第9話 星の命を喰らうもの
轟音。
それに先立つ閃光が地平線を飛び越えて放たれ、彼らの視界を焼いた。
「な、なにが起きている!」
鬼獣王エグザガリュードの侵攻から遅れること数百リグ。
第一龍装師団第13分隊を指揮する隊長ウェルキス=ウェリオン・キンバー・ストルは視界を覆う光に、思わず手をかざしながら呻いた。
ウェルキスだけではない。彼の部下たちも同様に光の渦に呑まれている。
彼らの乗る音速機、剣装機ジャルクスの視覚機能が自動的に光量を遮断、調節して装主席の装主に視覚情報を伝達しているのだが、それでも防ぎきれないほどの光の奔流だ。
続いて轟音と衝撃波が襲い掛かり、第13分隊の戦艦群は防護障壁を全開にしてそれに耐えた。
「こいつは……要塞砲だ」
事実上、ウェルキスの副官を務める歴戦の
「馬鹿な!地上で惑星要塞の砲を撃つのか!?」
惑星要塞。すなわち
惑星ベルガリアは、ベルガリア騎士団を擁する一つの宇宙要塞として運用が可能な星であり、彼らは今まさにその要塞を攻略している最中である。
その主砲は、
本来は宇宙の敵において使用されるものであり、現にこの戦では侵攻する第一龍装師団の艦隊迎撃に用いられており、獅鬼王機エグザガリュードや13分隊をはじめとする支援部隊は、要塞と龍装艦隊との砲撃戦の隙間を縫う形で惑星防壁内へ侵入したのである。
「それだけ、奴らも追い詰められてるってことでしょうや」
ドルバンは地平線の向こうでようやく光が収まるのを見やる。
13分隊含む支援部隊は、愛居真咲の獅鬼王機エグザガリュードから最低でも400リグは離れる形でその動きに追随している。
超光速騎士の超戦闘領域に近づき過ぎれば、光速戦闘の余波に巻き込まれかねないからである。
未来予測と艦隊の防御障壁の機能から算出された適正距離がこれだが、先ほどの要塞砲の余波はそれを凌駕して彼らに届いていた。
「あっちは……どうなっているんだ」
思わず、ウェルキスは同僚二人の姿を探していた。
愛居真咲とともに地球からやってきた溝呂木弧門、そしてアイヴァーン・ケントゥリス。二人もまた厳しい表情で地平線の向こうに視線を向けていた。
「要塞砲……だと?」
眼前で空間ごと地表が抉られる姿に、ノフェルは思わず立ち尽くしていた。
すでに防衛艦隊の残数は3000を切り、装機兵団も残りわずか、そして鬼獣王は変わらず彼らを削り続けている。最初の交戦から、まだ30分と経っていない。
だが、追い詰められた彼らの視界を巨大な光の柱が埋め尽くし、轟音とともに地平線までのすべてを焼き尽くしたのである。
その光景が信じられないのは、防衛艦隊のノフェルも同じだった。
惑星要塞砲をその惑星内で使うということは、自分で自分を撃つことと同じだ。劇薬そのものである。
「ノフェル司令。こちらは要塞司令官ドルニアスだ」
そんなノフェルの元へ直通通信が届く。
「ただいまより、貴官らを援護する」
「援護だと!?外はどうなっている!?」
「外部艦隊に敵将は認められず、また判明した敵の別動隊に関してはカーディウス将軍が迎撃に当たられた。
まもなく、そちらにクロッサス騎団長ら迎撃部隊が合流する。貴官らは当要塞と協力して敵主力に当たられよ」
鬼獣王に追い詰められた状況で援護を受け、さらに味方が合流という言葉に湧く
要塞砲による惑星外部の敵艦隊への迎撃を諦めるということは、すなわちこれから惑星内へ侵攻する敵艦隊を止める手段がないということだ。
そして、まだ三人いるはずの敵の軍将が不在ということは、彼らは別の場所にいるということだ。
どこへ?
