第363話「窮鼠猫噛み」
徐々に帯びていた電気も霧散し再び闇夜が戻りつつある。
完全に沈黙するまで息をひそめていた獣たちは獲物を見定め機会をうかがっているのが感じ取れた。
このまま襲われれば魔力を使いきったスペラでは一網打尽にできる程の決定打はない。
再び、力を振り絞り力尽きるまで身体能力に物を言わせた格闘術で蹴散らせるのみ。
自然治癒能力を高める効果によって擦り傷はすっかり治っている。
よろよろと今にも倒れそうな体を必死に起き上らせ、なんとか立ち上がることは出来たが足を地面に縫い合わせたように一歩踏み出すことは出来ない。
そんなスペラの様子を見ていた牛狼が颯爽と茂みから駆け寄りスペラに飛び掛かる。
だらっと垂らした腕は肩より上の高さまで持ち上げることができない。
緊張が走る。
幾度となく味わってきた死の予兆。
目の前の低俗な獣風情に終止符を打たれるという屈辱。
そして、死の間際だというのに脳裏に浮かぶのはアマトの横顔。
その表情は何とも言えない冷たさがあった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます