2014/7/20 前略、清少納言様。
蝉の声で目が覚めた7月の土曜日の夜。蒲田温泉まで足をのばすことに。ウチからはちょっと遠いけど、天然黒湯温泉だしサウナ無料だし(サウナは少し苦手なので入ったことはない)、何よりホームページには12時までって書いてあるのに、いつも深夜1時過ぎまでやっている。フロントのおじさんに聞いたら、「開けてくれっていうお客さんが多いから、いつも1時半までは開けてるよ」とのこと。私の知る限り、蒲田で最も深夜営業の銭湯はここ。終電で帰ってきても急げば間に合う。ついでにTポイントカードも対応している。21世紀の銭湯だな。
銭湯は基本知らない人同士なので、特に会話はない。電車やバスと同じ。なのに、全員全裸っていうのが何ともユーモラスだなあと思う。公共の場なのに、最もプライベートな格好でうろうろするっていうのが、とっても痛快だ。
これが温泉とかだと、大抵旅先で誰かと一緒に入るから、連れと会話したりして、いきおい知らない人との間の壁は高くなり、プライベート度が増すんだけど、銭湯はおひとりさまも多いから、ソーシャルとプライベートな割合が等しく半分ずつで面白い。
そんななか、母と娘で寝る前に来た風情のふたりの会話も微笑ましい。「何とかさんから熊本のすいかもらったんだけどさー、私あんま食べられないからあんた食べてね」とか言ってるのを聞くと、「ああ、この家族の家の冷蔵庫には今、すいかが入っているんだなあ」と、勝手に御宅訪問した気になってほのぼのする。
お風呂から上がって髪の毛を乾かそうとドライヤーのところに行ったら十円玉がなかった。両替してもらおうとフロントに行ったら、誰もいなかった。すみませーん、と声をかけたら、目の前のマッサージチェアで口を開けて寝てたおじさんが飛び上がった。お客さんがいなかったので、寝ていたらしい。銭湯で働く人のプライベートを垣間見た気がして、何だか面映ゆい気持ちになった。
おじさんは、はいはいはいはい、と漫才師の舞台入りのように言いながら、忍者のような素早い足取りで寄ってきて、手品のような素早さで両替してくれた。蒲田温泉のおじさんの家の冷蔵庫には、すいかが入っているのかな。
ちなみに私の家の冷蔵庫には、すいかが入っている。日本の夏。
夏は夜、と枕草子に書かれたのは西暦1000年くらい、とのことなので(今調べた。ビバ・インターネット)、今から1000年以上も前のことだ。2014年の現在、私は清少納言のなで肩(想像)を叩いて「わかる!わかるよ!げに、夏は夜だよ!」と言いたい。夏の夜は何故、こんなに開放感があるんだろう。
前略 清少納言様。千年経った今でも、日本の夏は夜がサイコーです。夜風に吹かれながら食べるガリガリ君の美味しさを、心から貴女に伝えたいです。草々。おやすみなさい。
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