それは無論、このベルガリアに向かっているだろう増援艦隊の迎撃に、だ。
敵の侵入を止められず、味方の増援も来られない。その状況で、目の前の敵に全力を投入しなければならないということだ。
ノフェルは目の前が遠くなるのを感じていた。だが、彼には現実から目を背けることも、そこから逃げ出すことも許されない。逃げ場などどこにもないのだ。
「エーテリア反応!敵、健在です!」
そんなノフェルの絶望を塗りつぶすように
光の柱が途切れ、その爆心地で、咆哮する巨獣の姿に、先ほどまで訪れていた偽りの希望は脆くも崩れ去ろうとしていた。
「第二射!準備まだか!」
要塞都市ルイードの司令室で、要塞司令官ドルニアスの怒号が飛ぶ。
要塞砲の惑星内での使用は諸刃の剣だ。惑星全体のエーテリアを集約して放つその威力を惑星そのものに向ければどうなるか。自分自身に刃を突き立てれば、いずれは出血多量での自死は免れない。
先の一撃は威力と範囲を絞り、惑星自体への影響を最小限に収めるように調整したものだ。だが、その一撃では鬼獣王を倒すことは出来なかった。
となれば、次は星への影響を覚悟しなければならない威力で撃つしかないということだ。
「し、少々お待ちください。エーテリア収束率が減退していて……」
要塞指令室に勤める砲術長も目の前に送られる情報を相手に悪戦苦闘していた。
敵宇宙艦隊には連射できていた要塞砲も、惑星内では再充填までに時間がかかる。それどころか、惑星自体の損傷により、要塞砲自体が使用不能になる可能性があった。
「発射可能な数と再充填までの時間を確認!」
ドルニアスの指示がさらにかぶせて飛んだ。
第二射で倒せるとは限らないのだ。となれば、あとはどれだけ要塞砲が使えるかまで考えなければならなかった。
「——やって……くれたな」
硬直した鬼獣王エグザガリュードの中で、愛居真咲は呻いた。
敵艦隊との砲撃戦の途中、別の敵からの攻撃を察知した真咲は防御に全力を注ぎ込み、鬼獣王の巨体の全身を覆う硬気功で惑星をも破壊するその砲撃に耐えたのだ。
惑星を破壊する程度のことは、今の真咲自身にも容易に行えることだったが、その威力を身に受けるとなればまた話が違う。まして、実際の要塞砲の破壊力はそれ以上のものだった。
「エグザガリュード!」
真咲の声に応えて、エグザガリュードが自己診断結果を提示する。
鬼獣王の全体に過負荷がかかり、機能が一時的に麻痺したものの、すでに回復しつつあった。
ならば、と真咲は再び超光速域に身を置く。
鬼獣王の巨体が一瞬にして距離を置いていた防衛艦隊に肉薄する。
敵の大砲撃を避けるため、敵艦隊と位置を重ねて砲撃を抑制する狙いだった。
すでに真咲には敵艦隊の旗艦の目星もついていた。
敵艦はどれも同一形状で、指揮系統を分散させて偽装していたが、エーテリアの流れから敵の情報網がどうつながっているかは見えている。それを辿れば、敵の命令がどこから出ているのかもお見通しだった。
300リットの巨体が、敵旗艦に接触し、しかしその直後、艦隊の姿が消滅する。
「——!?」
真咲が視界を巡らしたときには、敵の艦隊は視界のはるか彼方にあった。
真咲とエグザガリュードのような敵性個体は無理でも、連結下にある防衛艦隊や要塞都市そのものの位置を入れ替えることは自由自在であった。
それは、エグザガリュードが超光速で移動できたとしても同じことだ。
(動きを……読まれた!)
超光速域にある真咲の思考は、敵が位置を入れ替えたのを見た瞬間にはその頭上に意識を切り替えている。
果たして、上空に巨大なエーテリアの渦が集まりつつあった。
最初の一撃も同様に天上から撃たれたのだ。
真咲はその場から即座に離れようとして、その足が動かせないことに気づいた。
エグザガリュードの、鬼獣王の4対8本の巨脚が地面に縫い付けられたように動かせない。膝から下が、自分のものではないような感覚。
「エグザガリュード!」
叫ぶ!さすがの真咲の声にも焦りが混じった。理由もわからず、自分の身体が動かせないというのは気味が悪い。
エグザガリュードが、自身の脚部関節を爆破する。体内を循環する流体エーテリアルの組成を組み換え、液体爆薬に転用したのだ。強制的な切り離し機構。
だが、爆発したはずの膝から上がすでに動かせない。いや、爆発そのものが外側から何かに抑えられるように熱と光を宙で封じ込められていた。
ここに至り、真咲は現象の本質に気づく。魔術的な固定や影縫いの概念ではない。より純粋に、大気が鬼獣王の巨体を押さえつけているのだ。周囲に存在する大気はすでに空気ではなく、数百メガトンの見えざる壁として鬼獣王を覆いつくしていた。
「ずぅあああああ!」
真咲が吠えた。すでに口を抑えられて吠えることもできない鬼獣王の体内から巨大な闘気が噴き出し、その全身を覆う透明な壁を一挙に押し戻す。
ようやく自由を取り戻した真咲とエグザガリュードだが、すでに遅かった。
頭上から、彼らの真上から、巨大なエーテルの柱が降り注いだ。
要塞司令部で指揮を執るドルニアスの表情に焦りの色が浮かぶ。
要塞砲の第二射が放たれ、要塞からの事象操作で足止めを果たしたエグザガリュードに直撃した。そう思われた。
だが、現実には鬼獣王はその両腕で空から落ちる巨大なエーテルの柱を支え、押し返そうとしている。
範囲を極限に絞り、最大威力で放たれた要塞砲のエーテリア密度と強度はすでに熱量やエーテル量ではなく、大質量の巨大な柱そのものだ。
それを、巨獣は持ち上げようとしていた。
「第3射、まだか!」
司令室内を悲鳴と怒号が飛び交い、何人かが別の操作盤に飛びついて懸命な調整を行う。
その中で、何もできずにただ狼狽えるベルガリア現領主ランディウスの目の前の映像板の中で、柱を持ち上げる鬼獣王の巨体に次々と砲撃が加えられていた。
「撃て、撃て撃て撃て!」
防衛艦隊旗艦ナルメアの艦橋で、ノフェルは声を枯らさんばかりの声を上げる。
まだ生き残っていた艦隊が、柱を押し返そうとする鬼獣王へ横合いから砲撃を打ち込み、その態勢を崩そうとする。
さすがのエグザガリュードにも、この状況で彼らに反撃する余裕などない。
最大出力で放たれた光量子砲弾が巨獣に命中し、その鎧を削り、機体に穴を穿つ。耐えきれず、鬼獣王が膝をついた。
そこへ、柱にかぶさるように、もう一つの柱が天上より振り落とされる。
積み重なる二つの光の柱を支えきれず、巨獣が柱に押しつぶされ大地に沈んだ。
二つの巨大な閃光と爆発と衝撃を前に、第13分艦隊は地上に張り付いていた。
「ど、どうなっているんだ!?」
ウェルキスの言葉は、すでに悲鳴だ。
「こいつは……」
続くドルバンの言葉ももはや誰にも聞く余裕はなかった。
衝撃が収まった時、すでに彼らの前には何も残ってはいなかった。
爆心地を中心に大地が地下深くまで抉られ、放射状に広がる巨大な盆地のほかは、地平線までの何もかもが根こそぎ焼き尽くされ、吹き飛ばされていた。
その中心に、黒い巨獣の残骸が鎮座していた。
完全に炭化したそれは、わずかに揺れ、ボロボロと崩れ去っていく。
誰もが固唾をのんで見守る中、黒い残骸は端と頭頂部から次々と崩れ、あたり一面に転がっていく。
その残骸が全て崩れ落ち……残骸の中から黄金の右腕が突き出す。
残骸が舞い散り、その中心に立つ黄銅色の鬣を持つ王機が姿を現した。
「う、あ、あ、あ……」
その悲鳴は、呻きは、叫びは誰のものだったのか。
