第680話「最早離れる事も叶わぬ」
こうして、手にしてみると元の世界と変わり映えはない。
全員が買った服に着替えてみると、まさか得体のしれない化物と死闘を繰り広げていたとは思えないだろう。
だからと言って追ってきているであろう連中の目を欺けるとはだれも思ってはいない。
この街に侵入できることを前提に行動していれば対処のしようもある。
それよりも、いざ一線を交えることになった後の事だ。
今の様に順調に事を進めることは出来なくなる。
どれだけこちらが優れていても、目撃者が一人でも出てしまえばもう後戻りはない。
人というものは情報の生き物だ。
まして、この世界では何が有るかわかりはしない。
「思いのほか、来ていた装備は嵩張るな……。一旦宿に戻って荷物を置いてくるしかないな」
「そうね。でも、なんとなくなんだけどもの足りなさを感じるような……」
「俺も同じことを感じていた。短い間にここまで馴染むんだな」
元の世界でも、衣服、靴、鞄に限らず使い込むことで使う者に馴染んでいくという。
特に革製品はそれが如実に現れる。
靴であれば履いていた人の足の形に徐々に変わることで、他の誰の者でもない持ち主の一部となる。
身体の一部になるという事は失った時に喪失感があってもおかしくはない。
寧ろ、影響がない方が不自然であるが。
まだ数日と経っていないはずの装備にここまでの喪失感が伴うとは思っていなかった。
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