第421話「この先にある未来」

 無理難題というのであれば考えようによっては断ることも一つの選択肢ではある。

 だが、目的は少なからずあったほうが良いのも事実であり報酬が本来であれば人生で一度として所持する可能性が限りなく低い代物である以上この期を逃すのも愚の骨頂だと言える。

 そもそも成功報酬を前払いで受け取れることなど機会は僅か。


 もともといた世界でもエンジェルなるものと出会える機会なんてものが、宝くじを当てるよりも低い確率の国で生きてきた。

 そもそも宝くじなんてどぶに金を捨てるようなものなので買ったことはないのだが、今目の前には当選金が先に手渡され後は当選番号に合わせてくじを買うだけの状況なのだ。

 

 無論くじを買うまで困難なのだが、報奨金は受け取っているのだから因果を結んでやらねばならない。

 

「弟はここから大陸の最北東に五岳の大小疎らな火山の中央にいるはずだ。期限は特に設けるつもりはない。気長に待つとしよう」


「期限がないのは助かる。俺もこう見えて暇じゃないんだ。まあできる限り早くに片付けてしまおうとは思うけどな」


「本来であれば人里まで見送ってやりたいのだが、我もこの地を離れるわけにはいかんのだ。アマトよ、武運を祈っている」


「ああ、任せておけ。必ず届けて見せるさ。期待しておけばいい。じゃあな」


 ズィファルはその場から胴体から上だけを乗り出して見送るにとどめた。

 俺達は恐らく担がれている。

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