獅鬼王機エグザガリュード。鬼獣王に進化する前の姿。
30リット程度に縮んだものの、鬼が駆る獣の王は未だ健在だった。
「第4射!」
ドルニアスが要塞内の悲嘆を押しつぶすように声を張り上げる。
だが、惑星内での無理な連射により、要塞内部にすら異常をきたしつつある状況では、とても無理な状態だった。
それどころか、獅鬼王機周辺のエーテリアが急速に減少しつつあった。
「やつは、星のエーテルを吸収しているのか!?」
情報分析は、周辺のエーテリア減退に伴い、獅鬼王機のエーテルが増大する様を示している。
ドルニアスの意思もまた絶望に侵されつつあった。
防衛艦隊の一部が、突出する。かろうじて陣形を保ち、先ほどまで鬼獣王に砲撃を放っていた戦艦のほとんどが、すでに戦闘力を失いつつある中、わずかな余力を使って前に出る船があった。
「ラパン?何をしている!?」
自身の部下の暴走にノフェルが叫んだ。
「こうなれば刺し違えてでも、この艦をぶつけてでも奴を止める!」
通信越しの返答にノフェルは絶句する。
「馬鹿な真似はよせ!それでどうにかなる相手では……」
「他に手はない!」
艦隊から次々とそれに続く艦艇が飛び出す。
ノフェルは凍り付いた表情のまま、それを見送るしかできなかった。
「極大戦速!炉が焼き付いても構わん!奴に超光速でぶつけてやる!」
超光速騎であるエグザガリュードに対し、戦闘艦は本来は光速までしか出せない。
超空間航法を使わずに超光速に到達するということは、船の炉心を暴走させ、限界を超えさせるということ。その艦の自爆と同義だ。
ラパンの指示に、ひっという悲鳴が返った。
「どうした貴様ら!ここで奴を止めなければどの道俺たちが皆殺しにされる!家族を守るにはこれしかないんだ!」
ラパンの叫びにも、艦橋からは誰一人返事は帰ってこなかった。涙交じりの嗚咽とともに、艦体はさらに加速し、獅鬼王機に向かっていく。
艦内は超光速域に入り、艦橋は疑似空間でその行為次元領域を認識する。
「総員!退艦準備!」
ラパンの大声が通り、まだ若い
「急げ!あとは俺一人でやる!」
超光速域で加速された空間でも、敵への到達距離は数十秒しかない。脱出には無茶な時間だったが、それが彼の取れる最後の配慮だった。
「
獅鬼王機エグザガリュードの全身の装甲が展開する。
胸部の機関砲、胴部の連装砲、両肩の単装砲、両脚、背面から
内蔵砲の120レン程度の鋼弾では本来は充分な威力とはいいがたいが、光速弾ならば防御を捨てた戦艦を撃ち落すのに不足はない。
だが、今まで使われなかった内装砲による迎撃は、明らかにそれ以前のエグザガリュードの戦い方ではなかった。
「貴様もそれだけ消耗しているんだろうが!」
ラパンの叫び声とともにその肉体が吹き飛び、艦はエグザガリュードに到達する前に地面に追突し、爆散する。だが、その爆炎を乗り越えて、後続の戦艦が次々と突撃する。
その先端にエーテル障壁を変形させた巨大衝角が発生している。
1000リットの巨艦が、30リットの装機を轢き殺そうというのだ。
次々と艦艇が内装砲に撃ち落され、その後を追うように後続が姿を現す。
その繰り返しの果てに、ついに一隻が、エグザガリュードに到達した。
「——
内装砲での迎撃に徹し、回復に努めてきた真咲がその右腕の一撃を放つ。
直線状に続く艦体すべてが、闘気をため込んだこの一撃で霧散して消滅した。
だが、彼らは決して無策で突撃してきたわけではない。
そのわずかな時間の先で、4度目の天上が歪んだ。
エグザガリュードが真上を見上げるのと、四つ目の光の柱が振り下ろされるのは同時。
王機の腹部に収められていた副腕が、その両手で印を切った。
「
次の瞬間、王機の頭上に降り注いだはずの光が消滅する。
そして、その視界の彼方、要塞都市ルイード中枢で巨大な爆発が起こった。
「転移、砲撃だと!?」
ノフェルは、目の前で要塞都市を襲った光の柱の正体を悟り、愕然となった。
撃ち込まれた要塞砲をエグザガリュードは空間転移でそのまま要塞に跳ね返したのだ。
