第6話 いざ、第二の世界へ

シルヴィアは一人紅茶を啜っていた。目を閉じながらまったりとした時の流れを楽しんでいるようにも感じられた。そしてゆっくりと、深く息を吐き出す。


「ん〜……たまには良いわね。こういう時間も」


軽い伸びをするシルヴィア。腰の骨が小気味良い音を立てて鳴る。 飲み干したティーカップを片付けるとすぐに姿勢を整え、背筋を伸ばした状態で待機する。会議室の扉にノックが響く。


「どうぞ」


シルヴィアが合図をすると会議室の扉が重質感のある音を出しながら開かれ、ノックをしたであろう人物がシルヴィアの視界に入る。


「シルヴィア様。クラウディア、長谷川たつお、タツヒコが揃いました。 中に入らせて頂きます」


クラウディアを先頭に、長谷川、タツヒコが続いて会議室の中に入り、各々の席に着席した。シルヴィアは全員が席に着いた事を確認すると小さく咳払いをする。


「皆……三日間の休暇ゆっくり過ごせたかしら? さて、あなた達に集まってもらったのは他でもない……異世界へ発つ為に集まってもらったわ」


シルヴィアは静かにそう告げる。シルヴィア以外、発言する者はいなかった。


「今回の異世界は何処の異世界に辿り着くのかは全く分からない。行ってからのお楽しみ。 今回の目的も軽く説明しとくわ……優先すべきは悪の組織の壊滅。 キーマンの説得及び仲間に勧誘……こんな所ね」


ざっくりした口調で説明したシルヴィアがクラウディア達三人を見やる。


「……出発する前に質問とかあったりする?」


シルヴィアがそう言うと、タツヒコがスッと挙手をする。シルヴィアが顎をしゃくって促す。


「この前ははぐらかされたから聞くが、どうして悪人を懲らしめるんだ?」


タツヒコの率直な疑問をシルヴィアにぶつけた。


「そうだねぇ……例えば、世界を滅ぼそうとしてる悪の組織がいたとしよう。で、仮に世界が滅んだら、その滅んだ影響が少なからずこの魔王城にも余波という形になって来るんだ。 生物バランスの崩壊や、異世界との境界の綻びが各地に現れたり……ね」


シルヴィアが最後に口角を吊り上げるようにして言葉を発したのをタツヒコは気付かなかった。


「だから、そうならない為にも出来るだけ悪の組織を根絶しようって事。 昔はパパ一人でやってたらしいんだけどね。 はい、この話はおしまい! そろそろ第二の世界に行くよ」


シルヴィアが手を叩くと同時に机に魔法陣が展開される。魔法陣は一定の速度で回転しており発光もしていた。


「じゃ、第二の世界へ出発!」


シルヴィアの笑顔が白い光に包まれ、さらに強い光が魔王城の会議室を覆い尽くした。

光が収まると、そこには無人と化した会議室があっただけだった。

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