。

そのまま私はベッドの上に押し倒された。


1日監禁生活、スタート。

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