第681話「執着とは呪いと見つけたり」

 何かに執着するという事は呪いと同義であると言われてきた。

 解呪に犠牲を強いてきたように、例えそれが愛着であっても手放した時に心身に影響をもたらすのであれば最初から関わるべきではないのだろう。

 幾度となく命を救われてきた鎧は、その都度主の血を吸ってきた。

 

 総接種量は人の血液を遥かに超えているはずだ。

 本来であれば、再び手を伸ばすところではある。

 しかし、不思議と依存していたはずの感覚が緩やかに消えていく。


 まるで、あえて俺を引き離すかのような不思議な感覚。

 それは遠慮と言えばいいのだろうか。

 互いに信頼しているからこそ、離れていても通じ合える。


 革は生き物で経年変化を楽しむものだというが、そこに意思が加わればどうなる。

 俺が必要とするように、鎧も俺を必要としている。

 ならば、一時離れたとしても次には万全の状態で戦に赴けるというものであろう。

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