第452話「女同士」

 スペラ達も何か考えがあるのはわかっているけれど、それが必ずしもアマトの役に立つのだろか。

 それどころか、この集団の連携が崩れるのではないかとおもってしまう。

 誰が見てもスペラのアマトへの忠誠心は異常なので、黙って放っておくこともできない。

 

 幸いにも私の事も精霊だと言って敬いの態度は崩していないのだから、最悪いう事を聞いてくれると信じたい。

 ディアナとスペラの間にも私達とは違った関係が構築されているのも、暴走を止めるためには有効である。

 問題はルナとの関係性が見えない点かな。


 ルナは私達みんなとわけ隔てなく接しているようで誰とも心を開いているとは思っていない。

 アマトの関係性を保つ為だけに演じているのではないかと思う。

 彼に何かあればこの集団は確実に崩壊する。


 私が何とかしないといけないなんて思いもしなかった。

 





 実際には幾重にも積み重ねた経験と感情が織り交じりあっていた。

 私が状況に変化を臨んだのは初めてではない。

 いつだって傷つき精神をすり減らす人間など誰であろうとみていて気持ちのいいものではない。


 そこには特別な感情なんてものはなかったはずなのに、どういうわけか意識してしまう。

 エルフも魔族という種族もともに人間よりも長寿であり、異性に特別な感情を抱きにくくその種は圧倒的に他種族より気象とされていると聞いている。

 これは身体的なことなのか、魂に所以するのか定かではない。


「ユーニャ!? 大丈夫かにゃ」


 一人しておいてほしいと言ったはずなのに、スペラが恰もこの瞬間を見計らったかのように声をかけてくる。

 冷静さを取り戻してしまった今では聞こえないふりも出来ない。

 そのしたたかさと場の空気を的確に読まない技術に今まで気がつかなかった。


「私は大丈夫かな。それよりもスペラもあんなモンスターと一人で戦って大丈夫だったの? 数も多かったし私よりも大変だったんじゃないかな」


「そんなことなかったにゃ。アーニャの一声で簡単に倒せたにゃ。アーニャはやっぱりすごいにゃ、一度に大勢のモンスターの動きを止めるなんてミャーには出来ないにゃ」


「アマトならどんな危ない場面でもひっくり返すのは当然かな。私もそろそろ戻るから一緒に行きましょう」


「もういいのかにゃ? じゃあ、戻るにゃ」


 何も考えていないようで、思考を巡らせている人間ほど面倒なものはない。

 というのも前世で培った人間関係がまさに、女の仲良しグループで学んだことであった。

 男だとか女だとかそんな前時代な考え方なんて思っても、経験として確かに味わったのだから仕方がない。


 スペラはアマトに対する気持ちというのは神として崇めつつ、異性として心酔している。

 恋に溺れるなんて言葉があるようにその忠誠心は時に思考を停滞させ、時に加速させる。

 これが最善に作用すればって思いたいけど、後押しできないのだから少なくとも私にとっては面白くはないと思う。


(歳をいくつ重ねてもリセットされてしまえば、結局は中身は高校生のまま止まってるのかな) 

 

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