2016/1/24 さよならの銭湯
最近、Facebookの銭湯関連グループ(はい、広い世の中には、そういうのがあるんです)でしきりに話題になっているのが、今月末の六郷温泉の廃業です。
六郷温泉は大田区最南端の銭湯で、本当に温泉が湧いています。それが1月31日で終わってしまうんです。永遠に入れなくなるんです。行くしかないでしょう。
昭和の香りがプンプンする佇まいの細い路地裏の先にある銭湯は、老朽化を理由に廃業するだけあり、確かにキレイとは言えない、よく言えば長い歴史を物語る風貌。有り体に言えばオンボロでした。
でも、サウナ無料だし、温泉だし、源泉の水風呂もあるし、いいじゃん!脱衣所のテーブルと椅子でガラスの仮面読み放題だし!いいじゃん!
と、テンション上がりながら髪の毛をガシガシ洗っていると、視界の端に何か違和感を感じました。普通ならそこにあるはずがないもの。
服を着たお店の人でした。大阪の銭湯で、一回お掃除おばちゃんが常駐していて、Tシャツ短パンで洗い場をキレイに保つ(しかし、愛想は全くない)ところに入ったことはありますが、それ以外はお風呂場を服着た人が歩いてるのってとっても珍しいので二度見してしまいました。
ゆるい、大らかな銭湯なんだなあ。嫌いじゃないなあ。と思いながら髪の毛を濯いでいると、背後をチャッチャッチャッという変な音が横切っていくので、ん?と思って振り返ったら、私のすぐ後ろに茶色いトイプードルが脱衣所に向かって歩いていくところで、振り返った私と目が合いました。さっきのチャッチャッというのはトイプードルの爪付きの足音だったのでした。お風呂場を横切るお店のお母さんにくっついて、釜場から脱衣所に歩いていくところだったみたいです。
銭湯のお風呂場で犬と遭遇って初めての経験だったので割とびっくりしたけど、周りのお客さんはみな無表情だったので、多分これが日常なんでしょうね。きっと看板犬なんだと思います。
その後、お風呂から上がって脱衣所で服を着た後も、トイプードルは脱衣所を我が物顔でうろちょろしてるので(自分ちだから当たり前か)、フロントのおばさんに「かわいいですねー」と話を振ってみたら、名前はハナコ、歳は7歳。わー、ハナコちゃんていうんだー、こんばんはー、って話しかけたら、
「ううぅわわわわわわん!」
とすごい勢いで威嚇されました。おーい、看板犬ちゃうんかーい!
あれが彼女なりの元気なお返事だったと思うことにしよう。
わりと子供と犬猫には好かれる方だという自覚があったのですが、ハナコちゃんには気に入られなかったようなので、写真を撮ることもなく、クールに退店。のはずでしたが、店先に柴犬がいて、えっ!またワンコ!?と思ったらそれは陶器の像でした。陶器かーい!とずっこけたので、クールには出て行けず。
たまに違う銭湯に行くと、思いがけない発見があって面白いですが、六郷温泉にはもう二度と行くことができないんだなあと思ったら、ちょっと鼻の奥がつーんとしました。
その後、数ヶ月後のある夜、別の用事があって六郷温泉のそばを通ったので、路地を入ってみたところ、銭湯があった場所は更地になって、街灯のあかりも届かない、ぽっかりとした暗闇が広がっていました。
ハナコちゃんは元気にしているかなあ。
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