第7話


 なんか、色々と聞いてはいけない話を耳にしてしまったのですが、これはどうすればいいのでしょうか? 誰か助けてくれません? もうなんか、絶望と幸福が入り混じった複雑な気分です!

 エンジェルあさを見れたから幸せではあるんですけど! 下にいる女の子達に見つかったらアウトですよねっ、だってあさもいますし!



「……無事、だったみたい………」

「ですわね。…………といいますか――どんな人ですのよ!? え、ストーカーは無事なんですの!? 五階から飛び降りたって聞こえましたけど、気のせい? 気のせいであって欲しいですの!!」


 心配されるストーカーというのも、物凄く珍しいんじゃないでしょうか? 普通は追っかけまわされる女の子の心配をしますし。


『だいじょーぶだいじょうぶ、パパッと飛んでいったから!』

「人間の話ですわよね!? え、その人ストーカーのうえに人外なんですの!? もの凄く手に負えない感があるんですけどもっ」

「………………いつ、帰るの?」


 マイペースですね、あささん。ぶっちゃけストーカーされてるあなたが一番興味ないですよね。……生徒会長、いいリアクションしますね……イジりがいがありそうな娘です。


『うん? もう少しで帰れると思うよ! あ、それよりそっちに進行ってない? 学校のどこにもいないんだ。たぶん、あさを追いかけていったと思うんだけど……』


 当たり前ですね。木の上で死ぬ気でかくれんぼしてますし、女の子に見つかったら人生の終わりになりそうです。……や、寮の前をうろつくだけしかしてないので問題はないんですけどね。ま、見つかっちゃえば、少なくともあささんの好感度が上がることはなくなるでしょう。


「…………ん、待ってる」

『あいあ~い。ん~そっちにはいなさそうだねぇ……進、どこにいっちゃったのかなぁ……メアド交換しとけばよかったなあ……』

「え、あの? ホントに人間ですの? 私、寮にまで来られたら止められる自信がないんですけど……」

「…………今日の、ご飯……なにかな………………」


 ……………………あれ? なんか、ノノさんがすっごい乙女チックになってません? え、ヒロインはあささんですよ? その座を持って行きそうなんですけど…………き、気のせいですよね! 電話口から聞こえてくる言葉に、ハートをつけたくなりました。…………それに比べてあささん……や、いいんですけどね。きっと、惚れたらデレてくれますよ……たぶん。


「さり気無く電話切りましたけどっ。え、私の邪魔をしたあの男の子って、人間じゃないんですの!?」

「…………知らない」

「あっ待ってくださいまし! …………い、行っちゃいましたわ……なんだか、途轍もなく疲れましたの…………明日、見に行こうかしら……」


 とてとてと去って行く背に、本と掛け布を回収し、肩を落として寮へと向かう生徒会長……今だ名前が出てきませんね。きっと、教室で自己紹介でもするんでしょう。

 今更ですけど、なんでお嬢様口調なんですか? どこぞのくんみたいにキャラ作り? それとも、ホントにお金持ち? まぁ、どっちでもいいですが……ゆるふわロングの金髪……なんだか、ホントにお嬢様っぽいですね。外で読書に耽るあたり、可能性は高そうです。そんな女の子に、興味をもたれた進くんはなにしてるんですかねぇ。


「…………さ、さみぃ…………」


 ガタガタと寒さに震えてました。まぁ、太陽が落ちてくれば肌寒い季節ですし、なんの防寒具もなく外にいれば寒いですよね。明日、風邪でもひくんじゃないですか。




side ノノ


「出席を取るぞー、席につけー」


 翌日、やる気のないだるっとした声が耳に入る。すでに聞き始めてから、四日目になるのだ。なんだか慣れてしまった。


 ――彼が教室にいない。そのことに、どうしようもなくそわそわして落ち着かない。なぜだろう? こんな気持ちは始めてだ。といっても恋愛感情じゃない……と、思う。だって、彼は私の唯一の友達であり親友のあさに惚れている。そもそも出会ってから四日目だよ? 会話したのは三日だけだし。これだけ短い時間で好きになるわけがないよね。少なくとも私はそうだ。……彼は違うみたいだけど。ま、悩んでも仕方ないよね! ようは一緒にいれば楽しい、それだけわかってればいいんだ!


