第456話「着眼点が違えば」
ステータスの読み取れなくなるほどの変貌をとげた人間の末路がこれでは、誰一人として報われない。
何かの役に立つのかと思い動かなくなった人猿一体を取り込んでみたものの、目ぼしい情報として得られるものはなかった。
しばらくたったというのに援軍もなければ、事のあらましを探る輩もこの場には現れない。
「こいつらが何者か気にはなるけど、このままここに居座るのも良いとは思えないしそろそろ行こう」
「なんだか塩っぽい匂いがしてきたにゃー、花がむずむずするにゃ」
「もうそろそろ海が近いって事かな。ながかったなぁ」
「そうだね。やっと海が見れるって思うとわくわくしたかも。私海には行ったことないから余計に気になっちゃうね」
「ボクは何度も見てるはずなのになぜか胸がざわざわするのはなんでかな。ダーリンといっしょに行けるからだよね……たぶん」
「いや、それは違うな。ユイナと同じってことだろ?」
「千年ぶりくらいになると思うと懐かしいですね。海には内陸では手に入れにくい物もあるのでこの機に手に入れておきたいです」
「今更だが海の気配なんてまるでしないんだけど、本当にこっちであってるのかバニティー?」
「おめら盛り上がってるところわりーが、このままの速さだ進んでっと今日中には海どころかこの森さ抜けることもできねえだが」
スペラが海の香りを嗅ぎつけたところで、それがそのまま目的地を間近にしたからとは限らない。
猫の行動範囲は1km前後あり、虎では200kmにも及ぶ範囲で行動するにも関わらずしっかりとした縄張りを持つという。
海までの距離を目算して当りをつけたスペラと俺達が同じ感覚で話をするのは間違っていた。
既にまだ見ぬ目的地を見据えているのは猫耳少女のみであり、そこまでにこの集団が辿り着くにはそれなりの時間を有することを理解している。
それゆえに言及するようなことは一切していないのだから、恨み言を言うのは筋違いであり誰もスペラに追及するようなことはしない。
要するに今日は海を拝めないのである。
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