第420話「お使い開始」
「俺は天間天人、人間だ。こっちがハーフエルフのユイナ・フィールド。猫耳のがスペラ・エンサ、悪魔のルナ・ヴェルナー、吸血鬼の眷属ディアナ・ホーリージェデッカ。最後にバニティーだが旅の同行者だ」
「では、アマトこれを我の弟ザファルに届けてほしい。この湖で4万年磨いた永劫結晶だ。これと同じものを一つ納めてくれていい。価値はお前ならわかるだろう」
渡されたのは手のひら大の無色透明な正立方体の水晶が二つ。本来であればどちらも目を凝らしても視認することは出来ない。
取り出されたのが澄み切った湖の中だった。
そうでなければ、この不思議な存在を眼に収めることなど出来なかったのだ。
油の中にコップを入れると視認できなくなるのを見た事がある。
裏を返せば目に見えない程光を完全に透過する材質であったとしても、それを液体が包み込めば形が浮き彫りになる。
「国宝級の代物だな。ちなみにこんなもんが湖の底にはわんさかあったりするのか?」
「……」
「言わなくてもわかってるからいい。依頼を受けるよ」
俺は二つの水晶を受け取ることにした。
このまま刺し違える覚悟で挑むという選択肢もあったというのに、それをしなかったのはこの時点で臆したからだと言わざる負えない。
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