天体規模の標的に使われる要塞砲は、それ自体が要塞都市全体を砲台とし、収束したエーテル体を空間転移で指定座標に送り込むものだ。
同じ性質の転移砲撃を使う愛居真咲は、その巨大エーテルを送り込まれた直後に、自身の空間転移でエーテル体を要塞中枢部に送り返したのである。
本来なら要塞自体も強力な防壁で守られていたが、発射の瞬間の無防備な空間へ直接送り返されたことで、要塞砲の発射台となっていた要塞都市の中枢機能が破壊され、要塞自体の戦闘力が大幅に失われていた。
「
エグザガリュードの左腕に持たせていた光量子砲が変形、拡大し、30リットの巨大な砲身へと展開する。
鬼獣王形態では通常砲撃代わりに放っていた巨砲も、獅鬼王機では最大出力で撃たねばならない。どの道、残る敵は少なく、再び鬼獣王に変じても失った力を取り戻すだけの餌は残っていなかったけれど。
「
光量子砲から巨大エーテルが放射されると同時に、腹部の副腕が印を切る。
砲身の手前に産み出された特殊空間に巨大なエーテル体が撃ち込まれ、空間ごと転移する。
次元を歪め、空間をすり替え、その威力を落とすことなく、一つの巨大熱量を千に複製されたエーテル体が、残った防衛艦隊の一隻ずつの直前に転移し、残された艦隊をまとめて消し飛ばした。
転移砲撃の逆流で機能不全に陥った要塞指令部がその機能を取り戻したとき、要塞司令官ドルニアスが目にしたのは、防衛艦隊が旗艦ナルメア含む残された全てが同時に爆散する姿だった。
流石に消耗したのか、エグザガリュードもすぐにはその場を動かない。
だが、次の瞬間、再び巨大な砲身を構えたエグザガリュードが、要塞司令部めがけてエーテル砲を放った。
ドルニアスが何か指示を出す暇もなかった。
放たれたエーテルの奔流が司令部に迫り、その直前で食い止められる。
「これ以上はやらせん!」
紅臨機ジムナスが巨大なエーテル弾を遮り、その装主席でベルガリア騎団長クロッサスが吠えた。
もはや遅すぎる来援であった。
「——敵将が来たか」
ようやく、という言葉は口にしない。
ちょうど、真咲が敵艦隊を全滅させたところに連れてきてくれたのだから、良いタイミングだったと言える。
真咲とエグザガリュードの背後に、次々と光とともに光速騎が集結する。
宇宙で、騎団長クロッサス率いる迎撃艦隊と交戦していた龍装師団の光速騎士たちである。
「遅れました、黒獅子殿」
名前は忘れた光速騎士隊長の言葉に、どの口が言う、とこれも口にせずに真咲は嗤う。
副長アディレウスの采配の元、愛居真咲とエグザガリュードに対して順次敵主力をぶつける、それが今回の戦いの基本である。
彼らは真咲が敵防衛艦隊を全滅させるまでの時間稼ぎをしていたに過ぎない。
防衛艦隊を壊滅させた以上、真咲の次の敵は騎団長クロッサスである。
その真咲の姿に、光速騎士隊長はわずかに身を引いた。
超光速騎士である真咲が少し機嫌を損ねれば、彼は一瞬で殺される位置にある。
いかに当人が納得ずくとはいえ、敵の矢面に立たせ続けているのだ、どこでその怒りを買うのか、彼には分かるものではなかった。
「邪魔されずに戦いたい。ほかは任せていいな?」
冷ややかな、命令し、支配することになれたものの言葉が真咲の口から放たれる。
はっ、と騎士隊長が首肯し、真咲はそれに目もくれず敵に歩み寄る。
その背中が、一瞬仲間の姿を探し、背後に集合する部隊の中に、ウェルキスとともに弧門とケントゥリスを見つける。
「黒獅子、蒼星のエグザガリュード、愛居真咲」
「ベルガリア騎士団団長、紅臨機ジムナスのクロッサス」
戦場の中心に立つのは二人の超光速騎士。
その周辺をクロッサスが率いていたベルガリアの残る光速騎士と、龍装師団の光速騎士が向かい合い、その背後に音速騎士たちが控える。
「いざ」
「尋常に」
「勝負!」
全てが焼き尽くされた大地で、超戦士同士の戦いが始まった。
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