2013/5/4岩盤浴と尾崎豊
先日、実家の近所の岩盤浴に行きました。母お気に入りの場所なので、実家に帰るとたいてい誘われます(※)。そこは、脱衣所は男女別になっていますが、作務衣的な岩盤浴着を着て、ドアを開けると大きい部屋が広がっていて、岩盤浴場は男女混浴です。
ところで、公共の場で、しゃべるのを憚られるところってありますよね。すぐ思いつくところでは図書館とか、あと不思議なのは、エレベーターの中。例えば図書館のように、別にしゃべるなってルールもないし、「静粛に」っていう貼り紙があるわけでもないのに、それまで声高におしゃべりしていたおばちゃんたちが、デパートのエレベーターに乗った瞬間に黙って、しかも全員、階数表示をじっと見上げてるのって、よく考えるとシュールだと思います。みんな同じ方向を向いているのもシュール。飛行機に乗る時、今、多数の人間が、全員同じ方向を向いて自力では決して辿り着けない空のすごい高い所に浮いてて、しかもみんなおとなしく座ってるのに、実はものすごい速度で移動してるっていう状況に笑えてしまうのは私だけでしょうか。
閑話休題。しゃべるのを憚られる場所ですが、この岩盤浴も、わりとおとなしくしていることを暗黙のうちに強制される場所だと思うのですが、そういう暗黙の了解に敢えて縛られない、世の中の枠組みにはまろうとしない、むしろ体制に抗いたい、何ならルールなんてぶち壊すためにあるんだぜ的な、お前は尾崎豊か!というようなアウトローぶりでしゃべりまくるのが、うちの母。本人は一応声を落としてるつもりなのですが、周りがシーンとしているから離れたところの人にまで響く響く。
加えて、最近自分でも気にしているようなのですが(それ故私もあまり強くは言えないのが辛いところですが)、やや耳が遠くなってきているらしく、私が「静かにして」と言ってもそれが聞こえなかったりする。
「こないだモモ(四年前に亡くなった我が家の柴犬)の服を差し上げた何とかさんが来たんだけど、お礼にってすごい高そうなお菓子を持って来てくれて、どうお返ししたらいいか困ってるのよー」
「ふーん」
「え?今何て言ったの?」
「(少し大きめに)ふーんって言ったの」
「それでね、いろいろ迷ったんだけど◯◯をお返ししようかと思って」
「いいんじゃない」
「え?今何か言った?」
「…あのさ、ここ出てからその話しない?」
「え?何て言ったの?」
たぶん、母親は久しぶりに帰ってきた娘と話するのが嬉しくてたまらないんだろうな、というのはとても理解できるのですが、でもさ、それ、ここじゃなくてもいいんじゃない?というセリフを飲み込んで、こうやって親子水入らずの時間を過ごせるのは幸せなことだなぁと思いつつ、我が家の尾崎豊のマシンガントークに相槌を打つ夜更けなのでした。
※この岩盤浴は2016年現在、閉店しました。以前から人が入っていなくて、大丈夫か?と心配していたのですが現実になってしまいました。
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