第8話 hologramの二人組

シルヴィア達はhologramに関する情報を集める為にミラーフィという小さな街に立ち寄っていた。 早朝という事もあってか閑静な雰囲気が漂っており、酒場だけが空いていた。


「……何か、静かな宿街って感じだな。こんなんで情報集まんのか?」


重々しい溜息を吐きながらタツヒコが口を尖らせる。長谷川もその通りと言わんばかりに首肯していた。


「そんなネガティヴな事言わないっ! 思いも寄らぬ収穫があるかもよ? 効率上げるために各自バラけて当たるように。 そうね……お昼までに酒場前に集合って事で良いわね?」


シルヴィアが腰に手を当て、胸を張りながら有無を言わせぬ口調で押し通す。


「シルヴィア様……お二人が困ってるようですが?」


開いた口が塞がらない二人にクラウディアが助け舟を出すが、シルヴィアはそれを笑顔で受け流す。


「多少の無茶の方が実力を発揮出来るもんなのよ人間ってのは……ね」


「左様ですか……シルヴィア様が言うなら」


助け舟も撃沈し、言葉も出ない二人を尻目にシルヴィアは空を見上げた。


「そろそろ行くよ……じゃ、お昼に酒場で。解散!!」


その言葉が発せられると同時にシルヴィアとクラウディアはその場から高速で離れ、タツヒコも慌てるようにして高速で消える。

その場に残った長谷川は何が起こったのか分からないと言わんばかりに目を点にさせ、立ち尽くした。



「hologram? おいおい、勘弁してくれよ……。あんた、どんな命知らずだ?まぁ、俺が知ってる情報は僅かだが教えてやるよ……。

hologramは主にナンバーズってのが軸となって活動してるらしい。こんな辺鄙な街じゃ特に事件は起こってないが首都の方は酷いもんだ……俺が知ってるのはこれくらいだな」


「……そうですか。 ありがとうございました」


シルヴィアは酒場のマスターに一礼して酒場を後にした。 酒場を出ると太陽が爛々と昇っており、シルヴィアは片手で陽を遮り、眉根を寄せる。


「……これで全部回ったかな。 ふぅ……そこまで有益な情報は無かったな。あるとすれば首都……そこに行けばかなりの情報があるって言われたけど、hologramを潰せるのか心配……おっとっ!?」


シルヴィアは何かにぶつかった衝撃でよろける。 シルヴィアはぶつかった何かに目線を持ってくと、ラフな格好の一人の男と、外套を身に纏ったフードを被った少女がシルヴィアの前に立っていた。


「あ、す、すいません! ボーっとしてて……」


シルヴィアは慌てて謝り、軽く頭を下げる。

シルヴィアの謝罪に男は片手を挙げて応じた。


「ああ……別に良いが、その青い髪に青い瞳……見ない風貌だな。 何か厄介ごとに巻き込まれないように気をつけた方が身の為だぞ」


そうシルヴィアに告げ口すると、男と少女は酒場に入っていった。 シルヴィアはしばらく呆然としていたが、何かを感じたのか考えるように口を閉ざしてしまった。

そして十数分もするとクラウディア達が揃い、シルヴィアを囲うようにして集まっていた。


「……ちょっと怪しい二人組と接触したから移動するよ」


そう言い、シルヴィア達はミラーフィを北上するように歩を進めた。 移動してる最中に殺気のようなものがシルヴィアに当てられており、シルヴィアは少し警戒しながらミラーフィを出る。 辺りは等間隔で並ぶ巨木の木々がシルヴィア達を出迎えるようにそびえ立っていた。 地面は荒野とそう変わらない具合だ。


「……さて、これで良いかしら? そろそろ姿を現したらどうなの? お二人さん」


シルヴィアが突然声を張り上げて叫ぶ。声は多少反響し、余韻が残る。


「上手く尾行したつもりだったんだがな……」


シルヴィア達の目の前に男と少女が、初めからそこに居たのかと錯覚するように不意に現れた。 先程シルヴィアとぶつかった男とそれに連れ添う少女だ。 短髪の黒髪に、程良くついた筋肉が特徴的の男と、男と同じ黒髪だったが瞳の色が左右で違うのが特徴的な風貌の少女だった。


「あら……殺気を出しながらの尾行は尾行と言えるのかしら?」


鼻で笑いながらシルヴィアが煽るような口調で問う。


「それもそうだな……まぁそんな事はどうでも良い。 そこの青髪の女……お前はhologramを潰すつもりでいるのか?」


「そうね……潰すつもりでいるわ。 で、何でそんな事聞くのかしら?」


「愚問だな……これが何を意味するのか分からないのか? 俺らはhologramの一員だ。ここで会ったのがお前らの運の尽きだな」


男は微笑を浮かべると、殺気を放出した。

シルヴィアはある程度予想していたのか大して驚きもせずに少女の方に目線を向ける。


「戦るのは構わないだけど……そっちの女の子も戦うの? 」


「……!」


シルヴィアに指を指された少女は肩を震わせると男の腰の部分の服をギュッと握り締めた。そんな少女に男は優しく頭に手を置いた。


「大丈夫だアイラ……。俺がこいつら全員を倒すから、お前は見てればいい」


「お兄ちゃん……」


アイラと呼ばれた少女は不安そうに男を見上げる。


「ふぅん……この人数相手に勝てると思ってるの? よほどの死にたがりらしいね……って言いたい所なんだけど、私はそこの女の子と戦いたいからタツヒコ君達はその男の人と戦っててよ!」


そう言うが速いか、シルヴィアは目にも留まらぬ速さでアイラを攫い、その場から姿を消した。


「なっ!? しまった!!」


男が気付いた時にはもうどの方向に向かったのか分からなかった。しかし驚いたのは男だけではなく、タツヒコ達も同じだった。


「……クソっ!! やられた……だがすぐに後悔する事になるだろう。アイラは信じられないくらいに強いからな。 さて、お前らとのバトルをさっさと終わらせるか!!」


男の叫び声が響くと同時に戦闘態勢に入る。

少し遅れてタツヒコ達三人も臨戦態勢に移り───激突した。

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