お二人
バタバタしながら待ち合わせ場所に行くと、咲夜が立っていた。
「おせーよ」
「だって、メッセージもらったの寝起きだったんだもん…」
それにしても、咲夜は私服でもかっこいい。
「似合うね。」
あ。思わず声に出してしまった。
「え。ああ、ありがとう…」
照れくさそうに咲夜は頭をかきながら
「お前も結構似合ってる」
と言った。
何これ。
『カップルかよっ‼︎』
咲夜と私の声が重なった。
顔を見合わせて、2人で笑う。
やっぱり、咲夜といると楽しい。
「どこ行く?」
「え?決めてなかったの?そっちが誘ってきたくせに‼︎」
「んー。じゃあ…」
ぐきゅるるるるるるる…
私のお腹がなった。
朝食抜きはやっぱりキツイ。
「ははっ じゃあ、駅前に新しくできたカフェ行こうか。」
咲夜は笑ってそう言った。
恥ずかしい…
「そだね。」
カフェは、おしゃれな雰囲気のお店だった。
私と咲夜はおしゃれな朝食をとりながら、喋っていた。
ふ、とこんな質問をしてしまった。
「咲夜は、どうして女子なのに私なら、こうやって相手にするの?」
「…悪い?」
「いや、ただ、不思議だなぁって思っただけ。」
「うーん。何かお前、女子って感じしないからかな。話しやすい。」
話しやすい。何だか嬉しい言葉だ。
「そっか。何か、ありがとう」
「どうも。…あ。俺も1個聞いていい?」
「いいよ。」
「あのさ、何でお前、家に入れてくれないの?」
「…そこ⁉︎」
「だって、気になるし。」
「べ、別に何かあるワケではないけど、他人を部屋にいれるの、何かヤダ…」
「じゃあ、他人じゃなきゃ良いの?」
「…いや、人による。」
「じゃあ、俺のこと嫌いなの?」
「違うよ!男子を部屋に入れるのって、何か、こう…」
「…エロっ」
フッと笑って、咲夜は私の目を見て言った。
「は?」
「そういうことじゃないの?」
「ばっかじゃないの?」
「はははっ おっかしー
紗雪、ガチで否定してるし。」
は?からかってんのか、コイツ。
「そんなんじゃ、一生私の部屋には入れませんからっ‼︎」
「はははっ」
もう、だめだこりゃ。
「美味しかったね。」
店を出て、2人で歩く。
周りの人たちが、私達、いや、咲夜を見ている。
「やっぱり咲夜はモテますねー。」
「迷惑でしかないけどな。」
「何?好きな人とかいるワケ?」
「…。それより…」
「話そらさないでよっ‼︎」
「…どこ行く?」
もう…。図星か…。
「どこでも…。あ。服買いたい。」
「?別にお前の服変じゃねーし、汚れてもねーだろ。」
「…。あのね、メンズ物が欲しいの。」
「…え?彼氏にあげるの?」
彼氏いないし。てか、シルクの存在はどうごまかせば良いんだろう?
「彼氏いないってこの前から言ってるじゃん。とにかく、安いやつで良いからセットで欲しいの。」
「下着も?」
「うーん…。そう、だね。」
「じゃあ、俺が買ってくる。」
「え?いいよ。」
「男物の下着買うの恥ずかしくないの?」
「そうだった…。じゃあ、頼んだっ‼︎」
「おう。」
一緒に店に入っても、2人で選ぶことはなく、目的のものを買い終わったらそれで終わりだった。
「何か、ありがとう」
「何が?」
「その…。色々。」
「じゃあ、何かお礼ちょうだい。」
「え?…。何がいいの?」
「あれ。」
咲夜は子供みたいに無邪気な笑顔で夕暮れの空に浮かぶ観覧車を指差した。
2人で観覧車に乗り込む。
何か、デートみたい。
「咲夜、観覧車好きなの?」
「まぁね。」
え?
「紗雪、あれ見て。」
咲夜が指差した先は赤く染まった太陽。
「綺麗だね。」
「太陽のことじゃないよ?」
え?違うの?
「太陽の下。あの建物。」
「…見えない…」
「こっち来なよ。」
私は咲夜の隣に座った。
そして咲夜が指差した先のものが、やっとわかった。
太陽と一緒に赤く染められた、この街で1番大きいビル。
普段は綺麗だと思うことなんて無かったのに、今は本当に綺麗にみえる。
「紗雪。」
私が見惚れていると、咲夜が私の名前を呼んだ。
「何…?」
「これ。」
咲夜がポケットから取り出したのは、小さな可愛い箱。
開けると、ずっと欲しくて学校の帰り道によくガラス越しで見ていたネックレスが。
「この前、一緒に帰った時に見てたから。」
「でも…これ…高かったでしょ?悪いよぉ…」
「…でも、もう買っちゃったもん。」
そう言って咲夜はネックレスを箱から取り出して私につけてくれた。
急にドキドキしてきた。
「…あ、ありがとう」
「うん。やっぱり似合う。」
「大事にするね」
笑ったはいいものの、顔が熱い。
「おう。」
咲夜は少し照れくさそうに笑ってから、私の頭をくしゃくしゃとなでた。
別れ際、私は何だかおごってもらってばかりで申し訳ない気がして、「咲夜の好物を作って届ける。」と言った。
しかし、咲夜は
「好物もいいけど。」
そう言って私に頬を向けて指で合図をしてきた。
頬にキスをしろ。
とでも言ってるのか。
「それは、さすがに無理。かな」
「やっぱダメか。」
そう言って、私の額に軽くキスをした。
「俺はこれで充分。」
そう言って咲夜は帰って行った。
顔が一気に熱くなっていくのを感じた。
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