第457話「本能と本質」

 皆一様に海を目前にしたように、各々が物思いにふけっていたがバニティーの一言で我に返ったのだ。 誰しもその内は画一していないからこそ反応は違っていた。

 特に顔色が変わらないスペラは、周囲の反応から海に何かを見出そうとしていたかのように見た。


 一度も見た事がない物を想像する事に意欲はなく、それでいて情報としての必要性に重きを置いているからこその反応を示した。

 バニティーの家での一件以来、本質を見極める能力が格段に磨かれたようだ。

 本能に忠実な行動が物事の本質をなぞる様に成れば最早それは、自分自身を模範に生きるという事だと言える。


 そこには思考と行動にラグが出来ないのだから、これ以上ない程実戦に強くなるのは必然である。

 人猿が人間であったことを知った上で躊躇することも後悔もないというのなら、何も苛むことさえない。

 反対に人間の身体を触媒にしているルナは、その心身に苦しめられている。

 

 その痛みが必ずしも悪しきものではない。

 人間であれば理解出来うるものであると思うのは哲学の話であり本人の知るところではない。

 国も人種も、まして異世界ともなればそもそも倫理も哲学も同じと考えていいのか怪しい。


  


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