第658話「夜の首都、朝の首都」

 荷物を部屋に置いたまま外出するには些か抵抗があったが、食料や嵩張る衣類などは部屋に置いておくことにする。

 要するに無くなっても被害は最小限で済む者だけ残す形として、機動力を上げるためだ。

 流石に両手に大荷物を持ったまま街中を散策することなど出来はしない。


 それに買い物をすれば持って帰ってこなければならないのだから、最初からストレージを消費したくはない。

 宿のセキュリティは話を聞く限りでは万全という事なので、信じておいても問題はないだろう。

 少なくとも俺達を謀ることへのリスクは解らないとも考えられない。

 

「ベッドメイキングをいたしますがお客様のお荷物の扱いには最善の注意を払わせていただきますので、ご安心くださいませ」


「気にはしていない」


「いってらっしゃいませ」


 宿から出た俺達は声を失った。

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