第450話「傷心のユイナ」

 あの、猿のようで人のようなモンスターが何かを私は知ってしまった。

 うすうすそうではないかと思っていたところに決定打になる事があった。

 それがどうしたのかと聞かれたら、どこに着目すればいいのだろう。


 アマトも私と同じところに気がついてしまったのだろう。

 顔に出さないようにと気を付けているのは私ならわかる。

 それがどういうことか彼は知らない。


 今までモンスターとの交戦は当たり前になっていたのに、それが人間もとい人間でなくなったものなど相手にすれば動転もする。

 全てが終わった後でなければ今こうしてうなだれることすらできなくなっていた。


 そして何よりも恐怖したのは元々の原型を失ってしまったこの者達に何が有ったのかが、何一つとしてわからなかったからだ。

 それを調べるのも考えるのもアマトがすることだと割り切れるか、割り切れるはずもない。

 他人任せにすることへの負い目などではない。


 これはあまりにも重すぎる。

 自分がもうすでに種族でいうところの人間というものをやめてしまっているから、わかりえる事実の一片である。

 この世界では言葉を話し意思の疎通ができればそれがそのような形であれ世界では平等であり、それができなければ隔たりがある。

 ただそれだけのことだ。


 彼らは何者なのかを突き詰めていくことは、また一つアマトを闇へと誘う。

 これは最早避けようもない。

 私たちはアマトを闇へと進むことを止めなければならない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る