「野坂? おーい返事をしろ野坂ー、ダメだなこりゃ。ま、いいや次ー」


 ……むぅ、落ち着かない。なんでいないんだろう? 昨日と同じで遅刻かなぁ。でも目覚まし時計は買いなおすって言ってたし、先生は何も言わずにスルーしたし……休みなのかな? それともサボり? うーん。わかんないや、あとで松永にでも聞こう。あいつなら知ってそうだし。


「おーし、これで全員出席は取ったなー。HRはこれで終わりな、あとは適当に読書でもしてろ。騒がなきゃ話しててもいいぞ」


 あれ? 松永なら彼のメアド知ってるんじゃないかな? 私ってばちょー名案! さっそく聞き出さねば!


「松永! 私はどうして進のメアドは教えてないしいないの?」

「は? え、ごめんじゃん……野坂、なんか混ざりまくって意味不明だったんじゃん?」


 ……どうやら、焦りすぎて頭の中で言葉が混ざったらしい。


「なんで進いないの?」

「風邪ひいたって話じゃん。なんか寒い場所でずっと震えてたんだって、笑えるじゃん? その状況を見れなかったことが悔やまれるじゃん」

「進のメアド教えて!」

「嫌じゃん。本人に聞けよって話じゃん」

「むっ生意気な! いいよ、そんなこと言うなら――あんたのスマホは没収だ!」

「なんで――うお!? なにするじゃんっ? ちょっやめっなに弄ってるの!?」

「ふっ、素直に教えないあんたの思い……嫌いじゃないよ」

「なんの話!? なんの話なの? 正直、意味不明なんですけど……え、なにしてんの? なに勝手にメアド送ってんの!? 俺が進に怒られるんだけどっ!」


 なにやら騒いでいるが気にしない。どうせ大した理由じゃないんだ。今はメアドを送ることが先だ。


「ほ、ほんとに送りやがった……返せよ!? たく……あとで、謝るしかねぇよなぁ。……許してくれっかなぁ」

「よし。さて、お見舞いメール送信、と」

「行動速いなっ」


 ――ぴろん♪


「あ? 俺のほうにきたじゃん?」


 なんで私にじゃないんだ!? えぇい寄越せ!


「だからなんで奪い取るの!?」

『弁解を聞こうか。回答次第では貴様を始末する』

「………………がんばっ」

「なんて書いてあったの!? え、あ、なにっなんなの!?」


 書かれていた内容を読んだ私は、松永にスマホを返す。……彼は無駄に行動力に溢れている人だ。やるといえばやるだろう。

 

「きっと良いことあるよ」

「だからなんて!? ふざっお前ふざけんなよ!? あ? なんで肩に手を置いて優しげな瞳で見てんだっ? なんだ? ホントにやばいのか!? マジで人生の危機なのか?!!?」


 パニックに陥り口調が普通になっている松永の冥福を祈る……。


side out


 やー、これは完全に気になっちゃってますよねー。まだ恋愛感情にはいたってないだけで、ぶっちゃけ、あささんよりもヒロインしてますし。ぴぷっ。面白い人間関係にな……らない、ですよねー。だって無表情ロリですよ? きっと、あだ名で氷の~とか、鉄の処女とかつけられちゃう人ですよ? そんな人との三角関係は無理じゃないですかねぇ。……なったらなったで、おもしれーでしょうけどね。


 ちなみにその頃、進くんは、


「……正栄の奴、なに勝手にメアド教えてんだ?」


 ベッドに転がりながらスマホを弄ってました。


 



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