第682話「少女の言葉が俺達を縛る」
店から出て宿に戻る俺達を見計らってのことだとだろう。
これだけの荷物を抱えたカモでもやってきたのだから、後ろから襲えばなどとおもわなかったのだろうか。
他にも買い物客は五万といるだろうに。
「ちょっと!! お兄さんたちってば!! 両手を広げて待ち構える美少女が無言で立ちふさがってるんだから、無視はないと思う……うん!! あたし、間違ってない!!」
「うわ……、これは駄目な奴だ……。関わるな、行くぞ」
「逃がさないんだから!!」
俺達はその場から一歩も動けない。
まるでこのスペラよりも一回り小柄な少女に釘づけにされたようだ。
魅了されているわけではない。
ただただ、逃げる意思がこの場に置き去りにされた。
異常は伝播する。
買い物客も店から離れようとしたはずの幾人かも動く意志がくじかれている。
何が起こっている。
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