第863話「奴隷商人の誘惑」
目のまえの異質な男は、胡散臭い小太りであったり、鞭を握りしめているわけでもない。
紳士的な小綺麗な燕尾服に身を包んだ初老のどこかの貴族の執事のような装いである。
ここに来るまでに見たことのある格好をしているというのに、隙がないのだ。
抜けているところがないというのは人としては優れているといえよう。
だが、完璧に近づけば近づくほど人間味がなくなっていくといえるのではないだろうか。
極論だといってしまえばそれまでだが、この男は人間の領域からずれている。
「あいにく、間に合ってる。裏切られるならばそれはその程度だったんだろうな。それが俺自身が原因なのか、相手の都合なのか、それともタイミングが問題なのか……そんなことはどうでもいい。絶対服従ということはそこには絶対の信頼関係はないってことだろ? 冗談じゃない」
「信頼とは形のないものでございます。そこには何も残らないのです。あなたはそれを知っている」
「素性の知れぬ者が何を言おうと無意味だ」
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